新聞業界最大のタブ=「押し紙」1 押し紙問題の実態
”新聞社”が発行している(と自称している)部数の全てが、消費者の手元に届くわけではない。販売店には、実態よりも常に多く新聞が運び込まれ、あまった新聞は新品の古紙として、再生紙の原料となっていく。
配達先がなく決めていく新聞を、業界では『押し紙』と呼ぶ。販売店に押し売りされる新聞紙というニュアンスである。
(週刊新潮09/06/11号)
押し紙を増やせば、新聞社は販売店からより多くの販売収入を得ることができる。加えて、新聞の発行部数がかさ上げされるので、紙面広告の媒体価値は高くなる。
押し紙による販売収入と広告収入の不正取得。これこそが、新聞社による偽装の実態である。まさに新聞業界最大のタブーに他ならない。
http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050222
私がこのほど東京本社幹部から入手した「参考 朝刊 発証数の推移」と題された資料によれば、2002年10月時点の発証数(=読者から領収証を貰えている数)は250万9,139で、店扱い部数(=新聞社が販売店に売った分)の395万3,644と比べ、37%も少ないことが分かった。これは、行政を含む広告スポンサーに対する水増し詐欺の決定的証拠となるものだ。
■押し紙の実態
週刊新潮09/06/11号によれば、滋賀県のポスティング企業『滋賀クロスメディア』が電話調査、戸別訪問による14万件に対して聞き取り調査を行ったところ、公称部数の実に4割以上が押し紙だった。大手四紙については、
読売 18%、朝日 34%、毎日 57%、産経57%だった。
※読売が他社に比べて低いのは、80年代から押し紙問題に取り組んできた労組の中心メンバーが読売新聞系列だったことが大きい。
この調査データを元にすれば、主要紙の「本当の販売部数」はどうなるのか?
<ABC調査による公称部数>
読売・・・ 1002万部
朝日・・・ 803万部
毎日・・・ 383万部
産経・・・ 213万部
<”押し紙率”による配達部数>
読売・・・ 818万部
朝日・・・ 527万部
毎日・・・ 164万部
産経・・・ 91万部
つまり、4紙合計の押し紙部数は800万部に達する。新聞の販売収入は新聞社と販売者で折半だから、一社平均で(800万×3,000円÷2÷4社=)360億円が、不正な収入となる。
■押し紙の起源は?
(週刊新潮09/06/25号)
押し紙の起源は、広告料の基準にある。戦後のある時期から、紙面の質ではなく発行部数によって広告料を決めるという基準を大手広告代理店が作った為、以後、各社とも部数拡大に血道をあげる結果になった。
広告料の基準が発行部数と連動しているため、広告料収入を上げる手っ取り早い手段が”押し紙”だったのだ。
これを可能にしていたのは「折り込みチラシ」収入だった。折り込みチラシ収入は、広告主から販売店に直接支払われる。
(週刊新潮09/06/25号)
いいときには、一部あたりの折込収入が2000円以上なんてザラでした。販売店が本社に払う仕入れ代より折り込み収入が上回っていたから、販売店によっても”押し紙”があるだけ儲けが増えるという時代が確かにあったんです。
新聞内の広告では、交渉により価格が決定されるとは言え、公称部数が基準となる。販売店に搬入される折込チラシの枚数は、原則として公称部数と同一である。だから折り込みチラシの広告主は、押し紙分の配達されないチラシ料金を、騙し取られていることになる。
■押し紙増加の背景は?
新聞社(本社)は、広告料収入を確保するため、公称部数、つまり販売店に渡す部数を減らすことはできない。だから、新聞社(本社)は「新聞を止めてしまうぞ」「補助金を減らすぞ」など様々な脅しを使い、販売店に(配られない新聞紙=)押し紙を押し付けていく。
しかし、このように押し紙を押し付けられていけば、販売店の経営も立ち行かなくなる。押し紙をより多く押し付けられてきた販売店から潰れ始めて行く。
この潰れた販売店がカバーしていたエリアは、隣の販売店が吸収することになる。そして、潰れた販売店の押し紙も吸収することになる。押し紙に苦しむ販売店が全国各地に拡がっていき、新聞社が販売店から訴えられるケースが年々増加している。
◆
このような新聞の闇=押し紙問題が表に出てきた背景には、詳細なデータ調査を行ったのが滋賀県のポスティング業者であることからも分かるように、ポスティング業者の台頭がある。彼らにとっては、新聞社の偽装工作を広告主に知らせることが、クライアントを奪い取る戦略となるからだ。
チラシ市場のおいて、新聞社と競合関係にあるポスティング業者の攻勢は今後も続く。特に、ネットからポスティング界へと進出し始めたリクルートの攻勢は激しい。リクルートは、希望する住民にチラシを宅配する事業を始めた。
経済危機の影響をまともにうける広告業界での潰し合いが熾烈さを増すにつれ、押し紙問題が大々的に暴かれる機会も増えていくだろう。
(つづく)
ないとう@なんで屋でした
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