お家騒動による分裂から一族大同団結へ向かうロスチャイルド
前回「自民圧勝もロスチャイルドのシナリオ」では、年末の選挙結果を世界経済におけるロックフェラーの衰退とロスチャイルドの台頭という視点から分析した。
今回は、もう少し、ロスチャイルドの現状を分析してみよう。
以下は副島隆彦著の「ロスチャイルド200年の栄光と挫折」からの引用であるが、副島氏によると、第2次世界大戦後、ロックフェラーに押されてきたロスチャイルド家は内部分裂を起こし、勢力を衰弱させてきた。ただし、近年、再統合から再興の兆しがあるという。(ただし副島氏はロスチャイルドではなく最終的に中国が覇権を握ると予測している)
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ロスチャイルド家は初代、マイヤー・アムシェルが欧州全体に作り出した一族のネットワークによって金融市場で大きく台頭した。フランクフルト家、ウィーン家、ロンドン家、ナポリ家、パリ家に分かれたが、それぞれの国家の思惑とは独立したネットワークとして動くことで、国家の興亡によらない隆盛を極めた。ただしヨーロッパはアメリカ=ロックフェラーによって仕掛けられた二つの大戦で没落し、ロスチャイルド家の人たちも兵役に服したり、捕虜になったりした。またロックフェラーが石油中心の経済市場を作り出したのに対して、金に固執したロスチャイルドは劣勢を余儀なくされた。その結果、本家筋に当たるフランクフルト家は断絶。ウィーン家も衰退した。変わって、イギリスロスチャイルド家が台頭したが、一族の結束にひびが入り、パリ家とイギリス家は骨肉の争いを繰り広げ、現在に至っている。
ロンドン家5代目当主のヴィクター(1910~1990年)は、イギリスの諜報機関MI6とイスラエルの国家情報機関、モサドをつくった男である。なおアジア投資に積極的なのもこのロンドン家で、日本の窓口はヴィクターの従兄弟のエドマンド・ロスチャイルドが担当した。
ヴィクターは諜報に熱心になりすぎ、金融の方が疎かになった。そのためロスチャイルドの中核銀行であるNMロスチャイルド銀行の主導権がパリ家のダヴィドと組んだロンドン家傍流のイヴリンの下に移った。そしてヴィクターの直系のジェイコブはその主戦場をニューヨークに移し、チャーターハウス・J・ロスチャイルド銀行という投資銀行を設立した。しかし、ロックフェラーとの闘いに破れ、フランクフルトへ逃れ、形勢を立て直した。現在は、イギリスに戻り、ジェイコブの息子、ナサニエル・フィリップ・ロスチャイルド(通称ナット)がロスチャイルドの建て直しに動いている。
パリ家4代目のギー(1909~2007年)はドゴール将軍とともに、ロンドンに置かれていたフランスの亡命政権を支えた。レジスタンス運動の英雄の一人でもある。ギーはフランス陸軍の戦車隊の隊長で、パリ解放後ドゴール政権の中で、フランスの政治と経済の復興で重要な役割を果たした。ドゴール後の、ポンピドー大統領とも深い盟友関係を続けた。その後フランスではシラク大統領を除いて、ジスカールデスタン、ミッテラン、サルコジなどは、ロックフェラー家の後押しがあった大統領である。ミッテランは1981年にパリ・ロスチャイルド銀行を国有化している。それもあってパリ・ロスチャイルド家は、イギリスのNMロスチャイルドの乗っ取りを画策したのであろう。
他方、パリ家の跳ね上がり者であったモーリスは、スイスに拠点を構え、勢力を拡大した。モーリスは現代イスラエルの父と呼ばれたエドモン・ジェームスの次男である。エドモン・ジェームスはユダヤ人のためのイスラエル入植地運動を支援したが、必ずしも戦闘的なシオニストではなかったという。この系譜を次ぐのがエドモン・ド・ロスチャイルド銀行で、現在もイスラエル投資に熱心である。
まとめると現在、ロスチャイルドの金融部門は大きく3つに分かれている。ロンドン分家のイヴリンとパリ本家のダヴィッドが率いる①NMロスチャイルド銀行、ロンドン本家、ヴィクター直系のジェイコブが率いる②RITキャピタルパートナーズ、パリ分家のベンジャマン(モーリス、エドモン・アドルフの系統)が率いる③エドモン・ド・ロスチャイルド、の3つだ。
ロスチャイルドを出し抜いたロックフェラー家だが、アメリカの衰退に伴ってロックフェラー家も急速に力を失い、デイビッド・ロックフエラーだけでなく(ロスチャイルドに擦り寄った)ジェイ・ロックフエラーも失墜傾向にある。今やゴールドマンサックスにも陰りが見えてきた。そんな中、一族内の長い確執を乗り越えて、ロスチャイルド3派の再結集の動きがでてきた。2002年には①のイヴリンとダビッドがロンドンとパリの金融部門を統合し、ロスチャイルド・コンティニュエーション・ホールディングスAG(R・C・H)という会社をスイス・ジュネーブに立ち上げた。そして、このR・C・Hに②ジェイコブのRITキャピタルパートナズと③のプリヴェ・エドモン・ド・ロスチャイルドが戦略提携をすると発表した。また2003年にはケイト・エマ・ロスチャイルドとベンジャミン・ゴールドスミスが結婚した。ゴールドスミス家はフランクフルト・ロスチャイルド家の女系の家系で、ベンジャミン・ゴールドスミスはルパートマードックの後のメディア王といわれている。
ロンドン本家ジェイコブとロンドン分家イヴリンが本当に和解したかどうかは不明だが、ジェイコブの息子ナットは新興国の資源投資向けファンドを立ち上げたりしながら、ロスチャイルド家の再興を試みている。ナットはロシアのオルガリヒやインドの鉄鋼王ミッタルとも近い。ナットは今後のロスチャイルド家のホープである。
またロスチャイルド家による日本財閥の再編も進んでいる。日本で2001年に三菱ロックフェラーと対決するため、三井と住友両銀行を合併させ、ロスチャイルド勢力の純化を図った。住友財閥は、元々ダイムラー=シーメンス社の影響下で、ドイツ・ロスチャイルド系の企業グループだった。みずほ銀行も、大きく言うと三井・住友系列。三井、住友の合併は、2000年のJPモルガンとチェース・マンハッタン銀行の大合併の余波を受けたものだ。JPモルガン・チェースは、アメリカにおけるロスチャイルド勢力の生き残りのための純化だった。西川善文・三井住友銀行会長は、UFJを三井に合併させようと奮闘したが、三菱ロックフェラーに取られてしまった。2005年にロックフェラーの手下の竹中平蔵と金融庁から攻撃を受けて、引責辞任している。しかしその後、何とか復活を遂げて、日本郵政株式会社の社長に抜擢された。この日本の三井・住友合併によるロスチャイルド系生き残りを主導したのが、ジェイコブとナットだと思われる。(ナットが当時、来日している)
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勿論、ロックフェラーが衰退したからといってロスチャイルドが万全ということはないだろう。ロスチャイルドの合併も、大同団結しないと生き残れないという危機感の結果であろう。またロスチャイルドはBRICS頼みの戦略だが、中国、インドともにロスチャイルドとは古くからの関係があるとはいえ、逆に言えば、対立の歴史も長い。ましてユダヤ商人との長い戦いの歴史を持つロシアともなると、ロスチャイルドといえどもそう簡単に主導権を握ることはできないとみるべきだろう。
以上、没落まっしぐらのロックフエラーに対して、ロスチャイルドは一族の大同団結とBRICS路線によって生き残りを図っているが、その力は絶対ではない。こうしたロスチャイルドの現状を踏まえ、改めて、BRICSが主導する脱グローバリズムの可能性を追求していきたい。
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