階級社会が生んだセントラルドグマ DNAの突然変異説
政治、経済の話から逸れ、生物学の話になりますが、社会的固定観念がどのように形成されるかにかかわる話です。少しお付き合いください。
教科書では、獲得形質は遺伝しないと教えられている。しかし、たまたま遺伝子に起こった突然変異の積み重ねで、生物がここまで環境に適応してきたなんてありえない。獲得形質が遺伝子に書き込まれる仕組みが、見つかっていないだけで、必ずあるはずだと考える方が普通ではないだろうか。
中学生の頃、「獲得形質は遺伝しない」と教えられ、衝撃を受け、そんなことはあり得ない。いくら頑張っても後世の遺伝子には何も残せない。仮にそうだとしても、そんなこと学校で教えていいのか、と思ったのを記憶している。(もちろん、中学生なのですぐ忘れた。)
「獲得形質は遺伝しない=突然変異が進化の全て」という認識が、どういうわけか受け入れられ広まったのは、なぜなのか?
思ったのは、普通の日本人ならこの認識には違和感を感じるはずということ。これは欧州社会特有の背景があるのではないか。私権闘争が強く、階級社会である欧州では、上位階級は自分たちの既得権益は放したくないという思いが強い。優秀な自分たちが上に立つのは当然、それはDNAレベルで決まっているのだ。と、階級固定の共認支配もくろんでもおかしくない。下の者からしても、「現実にそうだ」とあきらめもつく。
もちろん、発見はアメリカで行われているが、アメリカと言えども欧州の精神性を受け継いでいるし、新参者に対しては厳しい社会である。で、調べてみると、なんと2重螺旋発見者の1人、ワトソンは、悪名高い人種差別主義者であるらしい。
ウィキペディアより >優れた業績の反面、問題発言が多いことでも知られる。、、(中略)、、2007年10月14日、「黒人は人種的・遺伝的に劣等である」という趣旨の発言が英紙サンデー・タイムズ一面に掲載された。同紙によるとインタビューにおいてワトソンは「アフリカの将来については全く悲観的だ」「(我々白人が行っている)アフリカに対する社会政策のすべては“アフリカ人の知性は我々と同等である”という前提で行われているが、それは間違いである」「黒人従業員の雇用者であれば、容易にそれを納得できるだろう」などと語ったという。
この報道は欧米で大きな波紋を呼び、英国滞在中だったワトソンは謝罪と発言の真意が曲解されているとの旨のコメントを発するとともに、米国に緊急帰国した。結果として、コールド・スプリング・ハーバー研究所を辞職に追い込まれ、名声は地に堕ちた。2019年1月2日のPBSのドキュメンタリー番組でも同様の発言を行い、同研究所の名誉職を剥奪された。<
もちろん、黄色人、黒人、白人は生きてきた環境がかなり違うので全く同じとは思わないが、ワトソンは筋金入りの差別主義者のようである。穿った見方をかもしれないが、ワトソンは人種や階級による社会的地位の固定を目的として、DNA研究にエネルギーを注ぎつくしたのではないかとさえ思えてくる。
そして、それは、(70年前の)欧米人の意識に合致し、社会的に受け入れられたのではないか。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nihon-syakai.net/blog/2019/12/9552.html/trackback