日本人は何を学ぶべきか~近代社会の騙しの構造~第6話:「権利」はバラバラな個人を作り出す
画像は、コチラよりお借りしました。
『日本人は何を学ぶべきか?~近代社会の騙しの構造~』シリーズは、今回で第6話。
第1話:プロローグ
第2話:自由市場など幻想である
第3話:市場拡大は絶対なのか?
第4話:何故官僚は暴走するのか?
第5話 :支配者の手法~アメリカ発の民主主義
第6話では、民主主義の基本的概念とされている「権利」という観念を検証します。
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1.前回のおさらい
第5話では、アメリカ発の「民主主義」の実態を検証しました。
アメリカの民主主義には2つの階級が存在しており、一握りの特別階級が大部分の大衆(=とまどえる群れ)を支配する(=飼いならす)ために、マス・メディアを使って合意形成(=合意のでっちあげ)を行っている実態が明らかにされました。
2.権利とは何か?
●民主主義の3つの考え方
①基本的人権 :人は生まれながらにして、生命・自由・財産を守る権利(人権)を持っている。どんな権力もこれを侵すことはできない。(ロック:市民政府二論、1690年)
②国民主権 :政治のあり方を決定する力である主権は国民のものであり、国民の意思に基づき行使されなければならない。(ルソー:社会契約論、1762年)
③三権分立 :権力が一箇所に集中すると、濫用され、人権を侵害する恐れがある。それを防ぐ仕組みが三権分立。(モンテスキュー:法の精神、1748年)
●その実態は?
③の「三権分立」については、既に第4話で指摘されているように、その実態は三権(立法・行政・司法)を隠れ蓑にした「官僚」が権力を握っています。近年、国民の意思とは乖離した「官僚の暴走」が問題になっています。
②の「国民主権」についても、前回(第5話)扱ったように、国民主権とは名ばかりで、一人握りの特別階級がマス・メディアを使って一般大衆の合意形成(=マスコミによる共認支配)をしているのが実態です。日本では、小泉元首相の郵政民営化選挙以降、露骨なマスコミ支配が強まっています。
このように見ていくと、残る①の「基本的人権」についても検証する必要があるのではないでしょうか。日本でも、基本的人権を基にした「権利」主張の横行が目に付くようになってきました。(例えば、マナーファシズムや訴訟社会など)
これまで私たちは、学校で習った「権利」という観念を当然のことのように使っています。
しかし、「権利とは何か?」について考えたことは殆ど無かったのではないでしょうか。
この「権利」(人権)という観念は男女同権にせよ、嫌煙権にせよ日照権等にせよ、全て己の利害を、相手や社会に対して要求する際の根拠概念として用いられています。もちろん現在国家の最大の支出項目である福祉も基本的人権が論拠となっています。しかもその要求の中味は概ね「いい生活」や「身分獲得」の私権がらみです。つまり私権の追求と保証を正当化し、美化した観念といえます。
ところでこの「権利」なる観念はどこから生まれたのでしょうか?この観念が生まれたのはロック・ミル・ルソー等の近代思想家が起源ですが、いずれも国家による、私有権と生存の保証を核とした主張です。そしてその権利の根拠となっているのが「天賦人権説」。つまり人権は生まれながらに与えられているもの、天が与えたものという訳です。要するに自然科学上や社会科学上の事実に基ずく根拠は一切ありません。
全く現実の根拠が無いにもかかわらずそれが作られた理由は、おそらく近代になって万人に市場という私権追求の可能性が開かれ、その主体を正当化する必要性にあったのだと思われます。つまりこの権利という観念は私権主体として、社会や相手に対して批判や要求を行う上で、そういった要求を正当化する観念として捏造されたものと言えると思います。
>しかし、剥き出しの自我では人々に共認されない。社会に要求する以上、それがあたかも本源的要求であるかの様に見せかけなければならない。そこで、際限なく肥大してゆく反社会的な自我やそれに基づく要求を正当化する為に、もっともらしく幻想観念化した権利という欺瞞観念を捏造した。権利とは、集団捨象の自我→要求をもっともらしく見せかける為の架空観念に過ぎない。だから、近代思想が掲げる権利は、どれを取っても「この権利は絶対である」という根拠など全く何も無いのであって、あるのは己の自我・私権を貫徹する為の一方的な要求だけである。だからこそ、近代思想は権利だけを絶対的なものとして主張し、義務を欠落させているのである。 (実現論2_8_05)
貧困が消滅し私権圧力が衰弱すれば、普通の人々は取り立てて私権上の不平不満もなくなり、要求には収束しなくなる。つまり普通の人はモノを言わなくなる。だからこそ逆に一部の否定性や被害者意識の強い人々の声だけがまかり通るようになっていく。それがいかに殆どの人の実感からずれていたとしても、権利という旧観念を社会統合上の観念として共認している限り、反論も出来ないので次々と法制化され強制されていく。同じ旧観念を飯のタネとしているマスコミもそれを後押しする。
旧観念が「自由」というお題目とは裏腹に、一握りの人々によって、規制だらけのファッショ社会を作り上げていくからくりはここにあると思う。
3.結論
・権利とは、集団捨象の自我→要求をもっともらしく見せかける為の架空観念である。
・近代思想は権利だけを絶対的なものとして主張し、義務を欠落させている。
・従って、権利を主張すればするほど、自分だけのことしか考えない(=社会のことなど考えない)、「バラバラな個人」を作りだす。
4.公私のバランスが崩れたのは何時か?
これまで、民主主義を構成する基本的人権(権利)や国民主権、三権分立などの近代思想の観念を一つ一つ検証した結果、いづれも実態を伴わない架空観念であり、騙しであることが判ってきました。
特に、今回扱った「権利」という私権を正当化する観念は、社会のために何かをするという意識より、いかにして個人の権利を拡大するかという意識に変化させました。
日本で、このような大変化が起こったのは戦後です。
アメリカによるGHQ製の憲法には、主権は国民に存すると定められました。基本的人権が保障され、国民の権利は拡大した点は向上ですが、その半面、義務が削減され、国防の義務、国家への忠誠義務がなくなり、実質的な義務は、納税のみとなりました。
⇒次回の第7話では、日本人の公私のバランスを崩してしまった、「アメリカの戦後占領政策」を扱います。
欧米流の近代思想(個人主義・自由主義・民主主義など)が、どのようにして我国に浸透していったのか? を見ていきます。
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コメント5件
通りすがり | 2011.12.01 13:45
産経のネットアンケート
http://sankei.jp.msn.com/life/news/111117/trd11111723390026-n1.htm
「TPP問題」について、15日までに9125人(男性6527人、女性2598人)から回答がありました。
「TPP交渉参加は日本に利益をもたらすか」については「NO」が87%に達しました。「交渉参加をしても不利になった場合は離脱できると思うか」は「思わない」が89%と大多数を占め、「政府の説明は十分か」については「NO」が94%と圧倒的大差をつけました。
(1)TPP交渉参加は日本に利益をもたらすか
13%←YES NO→87%
(2)交渉参加をしても不利になった場合は離脱できると思うか
11%←YES NO→89%
(3)政府の説明は十分か
6%←YES NO→94%
通りがけ | 2011.12.02 8:09
日々坦々さま「脱「脱原発」の加速~調達価格等算定委員会人事のワナ (東京新聞)」
http://etc8.blog83.fc2.com/blog-entry-1293.html
>「ネズミが衛生を語り、居並ぶハエが拍手を送る」
ネズミ=核武装米占領軍と地位協定
衛生=放射能安全
居並ぶハエ=霞ヶ関官僚ハエ・天下りOB政商ハエと官僚出身政治屋ハエと記者クラブマスゴミハエ
まさに地位協定下の米軍植民地無法奴隷国家ニッポンのことではないですか。
やはり国民投票は「脱原発」などという実施しようとすればネズミとハエが真っ黒にたかって腐らせて餌場にしてしまう政治的不確定命題ではなく、至極単純明快に「地位協定破棄」いっぽんで行うべきということです。まず最初に地位協定破棄ありき。
これならネズミもハエもまったく寄せ付けないまま戦後ずっと無効化されてきた日本国憲法を発効でき、しかる後にはネズミの国外駆除もハエのたかる地位協定治外法権汚職腐敗汚辱層の粛清除染も容易に迅速に完遂できます。
通りがけ | 2011.12.02 15:52
この国の霞ヶ関役人が官吏公僕の立場を越えて米軍の治外法権の虎の威を借りて三権分立を侵し政治を壟断してきたのは地位協定あるがゆえです。原発利権などその最大のものです。この官僚ファッショ政治は小泉政権時代に完成しました。菅前原岡田仙谷枝野野田等、みな小泉チルドレンです。米軍に奉仕するためには恥知らずな棄民テロ政治も嬉々として断行する、下品で愚劣な霞ヶ関アメポチスパイ官僚主導政治のチンピラな手先どもです。
こんな腐ったアメリカさまべったり宦官政治を日本国から一掃するには、人類史の恥辱「地位協定」の断固拒否、即時破棄が絶対必要であり、かつ十分条件であります。
yellow hermes | 2014.02.03 3:40
hermes online store 日本を守るのに右も左もない | TPPという逆境転じて日本人は目覚め、立ち上がる事が出来るのか?
コージ | 2011.11.30 6:33
時々こちらのサイトの記事で勉強させてもらってます。すごい記事ばかりですね。
TPP協議参加について、鈴木宗男さんのブレーンの佐藤優さんが、野田首相をほめています。「よくぞやった。これで全世界が日本の決断に促されて動き出した。野田の決断で、プーチンはユーラシア同盟に動き出し、中国包囲網をしこうとしている。世界が帝国主義に動きだしたのだ。中国は航空母艦を作り、情報サイトへのサイバー攻撃などみても危険な国なので、日本は、中国が核のアジアブロック経済ではなく日米ブロック経済の選択をしたことはは外交上正しい判断である」、と述べています。彼は国内への破壊的な影響には触れずに国際政治でTPPを肯定しています。また中国との壁を作ることで、日本国内の雇用が広がる、プラス面が多い、そうです。時間があれば、これについての分析をお願いできたらと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=L4PwLC9sKHI&feature=related