林業再生の最大のチャンスとなる時代が到来してきている
1. 林業や里山において、自然の摂理がおかしくなってきている
現代社会で、直面している問題には、環境問題・大気汚染・異常な天候など様々な事象があるが、それらに共通する根本原因には、自然環境の「自然の摂理」がおかしくなってしまっている事がある。中でも、農業における獣害、里山の崩壊、豪雨における河川の氾濫などは、古来からあった自然の循環を促す「森」が機能を果たしていない現れではないだろうか?
2. 日本の森林の置かれている状況
現在、日本における木の需要について押さえておきたい。グラフから1975 年から年々減少傾向にあるのが読み取れる。一方、2000年以降は持ち直してきており、上昇傾向だ。
ただし、本来の自然のあるべき姿からは逸脱している。近年、自然災害や異常な天候が見受けられるのも、自 然の摂理に反しているからではないだろうか。
環境省によると、2000~2010 年の間に世界で減少した森林面積は年平均約 521 万 ha で、これは 1 分間に東京ドーム約 2 個分に相当する森林面積が減少している計算である。
3. なぜこうなったのか?
今の森林の衰退を齎した原因は何だろうか。
今の森林については、「持ち主(個人)が管理・保全する」という仕組みになっている。だからこそ、人々の意識としては、『林業が儲からない=森を保全しない』というシンプルな構造になっている。その結果、今日のような衰退に繋がってきているのではないだろうか。国の補助金制度があっても維持できていないのが事実である。
これからは、今まで国の指導してきた「資源造成の時代」は終焉している事を自覚し、 今後は地域で『活用する』時代へと方向転換していく時を迎えているのではないだろうか。
4.森林再生・林業のチャンスとなる時代の到来
そう考えると、実は今、林業にチャンスが訪れている。 国産材の需要は増加しているのだ。
①外国産材の高騰から、国産材の需要増
現在、国内産の木材の価格が高騰している。
これは、コロナ禍における海外発のウッドショックを背景としたもので、外国産材の輸入木材の高騰に伴い、代替としての国産材も需要が高まった結果、価格上昇が起きているのである。
これまでは、どうしても安い外国産材の木材に国産材は勝てない状況であった。工事現場の近くの林産地から木を持ってくるよりも、海外からコンテナで運んできた方が安くて、強い木材が手に入る、歪な状況であった。その海外産が手に入らないとあって、国産材にも闘うチャンスが来ている。
②国内の木材活用の大潮流
それに加えて、現在、林野庁や国交省が積極的に木材活用ができるように、法制度を整備していっている。
学校建設における、木三学(木造三階建の学校)などによる木造での建設がしやすくなる法改正や、建物の内装を積極的に木質化しようという動きが急激に増えてきている。 耐火性能を確保する木材の技術開発などもあり、高層ビルですら木造化が実現できる時代となった。(参考:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/info/18/00037/091300059/ )
③日本の木材は伐採・活用の適齢期を向かえている
日本の現在の木材は、戦後の住宅建設需要を見据えて植えられたスギやヒノキが中心だ。それらが1950年から70年を経て、ほとんどが70年生の伐採時期を向かえている。これは、林業にこれから参入する側から見れば、実は大チャンスで、「既に切る木がある」のである。
(参考:“林業では食べていけないというのは、大きな間違い”
“だって現状、いちから木を育てなくていい。切ればいい” )
5,これからどうするべきなのか
ではどうするべきなのか。今までのように、個人が森林を管理・保全するという枠組みを越えていくこと。
木を木を切るだけ。木を加工するだけ。木を販売するだけ。というこれまでの林業における分断した取り組みから、川上~川下までの取り組みを一貫していく事。
個人の林業家としてではなく、組織として、木を育成するところから木を販売するところまでをおこなっていく事が必要な事ではないだろうか。
例えば、西粟倉村では『百年の森林構想』として、西粟倉村の面積の 95%にあたる森林(そのうち 84%が人工林)の 個人所有の森林を 10 年間、村で預かり一括管理を行い持続可能な森林経営に取り組み、6次産業化を進めている。
また、(株)西粟倉・森の学校の起業により、木材加工・販売から、レストラン・カフェ・ショップまで運営しながら、間伐材の有効利用や販売先の開拓、林業従事者の雇用の増加へと繋げている。
多くの壁にも当たりながら、森林の一括管理の必要性について、山林所有者の理解と協力を得るため、山林所有者への説明会を団地毎に開催するとともに、森林管理のための IT システム導入や事業に関わる外部人材の募集について村全体として取り組んでいった。
林業だけでなく、農業や漁業などの一次産業には、チャンスが訪れている。個人の枠を越えて、組織となって川上から川下までつなげていくことで、新たな可能性を生み出していけるはずだ。
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