【世界の力を読み解く】戦争とe-sports 水面下で進むサイバー分野の人材育成
最近、仕事を通じて『e-スポーツ』という言葉を耳にすることが増えました。中でも近年では、この分野に特化した人材を育成しようと文科省も推奨を打ち出しています。
実は、eスポーツを学習や部活動で採用した学校は、2021年には日本では285校に及ぶそうです。(https://toyokeizai.net/articles/-/462330)
これまでeスポーツは、「ゲーム=遊び」という程度の認識だった昭和世代の人間にとって、ゲーム性以上に学びという面で市民権を得ている現状に驚きを隠せないのは私だけではないと思います。
先日ある学校法人のとある理事者にこの状況を伺ったところ、現在のウクライナ情勢を引き合いに出しながら日本の国力という点において事態は深刻だという認識を示されました。
他国(特に中国)などは、この分野における人材育成が国家的支援によって先行しておりeスポーツ分野における人材育成は既に負けているという危惧もあるようです。
先般の「ウクライナ情勢から、21世紀の情報戦を考える。」記事では、21世紀型の新たな戦争の姿を考えました。
一方で、eスポーツという新たな産業がどう、この世界覇権をめぐる闘争に関わるのか。
この2つはどこで接点をもつのか?少し深堀したいと思います。
■ウクライナ情勢のもう一つの情報戦
ウクライナとロシアの闘争において、メディアを使った情報戦の他にも21世紀を代表する特徴が、「無人機(ドローン)」を使った斥候戦(情報戦)の展開と言われています。
〇『ウクライナとロシアによる戦争で、”戦闘の無人化”が進んでいた!』
〇米がウクライナに供与「自爆型ドローン」とは オート兵器は戦争を変える? 日本も検討
これまで前線でリスクの高い斥候を無人ドローンで実施し、場合によってはその無人機に爆薬を積んで自爆させるなどの手法がとられているという報道もあり、戦争の前線の様相がフィジカルからサイバーへ大きく変わりつつあることが実感できます。
■eスポーツと戦争
この無人偵察機等の運用には、システムだけでなく指示を出す操作者、いわゆるデジタルデバイスに長けた人材が必要。
実はこれが、各国がeスポーツ(サイバー分野)を国家プロジェクトとして推進したい思惑に他なりません。
>銃の代わりにコントローラーを握る
このeスポーツチームはケンタッキー州にある米陸軍駐屯地Fort Knox(フォートノックス)に拠点を置くマーケティング&エンゲージメント旅団の中の一部隊で歴とした米陸軍の公式部隊である。所属するメンバーは銃の代わりに多くの時間をゲームコントローラーを持ち、画面の前に座って何時間もゲームをする。
>未来の戦争はコントローラーで戦う
無人航空機(UAV)に無人車両(UGV)、無人水上艦(USV)とアメリカ、ロシア、中国といった大国は無人兵器の戦力強化を図っている。これらの多くは遠く離れた場所から遠隔操作される。操作に使用されるのはPS4、Xboxのコントローラーやジョイスティックだ。「ワールドオブタンク」といったゲームをやったことある人なら分かると思うが、システムさえ整えば戦車の全ての操縦はほぼ全てコントローラーで操ることができてしまう。
近い将来、全ての兵器は無人化されるかもしれない。その時、重要なのは兵士としての能力ではなく、ゲームのスキルだ。eスポーツチームはそんな未来の優秀な兵士をスカウトする部隊でもあるかもしれない。
eスポーツは、そのゲーム内容にもよりますが、いずれにしても長時間の集中力、精密なコントロール、対戦相手の分析やチーム内での役割分担など、相応に高度な技術力やチーム力を必要とするものだそうです。
これらの能力を現代の若者の嗜好性に合わせて、「遊び」の延長で訓練する時代になったということでしょう。
米国では既にこうした情報が表に出ていますが、実はeスポーツを協力に推奨してきたのが中国です。
〇スーパースターが活躍、中国「eスポーツ」の大熱狂~10年先を行く中国と後を追う日本~
>eスポーツの専門課程を設置する大学も
アジアにおけるeスポーツは中国の市場拡大が著しい。
中国では2020年1~6月期の市場規模(営業収入)が前年同期比54.69%増の719億3600万元(約1兆1500億円)に達した。ユーザー数も前年同期比で9.94%増加し、4億8400万人となった(「2020年1~6月中国ゲーム産業報告」より)。実に3人に1人がeスポーツを楽しんでいるという計算だ。
中国政府は2003年、eスポーツを第99番目のスポーツ種目として正式に承認した。近年では2019年に、中国伝媒大学、上海戯劇学院、上海体育学院などの5校と18の専門学校でeスポーツ専門の学部を設置した。
中国は過去の一人っ子政策で、各家庭に一人の子息を持つ家庭がほとんど。そうした過去の政策から戦場に大事な一人息子を死地に出すということについては強い抵抗が予測されます。
そういった国民感情を止揚しながら、「一帯一路」政策を実現させるべく力=人材を育てたのが、このeスポーツというサイバー分野。
(おそらく、中国は世界覇権を握る闘いに向けた準備をロシアのプーチン同様、着々と進めていると思われます)
この分野がすべて「戦争」のために発展したというのは過言だと思いますが、一方でこうした各国の思惑が背景にあることは認識し、我々日本人もより自覚的に社会の変化と向き合うべきなのでしょう。
世界を左右する力が、時代とともに変わっていいきます。各国の情勢もメディアが流す情報で一面的に捉えるのではなく、より自分たちのアタマや、身近な変化にアンテナを張って生きることが少なくとも「日本」を守る一歩であるように思います。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nihon-syakai.net/blog/2022/05/13381.html/trackback