「信用創造」の本質と限界。今、新たな経済システムの模索が始まっている。
近代の経済を考える上で不可欠な概念の一つに、「信用創造」があります。
金融や経済に興味のない人には馴染みがないかもしれませんが、これは銀行が貨幣を「生み出す」機能として知られ、今の資本主義社会には欠かせない機能ともいわれています。
そこで今回はこの「信用創造」について考えてみたいと思います。
通貨が発行される仕組みは、学校教育はもとより、経済学でも全く触れられることのない領域ですが、このシステムを知ることによって、お金が増える仕組みについての理解が深まると思います。
まず、信用創造とは何か。
「るいネット」の“実現論”の中で端的に説明している項があります。基礎知識として紹介したいと思います。リンク
【信用創造とは何か】
・両替商等は、預かった金銀財宝100の内、毎月返済に必要な量は10以下であることに気付く。
そこで「余っている90を根拠に」勝手に預り証を作り、それを金欠の貴族や商人に(担保と利息を取って)貸し付け始めた。
この瞬間こそ、金貸しが誕生した瞬間であり、同時に金貸しによる紙幣発行が誕生した瞬間である。
しかし、夫々の金銀には既に預り証が発行されており、金貸しが勝手に発行した分は明らかに二重発行であり、詐欺である。そして、この詐欺こそ、金貸し(現代の中央銀行)が無から有を生み出す錬金術の秘密である。彼らはこの詐欺行為を信用創造と称している。
以上、引用終わり。
ここで断言しているように、信用創造といえば耳ざわりが良いですが、壮大な詐欺行為であるとも言えます。
こんな薄氷を踏むようなシステムの上に私たちの経済社会は成り立っているわけですが、果たして大丈夫なのでしょうか。
続いて、
「貸し出すことでお金が増える?摩訶不思議なお金の世界」 リンク
から、その仕組みに関する記事を抜粋紹介したいと思います。
【「信用創造」は完全無欠の「錬金術」か?】
たとえ信用創造の仕組みによって次々と貨幣が生み出されたとしても、それによって増えた貨幣は当然、全てが現実の「キャッシュ」というわけではありません。
銀行としては、このような「錬金術」のような真似を繰り返して何か不具合は生じないのでしょうか?
確かに銀行にとって非常に困る事態はあります。
それは即ち、今でいう「取り付け騒ぎ」です。
ちなみにそのような事態を防ぐために、現在では中央銀行による準備金制度があるわけですが、はじめに信用創造の仕組みを利用した銀行は、この「取り付け騒ぎ」によって不幸にも潰れてしまいました。
当時は、金や銀などを元手に銀行家が信用創造の仕組みを考え出したばかりだったため、多くの人がこのシステムを理解していませんでした。
銀行の振る舞いを不信に感じた民衆は、一斉に銀行から資産を引き上げようとしました。
ではなぜこのような「錬金術」ともいえる銀行の手法が認められるようになったのでしょうか?
【時代が「信用創造」を求めていた?】
その背景にはいわゆる「産業革命」がありました。
実は当時の欧州諸国は、銀行が信用創造によって生み出す莫大なお金を必要としていたのです。
既に述べたように「信用創造」という仕組みを考え出した初めの銀行は取り付け騒ぎによって潰れてしまいましたが、結局、この行為は当時の法律によって正当化されることになりました。
人々の「不信」を払拭してあまりあるだけのお金に対する「需要」が存在したのです。
さらに、一つの銀行がさきに述べたよな「取り付け騒ぎ」が発生して混乱に陥ったときのために、中央銀行が各民間銀行に対して、資産のうち一定の額を中央銀行に預けるような法律を制定したのです。
これがいわゆる「法定準備制度」といわれるものです。
法定準備制度により政府が介入することで、中央銀行が保有する貨幣の限度額を決めるのですが、基本的にすべて政府が決めてしまうわけではありません。
準備率自体は任意であり各国ごとに異なります。
ちなみに現在では、たいていの場合その銀行が現実に保有している資産の額によることになります。
つまり銀行は、人々の「借金」から合法的にお金を創り出せるようになったというわけです。
これが現在まで続く「信用創造」システムの基礎となっていきました。
それによって、銀行が保有する資産とは「政府の発行した貨幣」と「預金準備率によって各民間銀行が各国の中央銀行に預けているお金」、そして「銀行自身が実際に所持している口座預金の総額」の合計となりました。
このように銀行が「信用創造」機能をもったことが産業革命を促進し、結果として当時の欧州列強に軍事力の増大と帝国主義を生み出す原動力として作用したことになるのです。
以上引用終わり
十字軍遠征や大航海時代といった、領土的野心や侵略戦争の為の資金獲得を目的に登場した金貸したちは、やがて「産業革命」という大量生産・大量消費へと世界が向かう中で、いよいよその本性たる騙しと錬金を繰り返し、経済力で世界を支配して行き、やがて国家が定めた「法」によってその存在を守られるに至ります。
金貸しによる国家支配、世界支配がここに成就するわけです。
しかし、この構造は普遍的なのでしょうか。
今世界は、これまでの戦争経済や大量消費経済といった既存のシステムが崩壊しようとしています。
古い観念に囚われ答えが出せない政治家や経済学者に代わり、市民レベルでも様々な追求が始まっています。仮想通貨や国家紙幣もその一つです。
「信用創造」という幻想に支えられた経済システムに変わる、現実の社会や人々の意識に応えたシステムの模索がはじまっています。
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