人々の意識は、時代と共に変わっていく。
〇人々の意識は、時代と共に変わっていく。
自分は、社会人になってから、約15年間、いわゆる教育業界に携わり、たくさんの小学生・中学生・その保護者の方々との関わりを持ってきた。
その中で、一言で「教育」と言っても、保護者・生徒たちの求めるものというのは時代により大きく変化することを実感している。
例えば、私が社会人として働き始めた2009年ごろは、まだまだ学歴への強い期待はあり・・・
保護者も生徒も「少しでもランクの高い学校へ」という想いを感じることが多かったように思う。
ただ、2011年辺りを境に、とにかく学歴を・・・と言う期待を感じることが減り、代わりに「勉強も、その他のこともバランスよく頑張ってほしい」や「勉強では、点数をとれるだけではなく、勉強のやり方そのものを習得してほしい」と言う期待を受けることが増えた。
期待の質・中身が変わっていったのだ。
では、それは何故なのかと考えると、2011年の311による震災及び福島での原発事故により「これからの世の中、勉強ができるだけでは生きては行けない」という人々の意識が喚起されたからではないかという気がしている。
上記のように、時代の流れや社会での出来事は、人々の意識を大きく変えていく。
そして、それに伴い人々の教育に求める期待も変容を遂げていく。
では、これからの時代、教育に対して期待されることは一体何なのか?
どう言った中身が求められるのか。
ぜひその点を明らかにしていきたいというのが、自身の思いである。
〇近年における人々の気になる動き…。⇒子供の習い事への支出額が増えているということ。
2016年~2022年における「教育費の平均支出金額」は増加していることが分かった。
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未就学児では2016年4,164円→2022年8,916円と4,752円の増加
小学生では2016年11,685円→2022年15,394円と3,709円の増加
※習い事の単価の料金は殆ど変動なし
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と、上記の通りである。
では、何故習い事費用は増加しているのだろうか。
聞いた話によると、例えば共働き夫婦だと、習い事の一つでもさせないと家で子供だけで過ごさなければならず、「手持無沙汰」になってしまうようだ。ならば、習い事を…ということで、空白を埋めるように、週の予定が埋まっていくことになる。
そこには預かり需要としての習い事と言う位置づけが存在しているという訳だ。
従って親としては、金銭的には多少懐が厳しくても習い事をさせなければならないという事情があるようだ。
本人のやりたい習い事・親がさせたい習い事・・・行く先々を考えるとさせておいた方がいい習い事…とどんどん増えていく。
〇支出増の背景として、祖父母からの支援が近年においては、以前よりもだいぶしやすくなっている
以下は、「教育資金の贈与の特例」の説明となる。
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平成25年4月1日から令和5年3月31日までの間に、教育資金管理契約を締結する日において30歳未満の方(以下「受贈者」といいます。)が、教育資金に充てるため、金融機関等とのその教育資金管理契約に基づき、受贈者の直系尊属(父母や祖父母など。以下「贈与者」といいます。)から信託受益権を取得した場合、書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合または書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合には、その信託受益権または金銭等の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、取扱金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより、受贈者の贈与税が非課税となります(注1)。
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〇学校に対する期待度という観点から。
習い事の増加に対する背景として、もう一つ考えられるのは、学校に対する期待度ではないだろうか。
ある母が言うには、「学校は、できないことをできるようにしてくれればいい」
言い換えれば、「できることを、よりできるように…」の期待は、学校ではなく、習い事に向けるということか。
とりわけ、現在は昔とは違い、勉強さえできれば・学歴さえ手に入れれば…などと言った価値観・学歴に対する信仰が崩れて久しい。
となると、必然的に勉強以外の習い事も「あれも」「これも」と真面目な親ほど増やしてしまう傾向があると思う。
それを前述の共働きによる預かり需要が更に拍車をかける。
今の子供たちにとって、複数の習い事をするということは最早当たり前。
極めつけは、以前私が担当していたとある小学校4年生の女子だが、何と習い事を週に9つも掛け持ちしていた。これには私も本当に驚いた…。
ただ、9つは流石に極端な例だとしても、今後もできるだけ多くの習い事を子どもにさせようとする流れ自体は変わらないだろう。
そして、注目したいのは親世代の意識だ。いわゆる今の小・中学生の親世代の多くは、就職氷河期世代にあたる。つまり、大学まで進学していたにも関わらず就職難にあった受難の世代。
その世代の親が、子供にも同じ想いをさせないようにと転ばぬ先の杖で、将来を見据えて色々な経験を積ませるべく習い事を数多くさせるであろうことは想像できないだろうか。
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