食糧・エネルギー価格の高騰が有機農業を加速させる
2019年中国武漢でコロナウィルス感染者が発見されて以降、全世界で経済、価値観、ライフスタイルに大転換が起こりました。
更に経済的にはロシア・ウクライナ紛争をきっかけに食糧、エネルギー価格が高騰。
大きく経済を押し下げる状況にあります。
国内の食料品値上がり率は2022年4月以降の平均値上がり率で11%
https://www.j-cast.com/kaisha/2022/04/20435799.html?p=all
特に小麦の上昇率は凄まじいものがあります。
例えば、日清製粉では2022年6月から以下の商品が値上がりします。
・強力系小麦粉 25kg当たり399円の値上げ
・中力系・薄力系小麦粉 25kg当たり351円の値上げ
・国内産小麦100%小麦粉:25kg当たり415円の値上げ
https://www.tokyo-np.co.jp/article/163227
実はそれだけでなく、農薬、肥料に代表される農業資材も値上がり、今年に入って値上がり率は10%~20%以上上昇しています。https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2022/03/220331-57901.php
具体的には、2022年2月の対前年同月比は、肥料+10.8%、飼料+15.7%、光熱動力+23.3%、建築資材+27.3%です。
表層的には厳しい経済状況ですが、農業においてはそうとも言い切れません。
農林水産省が定めた「みどりの食糧戦略」。
この戦略で特徴的なのは
「2050年までに有機農業の取り組み面積の割合を25%に拡大」
「2050年までに化学農薬の使用量を50%削減」
「2050年までに輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の30%低減」
といった脱化石燃料・化学物質が色濃く反映されていることです。
既存の農薬、肥料を使った慣行農業から自然の摂理に則った有機農業を強く推進するために、これから多くの補助金、助成金が計画されています。
有機農業参入の障壁はコストと厳しい登録基準。
コストに関しては、この経済状況が続けば慣行農業の方がコストが上がり、かつ有機野菜より安価で取引されるため、現在の経済状況が続けば経営はかなり厳しい状況となります。
また登録基準についても効率化が検討されているようです。
当然、有機肥料も価格は上昇していますが、ある生産法人では野菜の残渣や精米時にでる米ぬか等を発酵させ自社で植物由来の堆肥を製造することで、エネルギー高騰の影響を殆ど受けていません。
すなわち、世界的な石油等のエネルギー価格が上昇によって、日本国内の農業においては慣行農業から有機農業へのパラダイム転換が加速する状況にあると言えるのでは無いでしょうか。
また、この数年、新規就農者数は5万人/年を超え続けていますが、その中でも有機農業に照準を合わせて就農する人が増えてきています。https://agriculture.rakuten.co.jp/noumusubi/contents/articles/2020/20200424_01/
新規就農者の受け皿であるとある農大では今年に入り、今年度定員が20名のところ40名まで倍増しています。
日本の農業は農薬使用等、安全性が問われてきましたが、社会状況と農政が重なった事によって大きな転換点となるタイミングなのかも知れません。
今までは家庭菜園や貸し農園等、自給志向で農業をする人が目立ちましたが、最近では農大への志望者が急増しているという話もあり、専業農家を目指す人が増えてきています。
コロナ渦の間、多くの人々がこれからの時代どうなるのかという追求に向かっていましたが、ロシア・ウクライナ紛争を契機にこのままでは社会を守れない、社会を守るために農業という実践課題を担う人たちが出て来ました。
本当に皆のために出来る事を実践していく時代に入ったという事です。
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