2014年11月04日

中国どうなる17? 腐敗撲滅運動と中央規律委員会〜政治のための監視システム〜

前回は中国共産党と軍隊という題材で、人民解放軍を恐れる中国共産党の思惑について見てきました。今回は中国共産党と腐敗というテーマでその実態に迫りたいと思います。エントリーの引用は全て「中国共産党 支配者たちの秘密の世界 リチャード・マクレガー著」からの抜粋です。

にほんブログ村 政治ブログへ

中央規律検査委員会

-中央規律検査委員会とは何か-

中央規律検査委員会(以下「中規委」)による捜査と聞けば、党のいかなる役人も震え上がる。しかし、その捜査は多くの人が考えるよなやり方で行われるのではない。一般の法執行機関や刑事犯罪を扱う機関では逮捕することはでず、まず党が容疑の捜査を行う。党内部の反汚職機関である中規委のみが役人を取り調べ、事件性があると判断すれば拘留する権利を持つ。

中規委は、中央組織部や中央宣伝部と同じように、汚職と取り組むこの機関も地方分権化されており、地方政府や各国家機関の隅々にまで小さな支部を持っている容疑者である役人を取り調べたいと思えば、中規委はまず、容疑者の党内ランクの一つ上の機関の許可を得なければならない。容疑者のランクが上であればあるほど、中規委が調査の許可を得るのは難しくなる。つまり、中規委の調査員はつねに牽制されるような仕組みが出来上がっており、最高指導部を調査の対象から外すこうした不公平なシステムによって、中規委はあらゆる場面で政治的駆け引きや政治闘争の影響を受けることになる。

固有大企業の中にも中規委の代理人がおり、全国にあまねく配置され、表面的には万全の対策が講じられているように見えるが、正規職員はたいてい「中国共産党の一般党員」であり、学歴が低く、法律的な教育はほとんど受けていない。この委員会の腐敗摘発能力は、強大な既得権益と世界的影響力を持つ国家へ変貌を遂げる中国国家で起こる腐敗に挑むには適応できていない、と言えよう。

国家機構図(2008年12月末現在)

中央規律検査委員会は建前上は「国の公平な第三者的な汚職取締機関」として位置づけられていますが、その実態は容疑者のランクに合わせた許可を取る必要があり、より上位のランクの取締をしようとすればするほど委員会の存在を否定することに繋がる矛盾をはらんでいるのです。つまり、この委員会の存在は「汚職撲滅」というもっともなスローガンを掲げる政府の自作自演のシステムであり、到底腐敗を完全に取り締まることはできないのでしょう。

 

-中国で汚職が頻発するワケ-

次々と新たな汚職事件が発覚するたびに、国営メディアは憤激と憎悪をもって報道し続け、どの指導者もより真剣に取り組むと誓うものの、状況はほとんど改善されていない。貧しい田舎をはじめ中国全域で上級官僚が関わる事件があまりにも頻発するため、国営メディアでも取り扱いがマンネリになっていた。

ではなぜ、このように汚職が頻発するのか?

ここには根本的な原因がある。役人の給与は微々たるものであることだ。公的立場を利用して金を儲けるという誘惑に打ち勝つのは難しい。中国において多くの人々が政府の仕事に就きたがるのは、その地位が現金に直結するからだ。「すべての役人には三つの生活がある」と言われ、「公人の生活」「個人の生活」そして、第三の「秘密の生活」があるのだ。

取締だけはなく汚職の発生においても根本的な欠陥が存在します。中国において役人が働くのは、国や市民のためではありません。彼らにとって、役人という職業は隠れた現金を獲得するのビジネスマンなのでしょう。

 

-高級官僚を調査できるのは高級官僚だけ-

2005年3月、中国建設銀行の行長兼会長「張思照」はアメリカで告訴された容疑を理由に、規律検査委員会によって拘留された。この事件で時代遅れの中規委のさらなる重大な欠陥が浮き彫りになった。その欠陥とはつまり、高級官僚を管理し調査できるのは高級官僚自身であるという事実である。

大きな固有機関のすべてがそうであるように、中国建設銀行の内部には監視委員会が設けられ、その責任者が中規委の代表の役割を果たしている。しかし、省庁や企業の内部にいる反腐敗委員会の代表は、上司に脱まれれば解雇などの制裁を受ける恐れがあるため、管轄内で発見した汚職事件を上に報拾することはほとんどない。

ただ、張が不運だったのは、告発が海外で行われたために、それが北京の委員会本部の耳に入ってしまったことだ。もし告発がアメリカではなく銀行の内部でなされたものであれば、張は自身に関する調査の承認を任されることになり、調査は間違いなく行われなかったであろう。

中央規律委員会のシステムでは省庁や企業の内部での汚職は浮かび上がることはないようです。情報統制も敷かれる中国では張思照のように外部からの告発がない限り、情報が明らかにされることはないでしょう。ここにも取締機関としての欠陥を見ることができるのではないでしょうか。

政治的に正しい都市「上海」の繁栄と衰退

発展の象徴としての都市「上海」

-上海閥の登場-

上海では90年代半ば、江沢民が北京市長、陳希同を汚職容疑で解任したことは、江沢民がついに中央政府で実権を握ったことを象徴していた。江沢民は上海出身の忠実な部下を中央政府のトップの座に就けることで、徐々に手際よく自分の権力基盤を築いていった。「上海閥」は10年近く中央政府を牛耳り、自分たちの地元に大幅な政策上の特権を与え、他地域から大きな不評を買った。しかし、上海閥の勢力は2002-2003年のあいだにピークを迎え、その後は衰退の一途をたどり、上海市と上海出身の指導者たちはかつてないほど弱体化してくのである。

- 世界に向けた展示物「上海」-

90年代前半の上海市は、商業都市としての華々しい歴史を持ってはいても、商業活動が行われていない都市だった。そんな上海を受け継いだ指導部は、まず商業の活性化に取り組んだ。そして1992年から10年のあいだに、上海は復活を象徴すると同時に、中国の復活を世界に発信するシンボルとして成長を遂げた。しかし、実情は多くの観光客が信じているような自由市場などではなく、党の理想の象徴なのである。

 -勢力を増す上海と北京の思惑-

「上海閥」の勢力が増す一方でそれは政治的特権による成果だとする他地域の怒りが募っていた。そこに目をつけたのが胡錦涛である。彼は上海と対決し、反腐敗や経済政策を取り仕切る資質を大いに宣伝し、悪評の高い上海を押さえつけ、他の地域での人気を獲得しようとしていた。

そして早くも2001年、上海の不動産市場や地元官僚による汚職が、匿名の手紙や陳情柱、中国語の香港メディアや英語圏の外国メディアの記事などを通して北京に伝わり始めていた。胡の支持者たちは上海の汚職という好機を見逃しはしなかった。そしてゆっくりと、上海の力を削ぐべく利用できる証拠を集め始めた。

-不動産スキャンダルからはじまる上海への介入-

2003年周正毅の不動産スキャンダルによって、北京は過去10数年で初めて重大な汚職事件の調査で上海に立ち入り、長いあいだ誰にも手出しをさせなかった上海に北京が介入を果たした。

周正毅の逮捕から一年後の2004年、北京が厳しい全国的な金融引き締め政策を発表したとき、陳良宇は上海の成長ペースを落とすつもりはないと公言した。陳のこのような横柄な振る舞いにより状況は一変し、温と公然と対決したことで、トップレベルの危険な政治紛争に発展した。

これが発端となり、2005年から2006年のあいだに上海政府内の陳の盟友が一人また一人と逮捕、拘留され、『双規』の規定に則って尋問された。また、「陳の盟友」たちは次々と調査官の求めに応じて「すべての資料を提出」したのである。これによって、陳は親族を優遇した罪や地元の企業家が運営する会社に資金流用した首謀者として上海市社会保障基金から告発された。

周正毅

それまで上海閥を中心に勢力を拡大し、急速な発展を遂げた上海は、ここで失態を演じることになりました。また、上海政府の逮捕の裏には「双規」とよばれる規定があるようです。「双規」とは規律違反に対して党の規律委員会が出頭を求めて取り調べることで、逮捕状を取るといった法的手続きはないようです。実態は突如として拉致され、拷問や自白の強要といった残虐なものであり、これらの拷問から開放される手段は自白や仲間の情報提供であるようです。一人の逮捕から関係者の汚職が明るみに出たのはこの「双規」が行われたからなのでしょう。

 -陳の失脚と裏取引-

2008年、陳は裁判で18年の刑を言い渡された。

これにはビジネス取引で優遇を受けているとして長い間噂になっている江とその親族については不問に付すという裏取引によって政治局常務委員会が、陳の腐敗調査を正式に承認したことがある。

また、中央宣伝部は失脚した官僚を厳しく批判するときに、その官僚の異性問題を好んで公表する。そうすることで、汚職は個人の道徳的堕落が原因だとごまかし、本当の原因である構造的な問題が表面化することを避けられるからだ。

上海の事件は、中華人民共和国史上、最も激烈を極めた汚職捜査の一つである。2008年4月までに、官僚と企業家合わせて約30人が収監された。調査が大規模かつ冷酷に行われた背景には、中国共産党の面目を保つ必要があったのだ。確かに上海市の汚職が他の地域より特にひどかったわけではない。政治的な意味で、上海官僚の汚職事件は上海市だけの問題では終わらない体制全体の問題だったのだ。

このように、委員会は政治的武器の範疇から出ることはできないのである。皮肉にも上海が中国を象徴する都市として発展してきた先にはこのような悲惨な末路が待っていたのです。

 

まとめ

以上のように、中国政府は中央規律検査委員会をはじめとするシステム全体に重大な欠陥を抱えており、ライバルを脅かす道具としてのみ機能しているようです。このような欠陥を抱えたまま、腐敗はいつまで続くのでしょうか。規律委員会が共産党を離れ、完全な第三者機関として汚職撲滅運動を遂行すれば、共産党の閣の部分は明るみに出るでしょう。

しかし、官僚の待遇に諸外国と大きな差がある中国では、役人の誰もが地位とお金のために、この矛盾したシステムを自ら引き受けなければならないようです。

 

List    投稿者 nihon | 2014-11-04 | Posted in 01.どうする?マスコミ支配No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nihon-syakai.net/blog/2014/11/4361.html/trackback


Comment



Comment


*