【世界の力を読み解く】~ひとつになれないヨーロッパ1~
当ブログではこれまで、ロシアや中国、アメリカの力の基盤を読み解いてきました。
そんな中、今注目を集めているのはヨーロッパでしょう。
スペインやスイス・デンマーク、EUを離脱したイギリスがコロナはエンデミックとなったと判断し、
ロックダウン政策の大半の制限解除を決定したことは大きな話題となっています。
昨年後半では、ロシアからのエネルギー供給制限問題で、資源・エネルギーの乏しさが露呈したり、
相変わらずロックダウンで経済が低迷する国も出るなど、大混乱となっている地域です。
更には、欧州議会の議長も亡くなるなど、、、混乱に歯止めがかかりません。
そんなヨーロッパですが、そもそもなぜ世界である程度の地位を得ているのか?その力の基盤は何か?に迫ります。
・EUは1993年マーストリヒト条約によって誕生しました。元は1952年設立の欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)(独仏間の対立解除のため)、1958年設立の欧州経済共同体(EEC)、欧州原子力共同体(EURATOM)、この3つが統一された欧州共同体(EC)が前身です。
※ちなみに、このようなヨーロッパ統一思想は、クーデンホーフ=カレンギー伯が提唱した汎ヨーロッパ運動からきています。当伯爵は、日本生まれのオーストリア人。父親の家系はボヘミア系貴族で、母は日本人。さらに本人はフリーメイソン会員で、ナチスと対立、原子力推進派など気になる背景が多いですね。
・EU当初の加盟国はベルギー、ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、オランダの6ヶ国でしたが、その後新たに、デンマーク、アイルランド、イギリス、ギリシア、スペイン、ポルトガルが加盟し、1986年までに12ヶ国に拡大しました。
・1970年代の経済危機(オイルショック)による「ECの停滞の時代」を経て、統合の遅れに対する危機感から、1985年ドロール委員長のイニシアティヴにより1992年までに域内市場統合の完成を目指す「域内統合市場白書」が採択されました。その間、1990年にミッテラン仏大統領とコール独首相が、EMU(経済通貨統合)を形成して一気に政治統合まで実現するとの共同提案を行い、1991年12月のEU創設のための「マーストリヒト合意」につながっていきました。そして、1992年2月には、EMUと、「共通外交・安全保障政策」の樹立を目指す「政治統合」、司法・内務分野における政府間協力の三本柱からなるEUの創設を合意したマーストリヒト条約の調印に至りました。(リンク)
・そんなEUから英国が離脱しましたが、その結果ヨーロッパ諸国でいち早くエンデミック宣言を出し、経済の循環に向かっていたり、脱移民産業に向かい自国民の生産活動=職業確保に向かっていたりと、自国の方針は自国で決めていく『自決路線』へと舵を切っています。
・他にも離脱したイギリスには様々なメリットが表れてきました。(リンク)
>有利なイギリスの交渉ポジション(漁業)
今回の交渉では、EUの方に弱みがある。イギリスの漁業水域(鉱物資源にも主権的権利が及ぶので通常は”経済水域”という)で、フランス、オランダ、デンマークなどのEU加盟国の漁業者はEU全体の漁獲量の4割程度を採っている。これまではEUの共通漁業政策の下で、つまりブリュッセルによってEU加盟国には漁獲割り当てが認められていた。しかし、ブレグジット後はEUから独立したイギリス政府がイギリスの漁業水域について管轄権を持つ。イギリスが資源量等を勘案しながら毎年各国に漁獲枠を割り当てることになるのである。
>有利なイギリスの交渉ポジション(貿易・自動車)
そればかりではない。2020年イギリスは日本やアメリカなどEU以外の国と自由に自由貿易協定の交渉を行うことができ、EUの関税同盟から離脱する2021年からは、これらの協定を発効することができる。
>有利なイギリスの交渉ポジション(農業)
同じことが、アメリカやオーストラリアなどの農産物輸出国との関係でも起きる。
==引用終わり==
このように、英国の離脱によって、当初の目的であった欧州が共同体として、大国に経済力で対抗しようという幻想は成り立たなくなったことが明白になっています。
イギリスに続く国も出てくるでしょう。最近ではスイスまでもEUとの関係を断ち切ることを表明しているそう。
歴史を遡ると、ヨーロッパ周辺の民族は元々海賊や山賊でした。この地域で発展した経済も、基本的には取引関係発のもの。つまり、損得勘定で国同士・集団同士が繋がる関係なのです。
だから、利益がなくなれば当たり前に離脱に向かうのです。
そういった歴史背景を見ても、ヨーロッパという地域単位がそもそも、当初の思想にあったような「自決」できる単位ではないのでしょう。
※ちなみに、日本は縄文時代から「贈与関係」で集団同士が繋がってきた地域です。(【日本の活力を再生する】~集団間の新たな関係を築く「贈与」の力~)
※もしかしたら、提唱したカレンギー伯は日本人の血や価値観が流れていたために、それをヨーロッパという地域で実現したかったのかもしれないですね。
このように分解に向かうヨーロッパですが、元々は世界の中心だったのも事実。(【世界の力を読み解く】~なぜ世界の重心はアジアから欧州へ移ったのか~)
その力がまだ世界に影響を及ぼしている面もあります。
次回は、その力の基盤は何なのか?に迫ります。
to be continued・・・
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