【世界の力を読み解く】~大国ロシア その力の基盤は何か?2~
前回の記事では、ロシアの科学力の中身に迫りました。
今回は、科学力に加え、ロシア最大の武器となっている「諜報力」について、読み解いていきます。
Kira Lisitskaya, K. Kartashyan/Sputnik, Global Look Press, Nikolai Malyshev/TASS
ロシア最大の武器「諜報力」
みなさんがイメージするロシアの諜報部隊といえば、プーチンの古巣である「KGB」をイメージされる方も多いかと思います。
現在は存在していないKGBですが、ロシアの諜報部隊の源流は、1565年にイワン雷帝(4世)が反皇帝勢力の対策として組織した、恩賜皇室領(オプリーチニナ)部隊「オプリーチニキ」にあります。
この政策と部隊こそ、7年で廃止されたものですが、これに変わるように、ロシア帝国の名の下、さまざまな諜報機関、そして、ソビエト連邦の名の下、第一次世界大戦、第二次世界大戦、そして冷戦の中で、時代に応じた諜報機関を設立、人材を育成してきました。
この人材育成で鍛えられた人物で一番有名なのが、KGB出身と言われているプーチンです。
では、ロシアがどのように諜報部員を育成しているのか、ソ連時代の対外用組織 KGB第一総局の流れを汲む「SVR(ロシア対外情報庁)」を元に、少し掘り下げてみたいと思います。
※SVRは、ソフトバンク職員による情報漏えいが報道されて名前を聞いた人も多いかもしれません。
まず、ロシアのSVR職員になるメンバーは、ロシア外務省付属の国立大学のモスクワ国際関係大学に17歳から入学します。
大学に5年間在学した上で、22歳から計5年間の諜報活動技術への訓練を行い、暗号術・変装・暗殺術等あらゆる技術を身につけます。
そして、市民に紛れ込み、あらゆる情報を得るため、一つの職業を完璧に習得します。たとえば、記者です。
17歳から大学へ、22歳から諜報訓練、27歳より5年間の職業習得訓練の計15年の訓練を踏まえ、諜報部員として世界中に紛れ込むのです。
スパイは、機密情報を取得するイメージが強いと思いますが、絶対に身元がバレないように、機密情報を盗むことに限らず、あらゆる情報を得て、自国へ必要情報を伝える役割なのです。
いずれも国家の名の下、国内外情勢の正確な情報獲得、そして分析と伝達を完璧に行うことで、国家を支えてきました。特にロシア、ソ連はこの諜報力を国家維持の鍵として、発展してきたのです。
【参考】
(ロシアに垣間見える「KGBの影」 https://www2.jiia.or.jp/RESR/column_page.php?id=146)
(佐藤優が明かす ロシアスパイの教育とプロの掟-ニッポン放送NEWS ONLINE https://news.1242.com/article/206878)
科学力・諜報力を用いた、軍事・外交工作
前回の記事の「科学力」、そして「諜報力」、これらを組み合わせたロシアの十八番が「ハイブリット戦争」です。
武器代行による武力支援の他、そして現代ではサイバー攻撃を始めとした情報工作を駆使し、20年には米国の大統領選はじめ、政府機関や研究機関、製薬会社へのサイバー攻撃による情報工作、日本では日本オリンピック委員会(JOC)へのサイバー攻撃を行っていることが明らかになっています。
国家が関与するものでは、ロシア連邦軍内のサイバー部隊もありますが、本当に世界から危惧されているのは、GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)、 FSB(連邦保安局)、 そしてSVRが関わるサイバー攻撃です。
サイバー攻撃もですが、SVRをはじめ、連邦機関を用いた対外諜報活動を、国家が主導で行い、各国首脳レベルをコントロールする情報操作(選挙工作)と軍事掌握(武力援助)の両方を用いて、世界の覇権争いを現代でも繰り広げています。
【参考】
(〔研究レポート〕ロシアのサイバー攻撃〜軍事・外交における重要性-日本国際問題研究所 https://www.jiia.or.jp/column/economy-security-linkages-fy2021-02.html)
「科学力」と「諜報力」を元に、国家治安と世界覇権争いを行うロシアですが、
この2つの力の根底には、徹底した現実直視と事実追求の姿勢、そしてそれを元にした人材育成が隠されていました。
次回、この2つの力を元に、世界覇権の獲得へ躍り出た「ロシアの直近の動き」を読み解いていきたいと思います。
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