ベーシックインカムの導入を行う8カ国 社会保障の新しい仕組みを模索
国が国民に必要最低限のお金を支給する「ベーシックインカム制度」 。
個々人が富を追及する資本主義制度そのものがその限界と矛盾を顕在化させている中、新しい制度として注目されています。
日本ではほとんど報道されず、あるいは破天荒な制度として扱われていますが、世界ではその導入に向けた現実的な動きをしている国々が多々あります。
「唖蝉坊の日記」さんの記事を抜粋・紹介しながら、その新しい動きに迫りたいと思います。
【ベーシックインカムの導入実験はじまる】
ここ数年でベーシックインカム、つまり、国民が最低限の生活費として必要とされる額を定期的に受け取るという構想が世界に知れ渡った。
ケニア、オランダ、カリフォルニアなど、さまざまな地域での実験は、2017年にその結果が明らかになる。
■ケニア
2016年の10月、GiveDirectlyという、送金プログラムで知られている慈善団体が、歴史上で最大となるベーシックインカム実験(の試験版)を開始した。
2017年前半に始まり、40の村々が12年間にわたって月々おおよそ22.5ドルを受け取り続ける。これが1つ目の実験。
ある80の村々が2年間だけ月々一定額を受け取り、他の80の村々は2年間で貰える合計額を一度に一括で受け取る、さらに、100の村は何も受け取らないという比較実験も行う。
これら実験によって、これまで得られなかった最も包括的な(ベーシックインカムに関する)データが確保できるだろう。
■フィンランド
フィンランドでの2年間にわたる実験は元日に始まった。
Kelaというフィンランドの政府系経済機関が、2000人の失業者に対して、およそ600ドル(約6万8000円)を毎月支給する。
目的は2つある。1つは、ベーシックインカムがどのような新しい社会保障の仕組みを提供できるかを評価するため。もう1つは、保証された固定給を受け取るようになった状態で、人々の生産性がどのように変化するのかを確かめるためだ。
■カリフォルニア州・オークランド
シリコンバレーでもっとも躍進を遂げているスタートアップであるY Combinatorは、2016年の半ばに、オークランドに住む100の家族に月々1000ドル(約11万円)から2000ドル(約22万円)の月給を支払い始めることを発表した。
ベーシックインカムの「真の精神」に従って、家族たちは多様な社会・経済的地位から選ばれた。彼らはアメリカに留まる義務も課されない。もし、この試験導入が成功したら、次は5年間の実験が始まる予定だ。
■オランダ・ユトレヒト
2017年の前半に仮に予定されているユトレヒトでのベーシックインカム実験は2年間続く予定だ。250人のオランダ国民が政府援助の対象となり、月々およそ1100ドル(約12万4000円)を受給する。
彼らは6つのグループに分けられ、それぞれのグループに課された労働条件を満たしているかによって、支払い額を変動させる。
例えば、あるグループは、ボランティアをすれば月末に161ドル(約1万8000円)追加で支給される。他のグループはお金が前払いで支給されるが、もしボランティアをしなければ返金しなければならない。
■カナダ・オンタリオ
1970年代のマニトバで行われた、いわゆる「Mincome実験」を再現するため、オンタリオは2017年の春に向けておおよそ1900万ドル(約21.3億円)の予算を確保した。
Ontario Worksという州政府の労働局が、市民に対してオンラインでの議論の参加を呼びかけている。
この取り組みには、ベーシックインカム導入に際して支払われる金額、さまざまな条件、またベーシックインカムに対する包括的な疑問(とその回答の提示)が含まれている。
■インド
インド政府は、2010年にマドヤ・パラデシュ州でベーシックインカムの実験を行った。対象は6000人以上。それ以前に、18カ月に渡って2度実施された(少額の支援)実験に続く、新たなベーシックインカムの実験だった。
2016年の10月には、インドで最も著名な経済学者が「ベーシックインカムは次の経済調査(1月に国会に提出される年次の報告書)に大きな影響を与えるだろう」と発言した。
the Basic Income Earth Networkの共同設立者であるGuy Standing教授は「ベーシックインカムは世界で2番目に人口の多いインドでも瞬く間に浸透するだろう」と楽観的な態度を示す。
■イタリア
イタリアのリボルノ(Livorno)市の市長であるFilippo Nogarin氏は、その沿海都市に住む15万の市民の内100人に月々537ドル(約6万円)を支給し始めた。2017年にはさらに100人追加する予定だ。
実験の規模は小さく、支給は僅か6カ月間。Nogarin氏はこの制度の導入の意義をこう説明する。「(ベーシックインカムは)市民が国家に依存するのではなく、自立して生活することを促す制度だ」
同市の実験にならって、他のラグーザ(Ragusa)やナポリ(Naples)などのイタリアの町もベーシックインカムのテストを実施しようとしている。
■ウガンダ
非営利団体の Eight は、ベーシックインカムとして8.6ドル(団体名の通り、8ユーロ)をウガンダのフォート・ポータル地域にある村の50世帯に毎週支給する。
この取り組みは2年間続き、『Village One』という関連ドキュメンタリーのテーマにされる予定であると、 BIENのKate McFarland氏は報告している。
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ベーシックインカムは生活保護と違って、働いて別に収入があっても支給が打ち切られる心配がないので生活にゆとりがでます。
そうすると消費に回すことができるようになり、経済が活性化するのではないでしょうか。
また生きる上で様々な選択肢がうまれ、起業家も増えるのではないかと思います。
それにしても「働かざる者食うべからず」という言葉にはなんとなく嫌な感じがありますね。
もとはと云えば新約聖書の『テサロニケの信徒への手紙二』3章にけじめのない生活を送る人々への聖パウロの叱責と忠告です。
それが日本では、本来の意味から離れ、経営側にとって絶好の口実に変わり、「失業者は食うな」「営業成績の悪い営業マンは給料不払い」「サービス残業100時間」「遅刻欠勤は給料天引き」などと云うブラック企業が続出するようになり自殺者まで出るようになっています。
働けるのに働かないのか、本当に病気や障害で働けないのか、現実的に失業者全員を選別するのは不可能なので、ベーシックインカムの実験が始まったことは歓迎すべきことです。
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