円安は日本にとって良い事か?
■何故急激な円安になったのか?
この間、急激な円安が続き一時150円を越す円安。日銀は公定歩合を堅持する。現状の公定歩合は―0.1%で、本来ならば市場にお金が大量に流出し活性化する環境にも拘わらず、日本のバブル破綻以降経済は浮揚せず、市場はデフレ状態が継続する。2012年にアベノミックスによる経済の建て直しとして、円高から円安への経済再生の舵を切った。その結果、今日の状況をどう分析するかである。日本経済の真の問題点は何処にあるのか考えてみる。
■円相場の歴史的推移
円相場の歴史的な推移を見てゆくと、以下の様になる
年 円相場 公定歩合 主な事象
1971 308円 5.5% ニクソンショック、変動相場制移行
1985 200円 0.3% バブル経済突入
2007 117円 0.1% リーマンショック
2020 107円 -0.1% (2011年79.8円まで高騰)
2022 145円 -0.1% 現在10月
円レートの経緯みて驚くのは、円高は35年間にも渡り継続するが、バブル崩壊以降日本経済は浮揚することなく、円高基調でありながら低金利誘導するも30年以上も、消費低迷、設備投資低迷が継続するスタグフレーション(不況下のインフレ)状況であった。その原因は一体何だったのか?
バブル破綻以降日本の経済を俯瞰すると、各企業は債務処理に奔走し、株価は暴落して完全なデフレ状況に陥る。更に、その後リーマンショックを受け、日本経済は一向に浮揚する気配は見せない。しかし、有事の円買いは継続し円高基調は推移したままであった。ゼロ金利の経済政策にも拘わらず、一向に改善しない日本経済の立て直しとして、安倍政権が誕生し、経済の再生としてアベノミックスを掲げ、以下の狙いを定めて実行される。
★金融政策:超金融緩和で短期金利をマイナスにし、
消費者や企業にとって投資と消費をしやすくする。
★財政出動:インフラ整備等政府支出の増加や、企業への税制優遇の
実施などで、市場に資金注入(目標G D P600兆円)
★構造改革:企業改革、働く女性の増加、労働の自由化、労働現場への
移民受け入れ、経費負担を軽くし、経済成長を促す。
経済再生に向けたアベノミックスの「三本の矢」の政策結果は以下に示す。
項 目 2012年 2020年 増加率
・マネタリーベース 121兆円 555兆円 358%増
・銀行の貸出残高 397兆円、 491兆円 23%増
・国家予算 340兆円 567兆円 66%増
・国債残高 992兆円 1216兆円 23%増
・為替レート 79円 107円 -35%減
・株価 9108円 22705円 149%増
・賃金(平均年収) 428万円 433万円 1.2%増
・物価(1991を1.0) 1,006 % 1,079 % 7.3%増
アベノミックスの結果は上記の数値で示す様に、金融緩和と赤字国債や財政投融資で資金投入し市場をジャブジャブにして、円安はやや進んだものの、市場は一向に反応せず。だが、株価は日銀による年金基金等を80兆円も投入して株高を演出する。
データーでも明らかなように、結果は以下に示す。
・賃金は横ばい、物価は賃金より上回り、消費低迷
・企業の業績低迷、生産拠点の新興国への移転、設備投資低迷
・輸出型企業の業績向上、輸入型企業のエネルギーや原材料負担増大
・円安、株価は上昇したが、投資不振、消費低迷でデフレ脱却できず
・膨大な国債が累積される。国家借金がGDP比世界№1
・行政改革、働き改革は結果的に規制強化、負担過多で非正規雇用増大
※円安誘導は、日本企業の収益力、競争力、活力を低下させた。
■日本の未来をどう描くか?
実は円高も円安もアメリカの都合に振り回される実態が垣間見る事が出来る。コロナ禍も3年目を迎え、このままでは流石に日本の先行きに危機感を持つ企業や人々の意識も芽生えてきたのは事実。新しい日本へ転換すべき兆候が表れてきたのか?
・政府も企業も賃金を上げて生活を豊かにし消費拡大方向に舵を切る
・2021年度の税収過去最大で67兆円
・生産拠点の国内回帰が高まる
・企業間連携プロジェクト増
・インフレ率2.3%(先進国最小)
世界は脱石油、環境保全、高度なネットワーク社会などと言われ、その流れに沿って人々の思考や価値観の共有が変化してきている。
◎各社コンソーシャムの新技術で成長
各社が持っている技術を連携させて新しい素材開発や技術開発やサービスが進む。「産業創生の成長モデル」として方向性を共有出来る仕組みを造れば一気に加速する。
◎高付加価値生産への転換
日本は高度な技術やサービスをもっており、それらを生かして競争力を身に着ける。高付加価値生産を目標に、開発投資拡大、優秀な人材確保が重要な経営戦略。(例:半導体の製造機器はシェアー80%占める機器が4割、半導体素材はシェアー90%以上締める素材が8割)。これが実現できれば円安・円高などに大きく左右されない産業基盤が確立できる。
◎生産拠点の国内回帰
国際的な分業化が進み、コロナ禍で各国の生産が安定せず、また、高度な技術製品の生産に支障をきたし、製品が出来ない事態に陥った。基幹産業の安定化のために、国内へ生産拠点を回帰させる動きを加速させる。結果、安定供給、安定生産、安定品質、高収益等を実現させる。これから先の新技術に対する開発投資も人材育成も自国内の企業連携で行う。
◎構造改革で未来に展望を
今後、構造改革は無駄を省きながら、規制は大幅に緩め、生産活動や開発のしやすい環境が必要になり、その為の構造改革を実現する。また、無駄なコストを省くためにも、議員数削減や公務員も必要なサービスに集中させ、機械化・NW化できるサービスは大幅に人員削減する様になれば、行政コストの大幅削減を実現する。
基本方針は円高でも成長モデルが出来れば、競争力(高付加価値生産)も身に着き、経済も浮揚し、賃金も上昇し、消費拡大も実現する。
その結果、日本の活力再生が軌道に向かう筈である。日本の将来展望は経済変動に大きく左右されない基盤づくりを目指すならば、主力は高付加価値生産、円高の方が日本経済の進むべき本筋である。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nihon-syakai.net/blog/2022/11/13993.html/trackback