【世界の力を読み解く】イランの事例から見る経済制裁の行く末/経済制裁の効果はあるのか?
今回のウクライナ戦争は経済制裁に反発したロシアが戦争を起こした悪として扱われています。戦争が長引いていると同様に経済制裁も続いていくと思いますが、このまま経済制裁が続いてくとロシアはどうなるのでしょうか?ロシアの前に経済制裁のターゲットにされていたイランの事例から今後の行方を考察していきます。
〇経済制裁を受けたイランはどうなった?
イランは2006年ごろから核開発問題を受けて世界から本格的な経済制裁を受けることになりました。
制裁は一般的に核兵器、ミサイル、特別な軍事技術などの軍事関連の輸出を禁止し、または、石油、天然ガス、石油化学製品に投資することも禁止していました。
制裁によりイランが核開発計画を進めるために不可欠な材料及び設備を入手することを困難にしており、計画にとって重大な障害となっていました。2011年の秋頃から、イラン通貨の貨幣価値が下落し、イランを金融恐慌状態に陥れたとされています。欧州連合の原油輸入停止の直後、通貨がさらに10%下落。原油に依存した経済に大きな影響を及ぼしました。2012年3月までには、イランの生産が過去10年で最低の水準に低下し、イラン産の原油は割引価格で販売され 、欧米原油市場におけるイラン産原油の穴埋めはサウジアラビア産でまかなわれました。
さらに制裁を強められた2018年4月~2020年10月の間に、通貨価値は1/6以下になってしまいました。その後少し回復し2021年3月には2018年4月と比べると1/5以下の価値になりました。
そのような制裁の最中に中国がイラン最大の貿易相手国となっています。米国は中国の企業が、経済制裁に違反してイランとの貿易を行っているとして摘発および制裁も行っています。
〇経済制裁に抜け道がある
イランに対する経済制裁から見えてくるのは、実は経済制裁を受けても屈する必要がないということではないでしょうか?イランは元々国力が高い国ではなかったと言えますがそれでも10年以上に渡っての経済制裁を受けても十分に生き延びられています。
通貨価値の低下については数値だけを見ると1/6と非常にインパクトのある数値ではありますが、それでも国が潰れることはありませんでした。
この事実から考えられることが二つあります。
・イランのように原油のような世界に不可欠な資源を有している国にとっては、経済制裁をしたとしても必ず資源を購入する対象がいるので制裁を貫徹することができない。原油価格が割引がされても輸出がなくなることはない。輸出を制限することで流通量▼により価格▲といった関係となり、その他の産油国が儲かる以外の国にとってのデメリットが生じる。
・一部の国からの経済制裁では意味をなさない。すべての国から徹底した経済制裁網を形成していないと機能しない。イランと最大の貿易国となっている中国の存在が大きいと思います。またここでは最大の貿易国である中国だけを上げましたが、おそらく中国以外の国おいても経済制裁をきっかけに貿易を強化した国があったと考えるのが自然です。
このように限られた国だけで経済制裁を行ったところで、周辺諸国にとっては自国にデメリットが生じないような動きに入るので、資源を有する国に対しての経済制裁は成立しないのです。
※また冷静に考えてみると輸出主体の国であれば貨幣価値の低下は有利に働くことがわかる。
〇ロシアに対する経済制裁の行く末
イランの事例から考えてみても、仮に今後10年以上に渡ってロシアに対して経済制裁を行ったところでロシアが屈することはないと言えるでしょう。
ロシアも天然ガスなどの資源を有しており、イラン以上に中国をはじめとした中央アジア諸国との貿易網を構築しています。当然それらの諸国がわざわざ欧米諸国の制裁に付き合う理由はないので、ロシアへ経済制裁は抜け道だらけです。これらのことを米国がまったく気づいていないということはありえないでしょう。それではなぜ経済制裁という手段に出たのか?
現状の長引いている戦争の様子から分かるように、今回欧米勢力の狙いは長期的な戦争。軍事輸出による利益、反ロシアの世界的世論を高めること、中東から撤退した米国の中央アジアでの新たな拠点作りといったあたりが狙いなのではないかと推測します。
これらを実現する条件としては、ロシアから軍事的な戦争を開始させる必要があります。経済制裁に耐え切れなくなったロシアが攻撃を開始したとすれば、悪ロシアが完成し今後自らを正義として全面的に打ち出していくことが可能になります。実際にロシアが戦争を開始した理由はもっと別のところ(ウクライナの極右勢力の排除)にあります。
メディア戦略の一つとしての経済制裁であることは、現在のロシアの偏悪報道からも明らかです。
次回以降の記事ではメディア戦略部分について考察してきたいと思います。
※米国が武器を作るための必要な資金を日本から調達(円を過剰発行)した結果が円安か?つまり円安が進んでいるということはそれだけ米国の資金繰りが上手くいっていないということ。つまり今回の円安(ドル高)が進むことはドルの崩壊にも近づいている。メディアでどのように偽装しても現実は変えられない。
by Satoshi
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