2016年11月11日

中国総中流化は実現できるか? 「巨龍中国 1億大移動 流転する農民工」

中国における総中流化とは一体どういうものか?実態を探ってみる。

習近平国家主席による2014~2020年「新型都市化計画」では、2020年までに都市部居住人口の割合を60%前後まで引き上げる目標を掲げている。
統計では、中国の居住人口の都市化率は53.7%。都市部に戸籍のある人口の割合となるとさらに低い36%前後にとどまり、先進国の水準からは大きく遅れていることが問題とされているからだ。
また、都市部において最富裕層(上位5%)と最貧困層(下位5%)の世帯年収を比較したところ「242倍」の格差が存在し、格差の幅が急速に拡大。最富裕層(上位20%)と最貧困層(下位20%)の資産保有額との比率においても「72.4倍」にも達しているという報告があり(2014年)、これも改善課題となっている。
※もちろん、この数値には副収入で得られる金額は考慮されていないことから、更に差の広がりが考えられる。

一極集中している都市を中国全土に分散し、都市住民を増大させ(=格差を緩和し)、内需を拡大するという計画が行われている。

中国22

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一極集中している人口(+経済活動)を複数の「新都市」へ分散することが新都市化計画の趣旨であるが、需要を先読みした新都市の建設は、人が満たされずに人工的で殺風景なものとなっている。 政府が目論んでいるほど、住民が新都市に対して、あるいはGDP倍増計画について理解が進んでいないのが実態ではないか?
政府は新たに、住宅購入資金の補助や農地を担保に融資を受けられる制度を設け、誘致に躍起となっている。
都市の一部では、出稼ぎ農民工を強制退去させ、街全体を壊すという荒々しい方策にも手を入れている。
(※1:NHKスペシャル「巨龍中国 1億大移動 流転する農民工」)
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行き場を失いつつある都市部の農民工約3億人は、以下の様な選択に迫られていた。

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①都市に残り住宅を購入(=都市戸籍を取得)※住宅購入補助無し
②新都市へ移住し住宅を購入(=都市戸籍を取得)※住宅購入補助有り(わずか15万円程度。)★政府が目論む政策
③農村へ戻り農民として暮らす。再出発。
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先にも書いた様に、農民はそれぞれ「農地使用権」を割り当てられているが、その権利を担保に融資が受けられる新たなシステムが設けられた。
農地の大きさにもよるが、数百万円~の融資が簡単に受けられ、多くは住宅購入や教育費用に当てるのが現状だ(選択肢①)。もちろん多額な借金返済が残るが、農民戸籍よりも手厚い福祉と教育を受けられることが最大の魅力であるのだ。
政府は新都市への誘導が一番メリットが高いとして誘導しているが、幽霊都市と言われている街にそう簡単には移動できないのが現実である。

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国民は政策に振り回され、与えられた権利(私有権は無い)の範囲でやりくりしているのが垣間見えた。
・・・中国国民の総中流化という認識はまだ遠い様に思われる(ベーシック・インカムの様なシステムではない)。

・・・継続してウィッチしていく。

※1:巨龍中国 1億大移動 流転する農民工 リンク

世界最大13.7億の人口を抱え、世界第2位の経済大国となった中国。安価な労働力として“世界の工場”を支えてきたのが、豊かさを求め農村から大都市へ流入した3億人近くの農民工だった。しかし経済成長が陰りを見せた今、大都市ではなく、農村地帯が広がる内陸部に人口を吸収させる「壮大な国家プロジェクト」が始まっている。
習近平政権が打ち出した「新型都市化計画」。内陸部の中小都市への人口移動によって、大陸全体の均衡ある発展と、新たな消費経済の構築を目指す、いわば“大陸改造計画”だ。
その一環として、いま大都市では、1億人の農民工が暮らす居住区が、再開発のため次々と取り壊されている。中国はどこに向かうのか。
大移動を迫られる農民工を通して、変貌する中国の行方に迫る。

<以下参考資料>
※2:農民工の生活実態
日雇い賃金(解体工)   3000円(≒200元)
都市部の築30年中古住宅  450万円(≒30万元)
約20坪の店舗費用     450万円(≒30万元)
農村部住宅新築      150万円(≒10万元) ※1万元≒15万円
※3:中国新型都市化計画で強調された「人の都市化」の本質は、農民工の都市市民化。

新型都市化計画における主な目標 都市部の常住人口は13年時点で7億3000万人だが、そのうち2億3400万人は農民工とその家族とされる。彼らは戸籍上の問題から、都市部において教育、医療、年金などの公共サービスを十分に享受できていない。一方、受け入れ側の都市では人口の過度の集中を背景とした交通渋滞や環境汚染問題などのいわゆる「都市病」が深刻化している。人口流入と都市の受け入れ容量がミスマッチ状態にあり、行政を含めた都市機能がパンク状態になりつつあるところもある。これらの問題を解決するため、比較的小規模な都市を大都市に代わる農民人口の「受け皿」にしていく。農民工の都市部の定住について、人口50万人以下の都市では「全面開放」、人口50万~100万人規模の都市では「秩序ある開放」などの規制緩和を進める。また、居住証制度を設けて農民工も基本公共サービスを受けられるようにして、生活の質の改善を図る。

List    投稿者 sin | 2016-11-11 | Posted in 09.国際政治情勢の分析No Comments » 

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