2022年06月11日

物流網の再構築が猛スピードで進んでいる。安さと速さに代わる新たな価値を見出せるか。

 

物流網の再構築が猛スピードで進んでいる。なぜいま物流なのか?その先にある未来は。

今、日本経済は50年ぶりの円安と言われるほど、円は世界の通貨の中でも「安く」なっている。原材料や資源の多くを輸入に頼っている日本は、円安により物価が上昇し生活を圧迫するという問題指摘も度々目にする。

確かに80~00年代にかけて、日本の工業生産は安い人件費を求め、次々と生産拠点をアジア圏に移していった。海外で大量に生産し、国内で大量に消費するという構図だ。その結果、日本では産業の空洞化が課題となった。そして、コロナ禍においては、世界の物流が停止することで、供給網を絶たれるというなんとも脆弱な供給体制が露呈した。

そして、ロシア・ウクライナ戦争による資源の供給制限という理由から、全面的に資源にマネーが流れている。中でも円は下がり続ける一方だ。

消費と需要だけの関係で物が売買が決まる時代ではなくなり、そこに供給体制、つまり物流・流通が支配権を強めているといえる。(参考:建設資材の急激な高騰は、製造業の国内回帰の後押しとなるか?

その中でも、国内の物流分野の現状の課題は大きい。

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一つ目は、労働力不足。トラックドライバーの不足に加え、「物流の2024年問題」と呼ばれるトラックドライバーの時間外労働の上限規制により、ますます人手不足感は強まっている。

二つ目は、インフラシステムの整備不足だ。近年、EC市場の成長と宅配便の増加が一気に進んだ。EC市場は、2019年には全体で19.3兆円規模、物販分野で10.0兆円規模まで拡大。それに伴い、宅配便の取扱件数は5年間で約7.1億個(+19.6%)増加している。この状況に伴うインフラシステムや物流施設の整備は追いついていない。

三つ目は、物流業界の古い価値観である。物流に求められる荷主の価値観は「安さ」と「速さ」である。そこが変わらないのだ。ゆえに激しい価格競争にさらされる。

 

だからこそ、いま急ピッチで再構築が始まっている。

〇物流拠点はよりエンドユーザーに近い場所に。ラストワンマイルへの対応でサービス強化へ。(インターチェンジからの距離=配送効率から、より駅からの距離=働きやすさに)。

〇物流そのものが、次世代産業に。24兆円市場でIoT・新エネルギーなどの先端技術開発拠点に。

〇宅配では、より顔の見える営業力が人々の心を掴んでいる。物流を担う”人”そのものを育てることが新たな価値にもなる。(ex.ヤクルトレディ)

暮らしを支える社会インフラである物流。

安さと速さの競争は続くだろう。だが、そこを超えた新たな価値を生み出せるかどうかが、今後の物流のカギを握る。その展望はどこにあるか。近代の歴史にも遡りながら見出してゆく。

参考記事:
「最近の物流政策について」国土交通省2021年1月22日
「物流会社は「対応力」を売りにしてはいけない! ヤマト・佐川がなぜ絶対ポジションを得たのか 今こそ振り返る時だ」
「50年ぶりの円安」でも日本経済は困らないといえるこれだけの理由

List    投稿者 yamane | 2022-06-11 | Posted in 10.日本の時事問題No Comments » 

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