2022年06月18日

物流業界における新たな価値。そのヒントはモノ・人・情報が一体となった「流通のありよう」にあった

物流需要の高まりに反して、疲弊していく物流業界の課題と、新たな可能性を考察してきました。

・参照①:物流網の再構築が猛スピードで進んでいる。安さと速さに代わる新たな価値を見出せるか。

・参照②:変わる生産と消費の繋ぎ方  物流が向かう未来の姿は?

厚労省主導でドライバーへの配慮を呼びかけ福利厚生を充実させる運送会社も現れてはいますが、担い手が今まで以上に「待遇」「給与」に敏感になるだけで、疲弊感は増す一方です。この閉塞感は「速さ」「安さ」を追い求めた結果なのであり、新たな価値を見出さないことには世間評価も変わらないでしょう。

物流業界における新たな価値とは何なのでしょうか。

それは効率のみを追求してきた近代よりも前にヒントがありました。江戸時代の飛脚、縄文時代の贈与NWなどから見えるのは、モノ・人・情報が一体となった「流通のありよう」です。ここから現代の宅配サービスは、モノを届けることに特化してきましたが、それは「モノ」だけが切り離された状態と捉えることができます。

今回は、宅配便のルーツとされる飛脚に迫り、物流におけるモノ・人・情報の一体化を考察したいと思います。

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まず初めに、飛脚はモノを届ける以上に「貴重な情報源」として幕府に認められています(1663年)。

それ以前は戦国大名をはじめとする各地の諸勢力が領国の要所に関所を設けたため、大名、藩ともに自分以外の様子を知るのは至難の業でした。この時に最も不足していたのは「情報」で、遠隔地となればなおさら、反逆者がいないか、悪いことを企んでいないかと、なにかにつけては聞き耳を立てる必要がありました。

一方で、遠く離れた場所にも合法的に行けたり、途中で多くの藩を通過したりできた飛脚には見聞したものが多くあります。幕府にたてつく準備、一揆、天災、流行病や飢饉など、異常と思える情報が得られれば、幕府も事前に対策を打てるなど、飛脚の情報には非常に価値があったのです。

交通基盤が整備されてからは、民間人の飛脚利用も増えて、さらに機能もどんどん分化していきます。

・米飛脚…米相場を伝える。これを参考に、商人は自前の米を売ったり、米を買い付けたりした。

・文使い…遊女の恋文を扱う。マメな手紙に、妻子ある男や商家の若旦那はドキドキしていた。

・飛脚かわら版…情報をもとに飛脚問屋がメディア化。天災などの速報と安否情報で、無用な混乱を防いだとされる。

どの位相にせよ、モノのやり取りを超えて、当時求められていた「情報」を一緒に届けて「人」を繋いでいたことが分かります。そうして信頼を積み重ねた飛脚には、次々に情報も人も集まり、人々の期待を深く掴むこともできたのでしょう。飛脚の機能分化は、その期待に応える形で宅配の業態を変えたということです。

 

よって、現場や対面で掴んだリアルな情報をもとに、人と人を繋いだり、新たな価値を創出したりする力が、物流に眠る可能性なのではないでしょうか。

新たな物流を通じて、そこに取り巻く誰もが活力=評価を得られる仕組みが、次代の物流に求められています。

ただ現代にもその可能性の萌芽は出てきています。例えばフードドライブという事例。食品ロス削減や生活者支援の志を「情報発信」し、それに賛同した「人」から寄贈食品を集めて、必要な「人」へ届けている。まさにモノ・人・情報が一体化した物流と言えます。こういった先端事例を通じて、次代の可能性はどこに見出せるのか、さらに探りたいと思います。

List    投稿者 momoki | 2022-06-18 | Posted in 10.日本の時事問題, 14.その他, 18.市場経済崩壊後の新社会へNo Comments » 

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