東南アジア諸国と日本~フィリピン編~
‘08年金融危機は、9月の本格的な破綻の顕在化に先行して、投機発の穀物高騰や原油高騰による物価上昇が起きており、生活防衛意識が高まっていました。(年末の「なんでや劇場レポート1」より)
食糧危機は将来も起こり得ると思います。とりわけ、日本と同様に『コメ』を主食とする東南アジアの諸国も食糧自給自足体制への対応を迫られており、日本が学ぶ点が多いのではないかと思います。
また、今回の金融危機によって、グローバリゼーションの脆弱性、欺瞞性が明らかになった以上、方向転換は不可欠です。現在の状況下では、鎖国政策⇒自給型経済モデルへの転換は、現実的かつ大きな可能性を秘めた選択肢です。
(「なんでや劇場レポート2」より)
鎖国政策に至る過程でも、ある程度の物資の流通が必要ではないかと思います。その場合、新しい物流の相手国として近隣の東南アジア諸国に可能性があるのではないでしょうか。さらに、自給型経済モデルの実現も西洋よりも東洋(中でも東南アジア諸国)の方が、転換が早いと思われます。
しかし、各国毎に実現基盤の調査が必要です。
そこで、東南アジア諸国の中でも食糧自給に関して両極端である、
『フィリピン』と『タイ』について、2回に分けて紹介します。
その前に応援お願いします。
画像は、「 トレバー・ボークの世相を斬る 」
【フィリピン】食糧危機は複合問題【コメ高騰】より引用。
( 政府配給米に群がる市民の様子 )
■世界的コメ騒動の震源地フィリピン
○どんな状況?
(昨年2008年春のコメ騒動の)震源地は、世界最大のコメ輸入国フィリピンだ。世界的にコメの生産高が減少する中、インド、中国、カンボジア、ベトナムが輸出制限をするようになったため、年間消費量の10-15%を輸入に頼るフィリピンは、約百万トンの調達に困難が生じている。さらに、同国は入手可能なコメを高値で買い付けているため、皮肉にも世界のコメ価格が昨年と比べて二倍に高騰してしまった。
○原因は?
①農業の重要性の認識不足(フィリピン政府の農業政策の失敗)
何十年もの間、政府は公共施設や超高層ビルの建設を奨励。コメの増産に対しては無関心。農業への補助金も削減。人口増加に見合うコメの増産が可能な農家はほとんどない。休耕地を放置してきた怠慢がコメ不足をもたらした。
②原油価格の高騰が肥料代や輸送費の上昇をもたらし生産コストを上昇。
③二〇〇〇年以降、フィリピンの人口は毎年約2%増加。この数字はアジア諸国の中でもトップクラスで、コメ消費量の急増につながっている。
④中間所得層が急増したことでコメや肉の消費量が増加。肉の生産には多くの水、労働者、穀物が必要で、コメ生産のために使われる資源が肉の生産のために回されている。
⑤人口増加は明白なのにアジア諸国の政府は食糧はいつでも輸入できると思い込んでいる。フィリピンにはコメの自給率を高める政策がない。
○現在、フィリピン政府や専門家が考えている対応策は?
①インドとバングラデシュではコメの買いだめが問題化。フィリピン政府は違法にコメを備蓄した業者に対して終身刑を科すと脅して、コメ不足懸念を払拭(ふっしょく)しようと躍起。
②アロヨ政権は暫定措置として、隣国ベトナムから急遽(きゅうきょ)輸入した二百二十万トンのコメを配給米として安値で市場に流し、農地の商用地転用を禁じた。
③専門家らは、コメ不足・コメ高騰問題をすぐに解決することは難しいが、(特定機関が買い取り、最貧困層の)労働の対価としてコメを支給する「フード・フォー・ワーク・プログラム」や、学校給食実施目標の設定、さらに健康診断を受けたり子供を学校に通わせることを条件として現金の支給を受けられる「条件付き現金支給制度」の導入などで解決の道が開かれる可能性があると指摘。
④専門家らは、コメ不足を解消するためには、アジアに第二の「緑の革命」が必要だという意見で一致しており、品種改良に資金が改めて投じられるべきだと主張している。(長期策として、発展途上国と国際社会は病害虫に対する耐性を持った品種や、高収量品種を開発するために、農業分野への研究開発費を増やす必要がある)
⑤アロヨ大統領はコメ生産を改善するために十億ドル(約千四十億円)の予算を割り当てると発表した。資金は灌漑(かんがい)システムと輸送方法の改良だけでなく、採取、農家を対象とした研修費や融資にも投入される予定。
【参考サイト】
クリスチャン・サイエンス・モニター
世界的コメ騒動の震源地フィリピン 上 2008年05月19日
世界的コメ騒動の震源地フィリピン 下 2008年05月20日
【補足】・・・・「緑の革命」とは? トレバー・ボークの世相を斬るより抜粋引用
>1962年、ロックフェラー財団とフォード財団によってフィリピンに国際稲研究所が設立されます。中南米などでのトウモロコシ、小麦による「緑の革命」をイネでもはじめるためでした。「緑の革命」とは、品種改良、農薬、化学肥料の多用、かんがいにより水を豊かに使えるようにすることで、単位あたりの収穫量を上げる技術のことです。
>「緑の革命」は、世界の飢餓を救う画期的な技術として世界中から注目を集めました。実際に、1970年代から80年代を通して、フィリピン、インド、インドネシアなどで、コメが増産され、多くの国で自給達成や輸出ができるようになりました。
>しかし、90年代に入り、緑の革命は頭打ちを迎えます。生産量の横ばい、あるいは、化学肥料の使いすぎ、水資源の枯渇などで生産量の減少さえ引き起こし、工業化による農地減少もあってインドネシアやフィリピンはコメ輸入国に逆戻りしています。
■考察 (フィリピン編)
1.根本解決には、アメリカ支配からの脱却が必要なのではないか!
フィリピンは植民地時代から今現在もアメリカ支配が続いている国です。
貧富の差が激しく、一握りの特権階級と大多数の貧民層という社会構造はアメリカ社会の縮図とも言われています。政治・経済・軍事・教育などあらゆる面でアメリカの介入を受けています。
(象徴的なのは、その国の憲法がフィリピン語ではなく英語で書かれている)
先の、政府や専門家の対応策を見ても、発想が「アメリカ的」だなという印象を持ちます。
あくまで市場原理の中で解決策を見出そうとする。
特に、第二の「緑の革命」に資金を投入するという方針は危険です。ますます農薬の増加と水不足に陥り、本来の自給自足から遠のいていくだけではないでしょうか。背後に、食糧支配を企む穀物メジャーや種子会社、農薬・肥料企業の思惑が見え隠れします。
2.自給型経済モデルへの転換の可能性はあるのか?
スペイン統治時代から続く大土地所有制(特権階級)、アメリカの支配、絶えない地域紛争(ミンダナオ島など南部のイスラム系や中国共産系)、人口増加(キリスト教徒:ローマ・カトリック教が多く避妊には否定的)などのフィリピンの現状を見ると、非常に困難であると思います。
さらに、今回の金融危機で、GDPの1割を稼ぐ出稼ぎ労働者が次々と帰国しているというマイナス要因もあり、東南アジア諸国の中でも真っ先に政情不安に陥る可能性が高いでしょう。
☆このような状況下でも、一点の光明とでも言うべき、「たくましい農民の姿」を、最後に紹介します。
「農業情報研究所」の記事のタイトルと画像の紹介に留めます。
是非、ご覧になってください。
『タイ 燃料価格高騰で水牛耕が復活』
『フィリピン農民もトラクタから水牛へ 石油離れで持続可能な食料生産システムに』
【 ↑左の画像 :タイ ↑右の画像 :フィリピン 】
フィリピンの農民も自衛手段として、トラクターから水牛へ転換せざるを得ないようです。
しかし、これは将来の「持続可能な農業生産のあるべき姿」なのではないでしょうか。
昔(古代)からの自然の摂理に則った有機農法へ戻るチャンスかも知れません。
これからの日本の農業との接点も見出せるのではないでしょうか。
もう一つの注目点は、隣国の『タイ』のやり方を真似ている点です。
それでは、次回は『タイ』について紹介します。
by hassy
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