トランプ大統領誕生なら米国の覇権国家転落は決定的
米大統領選、今回もトランプ氏について。
様々な問題発言で注目を浴びているトランプ氏は、果たして何を考えているのでしょうか。
今回は、Diamond Onlineに掲載されている北野幸伯氏のコラムより抜粋引用します。
●「米国は貧しい債務国」 従来と180度違うトランプ式外交プラン
「日本から米軍を撤退させる可能性がある」「日本の核兵器保有を容認する」――。トランプの仰天発言が日本を動揺させている。
トランプが「在日米軍撤退」や「日本の核保有容認」について語ったのは、ニューヨーク・タイムズ(電子版)とのインタビューで、3月26日付に掲載された。
ポイントは3つある。
1、日米安保条約は、米国が攻撃されても、日本は米国を守る義務がない「片務的な取り決め」である。
2、日本が米軍駐留費用を大幅に増やさなければ、米軍を撤退させる。
3、日本が北朝鮮などの脅威から自国を守るために、「核保有」を認める。
~中略~
●トランプとゴルバチョフには意外な共通点があった
「わが国は世界中を支援しすぎだ。われわれには、そんな余裕はない。自国のことを第一に考えなければならない」。トランプがこう考えているのは明らかだ。
ところで、過去にも同じことを考えた男がいた。ソ連最初で最後の大統領ゴルバチョフである。ソ連経済は1970年代、原油価格の高騰で、非常に好調だった。ところが、80年代になると原油価格は低迷し、ソ連経済はボロボロになっていく。
ゴルバチョフは、考えた。「ソ連は、東欧の共産国家群をはじめ、アフリカ、アジア、中南米、つまり全世界の共産国家を支援している。われわれには、今までのような支援をつづける余裕はない」。そして彼は、実際に世界の共産国家への支援を減らしはじめた。
さらに、「自国第一主義」が高じ、「東欧の政治には不介入」という方針に転換する。その結果何が起こったか?
1989年、ベルリンの壁が崩れ、ドミノ式に東欧民主革命が広がった。
1990年、資本主義の西ドイツと共産主義の東ドイツが統一した。
1991年末、ソ連自体が崩壊し、15の独立国家が誕生した。
ゴルバチョフの決断は、冷戦を終わらせ、日本の脅威を消滅させた。それはありがたいことだが、旧ソ連人にとっては、「国を滅ぼした指導者」である。トランプの考えていることは、そんなゴルバチョフと同じなのだ。
もう一度復習しておこう。トランプの認識は、「米国は貧しい債務国で、世界中の国々から搾取されている」ということ。それで、「日本、韓国、NATO加盟国、サウジアラビア、アラブ諸国の負担を増やさせ、その分米国の支出を減らす。米国は、金のかかる軍事介入も減らす」。すでに見てきたように、これはソ連を滅ぼしたゴルバチョフと同じ方針で、米国の覇権を終わらせる道である。
~中略~
●トランプ大統領誕生なら米国の覇権国家転落は決定的
トランプは、「経済的支援を減らす」「軍事的関与も減らす」としている。これは、自分から支配力の源泉、つまり覇権を手放すのと同じである。「金も出さない、軍隊も出さない国」のいうことを聞く国があるだろうか?聞くはずがない。「誰もいうことを聞かない国」を覇権国家と呼べるだろうか?呼べるはずがない。
つまり、トランプは、知ってか知らずか、「米国は覇権国家をやめる!」と宣言しているのだ。
実際にトランプが大統領になり、「有言実行」したら、世界はどうなるのだろう?まず、各国は米国の束縛から解放され、自由に動くようになるだろう。欧州は、ロシアと敵対するよりも、和解する道を選ぶ可能性が高い。
中東はどうだろう?トランプはプーチンに「中東の平和維持」を依頼するかもしれない。あるいは、スンニ派のサウジアラビア・トルコなどと、シーア派のイランとシリア・アサド政権の大戦争が勃発するかもしれない。
米国に見捨てられた韓国は、走って中国の属国になるだろう。さてこんな中、日本はどうするのだろうか?
~後略~
ところで、このトランプ氏を担ぎ出しているのは一体だれなのか。
それは共和党の新しい主力派と言われるティーパーティーの一派で、選挙対策チームだと言われています。
るいネットより引用します。
■トランプ氏の政治的背景
今週は、いよいよ本命視されてきたドナルド・トランプ共和党大統領候補の政治的背景につきまして、私見たっぷりにお話ししたいと思います。
政策もほとんど語らず、その場しのぎのポピュリストであると言われているドナルド・トランプの政治母体は、選挙対策本部のほとんどが、AFP出身者であることから、実は明確です。AFPは、「アメリカン・フォー・プロスペリティ」という草の根団体ですが、実際は違います。このAFPを事実上運営しているのは、全世界最大の非公開企業コーク一族(いちぞく)なのです。
コーク一族は、反ホワイトハウス、反ワシントン・システムを掲げるリバタリアンで、近年では、ティーパーティー運動の仕掛け人としても、名前が大きく挙がりました。コーク一族は非公開企業であるゆえ(兄弟で10兆円を超える資産を保有しています)、ウォール街との関係も大きくなく、反ウォール街的な意味合いも強く持っています。
そして、コーク一族は今までに何度もハッキリと「共和党を乗っ取る」と公言していました。そのコーク一族による「共和党乗っ取り計画」の神輿がドナルド・トランプだ、と言いたいところですが、事実はもう少し複雑です。
ここで、近年の米国共和党主流派の変遷を見直したいと思います。2001年時点での米国共和党は、ブッシュ政権で保守エスタブリッシュメント+宗教右派でしたが、そこをネオコンが乗っ取り、戦争へと突入しました。その後、2010年を前後してティーパーティが乗っ取りを試み、ここで共和党は多様化しました。この時点の共和党は、保守エスタブリッシュメント=やや衰退、宗教右派=変わらず、ネオコン(軍産複合体)=かなり衰退、そしてティーパーティ=大きく勢力拡大と、かなり複雑化することになり、新旧勢力の交代も行われることになります。
同じように米国共和党と呼応する日本の自民党は、ブッシュの保守エスタブリッシュメント+ネオコンのブッシュ=小泉政権、そして遅れてきたネオコンの安倍政権と引き継がれますが、現在、主力になりつつあるティーパーティや新興リバタリアン勢力に呼応する政権がありません。ティーパーティは、その存在意義からしても日本の呼応を求めていないものとも考えられますが、もちろん、米国民主党と呼応する日本の政権もないのが現状ですので、今後日米関係が良くなるわけがありません。
さて、2016年共和党大統領候補は、旧主力派だった保守エスタブリッシュメントからジェブ・ブッシュ、宗教右派からテッド・クルーズ、ネオコンからマルコ・ルビオ、リバタリアンからスコット・ウォーカーと候補が立ちましたが、現在、共和党の新主力派であるティーパーティーが、ふたつに分派しました。そのひとつの勢力で、コーク兄弟と袂を分かち合った一群が担ぎ出したのが、ドナルド・トランプなのです。
それゆえ、元々ティーパーティーの基盤だったAFPから、トランプの選挙対策チームが形成されることになりました。ここには、「大金を投じて草の根を演出する」別名「人工芝」チームが多くいます。この「人工芝」チームが、現在のトランプ旋風を全米で巻き起こしているのです。
彼らの戦術は実に巧みで、最新のテクノロジーを駆使し、常に市場を分析しています。特に相手候補を打ち負かす広告投入手法は見事で、2014年の中間選挙では、AFPが資金投じた候補の95%を当選させました。現在のトランプは、AFP同様反ワシントン・システム、反ウォール街、反エスタブリッシュメントであり、それゆえ選対幹部にはエスタブリッシュメントの基盤であるアイビーリーグ出身者がひとりもいません。この点では、民主党から出馬しているサンダースと近いものがあります。これを日本に置き換えれば、東大法学部が作った霞が関システムに対して、トランプもサンダースも大きく反対の狼煙を上げていると言えるでしょう。
もし、今年の2016年米国大統領選挙でトランプが勝たなくとも、4年後まで、このままのウォール街とエスタブリッシュメントによる「アメリカ式システム」が維持できるとは考えられません。
米国は、言うならばOSを、全面的に入れ替えようとしているのです。それゆえ米国に近しい国家、または個人は、米国同様にOSを入れ替えるか、大きなアップデートが今後急速に必要だと思われます。なぜなら、もし今回の選挙でトランプが負けるとしても、4年後に必ず大きなチェンジに直面するからです。それは、「政治家による政治」の終焉を意味するのです。
このように、アメリカ覇権の終焉が始まっているとして、即ちそれは、次の覇権国擁立の準備が同時に着々と進んでいることを意味します。
トランプ氏を担ぎ出しているコーク一族とは、そしてその背後にいる勢力は誰なのでしょうか。以前のエントリーでもお伝えしたように、トランプ氏はプーチンとの関わりを持ってますから、次代の国際秩序の構築に向けて、彼との共同戦線を張っているとの見方も出来ます。
今後、どのように推移していくでしょうか。
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