正解のない時代の学び:人が人を育てる。最先端の認識を生み出すエコシステムは人と人の繋がりで生まれている。
前記事では、正解のない現代においては、”実践力”こそ学びの源泉になることを読み解いてきました。整った環境ではなく、実践力=失敗や負荷をどれだけ体感できるか、ということだと思います。
では、そういった人材は具体的にどう生まれてきているのか。
世界に目を向ければ、イノベイティブな発明を生み出す人材が集積するシリコンバレー(米)、スタートアップの世界最大の拠点Station F(仏)など、イノベーションやスタートアップの拠点や都市環境が世界のあらゆる場所に、国家予算も相当額付けられ整備されています。それに比べて、日本はイノベイティブな人材が育っておらず、かつスタートアップ支援の国家予算額含め、新事業の発掘・スタートアップの活性化という意味では他国に相当な遅れを取っていると言われています。
これは予算や支援のための施設整備自体が進んでいないことが、停滞の最大要因のように捉えられている節がありますが、本質は別にある考えています。
今回は”最先端”の認識を生み出す人材にフォーカスして、最先端の技術や商流が生まれる条件に迫ってみたいと思います。
□シリコンバレーは人脈の広がりのなかで”新しい”を生み出してきた
今回は、シリコンバレーを例に、代表的な2つの事例に目を当てたいと思います。
・フェアチャイルド(シリコンバレー)
フェアチャイルド・セミコンダクターとはかつてアメリカにあった半導体メーカーですが、シリコンバレーがこのようなスタートアップ+イノベーションの代表的なエリアになる芽を生み出した8人組から始まります。
>シリコンバレーのあるカリフォルニアがアメリカ合衆国の州となった1850年代後半、産業の中心は東部にあり、カリフォルニアは、外からやってきた人たちによってゼロから開拓されていきました。そうした人たちは、西部で新たな産業を興そうという意識が高かったのでしょう。このような時代を背景として1891年にできたスタンフォード大学も新しい技術の創出に寄与します。そして長距離無線の技術を筆頭に、第二次世界大戦や冷戦が深まる時代の中、軍事とも関係しながら、様々な技術やその周辺の産業がこの地で生まれることになりました。
>そうした中、1950年代に、トランジスタの発明者の一人であるウィリアム・ショックレーが、スタンフォード大学のあるパロアルトで会社を作ります。その後、この会社にいた8人の技術者が独立してフェアチャイルドセミコンダクターという会社を創設します。この会社が、軍からの受注で弾道ミサイルなどに使う半導体を製造することで急拡大しました。更にその創業メンバーの中に、後にインテルを創業するロバート・ノイスやゴードン・ムーアがいたり、フェアチャイルドの従業員だった人たちが有力なベンチャーキャピタルにより、大企業となった会社を作ったことで、現在のエコシステムのベースが作られたのです。そして、新興企業に適した世界初の電子株式市場としてNASDAQが71年に設立され、インテル(68年創業)やアップル(76年創業)が大規模なIPO(新規株式公開)を行ったことで投資家の目が向くようになり、現在の流れができていったのです。
Best Engine-なぜシリコンバレーは特別な場所になったのか
上記の絵にあるような、だれもが知っている大企業のルーツを探っていくと、フェアチャイルドがいるのです。シリコンバレーのエコシステムの根を生やしたのが彼らフェアチャイルドです。
・paypalマフィア
オンライン決済システム「PayPal」の創業メンバーである7名を指す言葉です。2002年にPayPalがeBayに買収された後、創業メンバーたちは数々の企業をシリコンバレーで設立し成功。天才起業家集団と呼ばれるまでになりました。トランプの技術顧問として影の大統領とまで言われたピーター・ティール(クラリウムキャピタル)はじめ、イーロン・マスク(テスラ)、マックス・レフチン(Slide)、チャド・ハーリー(YouTube)などが代表的な面々です。
フェアチャイルド同様、一つの起業がエコシステムの根っことなり、そこから様々な企業、サービスが生まれている。元PayPal社員の絆は退社後も強く残っており、ピーター・ティールは、旧社員の新ビジネスの立ち上げ時には必ずといっていいほど投資している。マックス・レフチンは「PayPalの絆がビジネスを動かしてるんだよ」との言葉も残しています。
これらも事例も数多くある中の一例ですが、こういったイノベイティブなアイディアは、偶発的で奇抜的な発想と受け取られがちですが、一人で模索の結果でもなく、アカデミアの先にあるものでもないのがわかります。起業と拡大、そしてスピンオフの”サイクルが回っている”。その結果、イノベーションを興すエコシステムが出来ているのです。
つまり、これらの事例で生まれているエコシステムとは「系譜」であり、人脈の中に成り立っていることがわかります。
そこから私は、「人が人を育てる」ということではないかと思うのです。
先の記事、今回の記事で紹介した事実を通して、決して学校教育や大企業が人を育てるのではないということを改めて実感させられます。
そしてこれからの時代は、これまで以上に正解のない時代。日本に目を当てても、大量生産のものづくり工業から抜け出さねば世界に勝てないことを自覚している。
私は、国民全員が学校や大企業を目指し、大量生産を目指したかつての日本の幻想から脱さなければならない時が目の前まできていることの警鐘のようにこれらの事例が見えるのです。
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