2022年03月24日
【世界の力を読み解く】ウクライナ情勢。欧米の露エネルギー依存は解消できるのか
欧州側とロシアの関係性の中でも、エネルギーの依存関係が、これからの世界情勢に大きな影響を与えると考えています。
SWIFT制裁でも、エネルギーの取引用銀行「ガスプロムバンク」を対象除外するなど、ロシア経済の中心にある天然ガス輸出には、メスを入れられない。
欧州のエネルギー政策の見通し、ロシア依存をどう解消しようとしているか、今回の戦局を見通すだけではなく、これからの世界パワーバランスを見ていくため、この間の露エネルギーへの各国動向を紹介します。
【露 天然ガス最大の輸出先の欧州】
「ロシア産の原油・天然ガス供給が途絶する場合のインパクトはいかほどか?」JPpress
ロシアからの天然ガス調達を回避する動きが広がれば、世界の天然ガス輸出量はどの程度縮小するであろうか。2020年のロシアの天然ガス輸出の内訳を見ると、欧州向けが77.0%と圧倒的に大きい。欧州向けのうち、パイプライン経由が90.6%を占める(輸出量全体に対する比率は70.4%)。石油と同様、CIS、中国、インド以外がロシアからの天然ガス調達を回避すると仮定すれば、ロシアは輸出量の84%程度を失うことになる。世界全体の輸出量との対比では約21%に相当する、年換算2000億m3の供給が消失する可能性がある。天然ガス市場ではロシアの供給者としての役割が大きいこともあり、原油市場と比べて需給へのインパクトは大きい。ただし、現実問題としては、パイプライン経由の依存度が大きい分、ロシアからの調達を完全に回避することができるかは疑問だ。欧州は天然ガス輸入の79.6%をパイプライン経由で賄っており、うち37.5%(全体の輸入量に対する比率では29.8%)をロシアから調達している。天然ガスの供給に際しては、パイプライン網が一定の圧力を維持する必要があるが、例えば、事前通告なしにロシアからの供給が遮断されれば、安定供給に支障が生じ得る。仮にLNGによって代替調達できても、パイプライン網の圧力をうまく調整できるか否か不透明だ。すなわち、石油と異なり、天然ガスについては、ロシアからの調達を回避したくとも、難しいのではないか。言い換えれば、天然ガス輸出はロシアにとって欧州に対する交渉材料となり、事態を複雑にする。元来、欧州にとって天然ガスのロシア依存はエネルギー安全保障上の問題とされてきたが、現実のリスクとなっている。
【エネルギー(天然ガス)は欧州の消極的姿勢でSWIFT経済制裁から除外、米英は積極的にエネルギー制裁を追加で、NATO側にもズレ】
(3月3日時点)
「ロシア7銀行をSWIFTから排除 EU決定、最大手は対象外」日本経済新聞
欧州連合(EU)は2日、ロシアへの追加の経済制裁として同国2位のVTBバンクなど大手7行を国際的な資金決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除すると決めたと発表した。ロシアには約300の銀行があるが、まず大手行を対象に国際決済から締め出す。欧州のエネルギー調達への影響を抑えるため、最大手のズベルバンクとエネルギー部門に強いガスプロムバンクは排除を見送った。一方、米英はエネルギー制裁に踏み切っています。(3月8日)「英米両国、ロシア産の原油・天然ガスの輸入を禁止 ウクライナ侵攻で追加制裁」BBC通信>英米首脳の発表アメリカでは、ウクライナ侵攻を続けるロシアに対して経済面で追加措置を取るよう、政治家らがバイデン政権に圧力をかけていた。バイデン大統領は8日、「ロシア産の原油、天然ガス、エネルギーの輸入を全面禁止する」と発表。「ロシアの原油は今後、アメリカの港で受け入れられない。アメリカ国民は(ロシア大統領のウラジーミル・)プーチンにまた大打撃を与える」と述べた。同時に、今回の措置は「米国内でも代償を伴う」と認めた。また、同盟国との「緊密な協議」を経た上での決定だと述べた。一方、ジョンソン英首相はこの日、輸入禁止措置について、ロシアにすぐに打撃を与えるものではないと説明。その上で、「私たちがすでに目にしているロシアへの圧力を増すものだ。イギリスが主導してきた制裁の経済的影響は、極めて大きいことを忘れてはならない」と強調した。
【露 エネルギーの新取引先は中国。決済は「人民元」でダメージなしか】
(2月8日段階)
「ロシア、中国にガス輸出へ 米制裁下のサハリン沖から=関係筋」REUTERS
ロシア国営のガスプロムは、ロシアと中国が最近結んだガス供給契約に基づき、米国による制裁の打撃を受けている極東のサハリン沖から中国にガスを輸出する可能性がある。複数の関係者とアナリストが8日、ロイターに明らかにした。中国にとって第3位のガス調達先となっているロシアは、欧米との対立が激化する中、中国との関係を強化している。プーチン大統領は4日、習近平国家主席と会談し、天然ガスを中国に年100億立方メートル追加供給することで合意した。
(3月16日段階)
「ロシア、中国にガス輸出へ 米制裁下のサハリン沖から=関係筋」日刊ゲンダイDIGITAL
ロシアは中国に輸出した原油や天然ガスの代金をドルではなく、人民元で受け取るなど中国依存を強めている。ロシア国営タス通信は16日、ロシア中央銀行と中国人民銀行がそれぞれの銀行決済網の統合を検討していると報じた。人民元と結びつくことで“瀕死”のルーブルの信用を下支えする狙いがあるとみられる。それだけ人民元に力があるということだ。15日付の米ウォールストリート・ジャーナルによると、サウジアラビアが中国への一部石油輸出をドルから人民元建てに変更することを検討しているという。サウジはバイデン大統領の中東政策に大きな不満を持っている。「これまでも反米政権の中で、ドルに代わる主要外貨を模索する動きはありましたが、ドルが圧倒的に強く、うまくいかなかった。今回の対ロ制裁をきっかけに、人民元の存在感が急上昇したのは間違いありません。中国は2030年前後には世界最大の経済大国になるといわれています。世界経済はドル、ユーロと人民元のブロック化が進むでしょう」
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