2007年12月22日

『アメリカの共和党と民主党』プロローグ・・・市場拡大のための国家

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1970年代以来の経済的累積赤字、軍事的暴走、そして直近のサブプライム問題や石油高騰などなどを受け、最近の国際情勢は、アメリカの信用失墜・ドル暴落の懸念が高まっており、それを引金に経済破局基軸通貨の多極化、覇権移転が論じられるようになってきている。
そして、破綻が懸念されるに至るアメリカの動向は、’69年のニクソンそしてより顕著に’82年のレーガンから今のG・W・ブッシュに至るここ約30年ほどの間の共和党の変容の動きと連動している。
そのため、今後の市場動向、国際情勢を分析するうえで、共和党が変容した分析、そして共和党と一対である民主党の分析も必要だろうと考えます。
今回から何回かに分け、共和党と民主党の視点を軸に、建国から現在に至るアメリカ史を年代を追って検証していきます
まず、今回はプロローグとして、現在に至るここ30年ほどの共和党の変容とアメリカの状況を中心に概略を俯瞰してみます。
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共和党が成立した二大政党の原点ともいえる南北戦争(1861-1865)以降、アメリカは北部の経済利益を重視する共和党の保護政策に導かれ、工業生産を大きく発展させ、20世紀初頭にはイギリスを抜いて世界一の工業国に躍進した。
そしてこの間に、北部から西侵しアメリカ大陸の内陸部を征服し、西は大西洋から東は太平洋に面する『巨大な市場大陸』を完成させた。
巨大な市場大陸の形成を牽引してきた共和党は、1960年代までは、北部とくにニューイングランド地域や中西部を中心とした政党であり、イデオロギーは保守から穏健保守、中道、そしてリベラルにまで及んでいた。
ところが今の共和党はむしろ南部や西部山岳州を中心とする政党に変容し、党内では保守派が穏健派を圧倒するに至っている。
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変容する共和党の保守派の内部を見ると、大戦後からの保守派である「伝統主義者」「反共主義者」「リバタリアン」、これに’70年代後半より顕在化してきた「宗教保守」を加え、大別して四つのカテゴリーに分類できるが、’90年代後半頃から民主党からの転換組みを取り込んだ「新保守主義(ネオ・コンサーヴァティヴ=ネオコン)」が台頭している。
そして現在は、国務長官のパウエルをはじめとする現実主義派と、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官をはじめとする国防総省を基盤とする保守強行派と、保守強行派を後押しするウォルフォウィッツ国防副長官らネオコンとの、「現実主義派VS強硬派+ネオコン」という対立力学が存在している。
そして政策的には、1929年大恐慌に対応した(共和党政権10年の後を受けた)民主党のローズヴェルト(1931)以来のニューディール的政策をかなりの程度容認していたが、’81年レーガン政権成立と相前後して、減税を中心とした「小さな政府」路線を明確に打ち出すようになった。
しかし外交軍事政策面においては、’50年代から70年代半ばにかけてはまだ穏健な国際主義的路線を支持する面もあったが、’80年代以後から国家の力を誇示する変化を示し、9.11事件後には「ブッシュ・ドクトリン」と言われる先制攻撃戦略へパラダイムシフトした。
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このように共和党が変容する間のアメリカの状況を見ると、主要に次の点が挙げられる。
①産業資本市場から金融資本市場への転換
アメリカ経済は、赤字が膨らみだし’71ニクソンショックの変動為替相場制へ突入、そして一次・二次オイルショックを経過したあと’80年のレーガノミクスにより赤字が爆発し‘85プラザ合意に進んでいったが、それ以後も貿易・財政赤字は増大し続けた。
そして、プラザ合意の金利政策以降、アメリカ経済は南北戦争以来の産業資本市場から金融資本市場に大きく舵を切り・加速していった。
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 (※図は、J-marketing.netさんより引用させて頂きました。)
②米ソ冷戦後(1989年)に、軍産複合体(戦争市場)は建前を失い、混迷・暴走しだした
ソ連の脅威が消えた冷戦後には、アメリカの軍事戦略は軸を失い混迷をきたし、ソ連の脅威に替わる仮想敵国をいかに創るかに傾斜していく。
そして、1990年代初め、第三世界の諸国で兵器拡散の脅威を取り上げ始め、「大量破壊兵器(WMD)」とその運搬手段をもった攻撃的な第三世界の諸国を「ならず者国家」と称し、その脅威を煽り軍事力拡大を図った
そして、9.11テロ攻撃(2001年)後には、アフガニスタンのアルカイダ・タリバン政権への攻撃、そして(2001年10月)イラクへ攻撃を行ない先制攻撃を辞さない「アメリカの国家安全保障戦略(ブッシュ・ドクトリン)」(‘02年9月)を打ち立てた
③冷戦後に米欧間の市場での利害関係が顕在、そしてユーロが登場
冷戦後にソ連という共通の敵が消えたことで、アメリカは「西側同盟の盟主」という西欧へのイニシアチブを失い、米欧間での利害関係が顕在化し、ユーロ(’92)が登場する。
そして、G・W・ブッシュ政権発足後には、京都議定書離脱(2001年3月)、生物兵器禁止条約検証議定書不支持(同5月)、包括的核実験禁止条約(CTBT)批准案の死文化決定(同7月)、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)条約離脱(同7月)と、立て続けに国際協調を無視する単独行動主義が際立ちだし、諸外国から反米気運が高まっていく。
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(※図は、2002年防衛白書より引用させて頂きました。)
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ここまで俯瞰してみると、市場の中でのアメリカの置かれた環境が‘70年代ぐらいから大きく変化し’90年代に入り激動し、それに伴い’82年のレーガンから今のG・W・ブッシュに至るまでのここ約30年ほどの間に共和党は大きく変容し、それに導かれてアメリカの政策も大きく変容したことがわかる。
改めて、アメリカの二大政党の共和党と民主党とは?
次回から年代を追って検証していきますが、(ここまでの内容を踏まえてみても)見失ってはいけない視点は、
そもそもアメリカという国は、ポルトガル・スペインからフランス、そしてイギリスと続くヨーロッパからの移民または国主導の侵入そして略奪によって建国された国家であるが、このことは巨視的に見れば「近代ヨーロッパ(主にイギリス帝国)の市場拡大を目的として建国された国家」ということです。
先住民の清掃・黒人奴隷制を礎に、20世紀初頭までの巨大な市場大陸の形成(それがフロンティア)、そしてラテンアメリカ・アジア・アラブ圏への市場拡大、そしてドル還流システムによる過剰消費市場の形成、という歴史の国。
そして国家統合の要も、身分制の秩序ではなく経済力による階層性(それがアメリカンドリーム)の歴史しか持たない国。

つまり、建国から現代に至るまで、アメリカという国の歴史は、市場原理のみに貫通されている『消費市場拡大のための国家』という視点は見落としてはいけないだろう。
近代市場の変化と連動するようにアメリカは変化し、その変化を政策的に牽引するうえで、共和党は変容しそして民主党も変容している。
つまり、共和党も民主党も一貫して市場原理に貫通された政党であり、市場のために、アメリカという国(モーター)を動かすガソリン役として存在している。
ただし、この市場のためのガソリンの種類(共和党と民主党)とその変容の少しの違いが、従米している日本に与える影響としては無視できるものではないだろう。
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今回はここまで。
次回以降は、建国から年代を順次追って検証していきます。期待してください 😉
(※参考文献:「G・W・ブッシュ政権とアメリカの保守勢力-共和党の分析- 久保文明編」)

List    投稿者 kirin | 2007-12-22 | Posted in 03.アメリカの支配勢力と支配構造4 Comments » 

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コメント4件

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