2022年02月18日

ウクライナ情勢。中露の急接近で「欧米解体」が現実化してきている

前回、この間のウクライナ情勢の概論(リンク)以降、中露が急接近と、中国の世界情勢に対する出方が顕わになってきている。

2/4 中露首脳が会談、ウクライナと台湾で相互支持
2/10 露軍とベラルーシ軍との大規模合同軍事演習「同盟の決意2022」を開始

(https://www.afpbb.com/articles/-/3390419?cx_part=search)

中国は露に協力姿勢で、NATO拡大に反対を共同表明。これは欧米解体路線で共闘を表明したといえます。

そうなってくると、ウクライナ問題とは、マスコミで報道されているNATO対ロシアといった単純な話ではなく、
中露による世界勢力刷新の目論見であり、中国の動き方からこの問題を捉えることが、将来予測としての注目の仕方なのです。

これまで欧米勢力からの牽制とロシアとの協力関係の板挟みと思っていた中国が、ここに来て露との歩み寄りを始めていることが示すこととはなにか。

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①本格的にユーラシアへ舵を切った中国

これまで当ブログで世界情勢を読み解いてきた通り、中国が目論む経済圏は、NATOではなく、「大ユーラシアパートナーシップ」、「上海協力機構」のユーラシアシフト路線です。

21年に締結した、中国の一帯一路やASEANを包含した「大ユーラシアパートナーシップ」で、アジア圏を中心とした他国間主義を急速に進めています。
「上海協力機構(SCO)」は、19年のサミットにて、テロ組織などから加盟国に脅威を与える勢力への対抗を協力して行う長期善隣友好協力条例などを結んでいます。(中略)中露主導の多極化社会の実現性をより高めていくでしょう。
(引用:リンク

だからこそ、NATOの東方拡大(ウクライナのNATO加入)を進めようとする欧米諸国の動きを見逃さず、中露で共闘関係を築き、NATO拡大の防止策に乗り出しています。

 

②実は密接なウクライナと中国の関係

・ウクライナ最大の貿易相手「中国」
ウクライナ最大の貿易相手は、輸出入額ともに”中国”です。しかも年々その規模を大きくしつつあるのです。主要には工業製品輸入は中国から、食品(穀物など)輸出は中国へ、取引を行っています。

中国と欧州や「一帯一路」沿線国を結ぶ国際貨物列車「中欧班列」は、2020年7月に中国・湖北省武漢市からウクライナの首都キエフ市向けの定期直通列車が、2021年9月にはキエフ市から陝西省西安市向け直通列車がそれぞれ運行を開始した。
加えて、インフラ建設の協力関係を深化させる協定の締結など、二国間の関係性は年々深めつつある。
(引用:リンク

・ウクライナから中国へ軍事技術の密輸
同時に注目すべきつながりは、中国海軍拡大の象徴とも言える空母”遼寧”、現在中国で開発が進められているJ-15艦上戦闘機“殲-15”など、現代の中国軍事は全てウクライナから輸入した技術に基づいているという点です。
ソ連崩壊後、旧ソ連の軍事の一端を担っていたウクライナが軍事技術の取引先として選んだのが“中国”でした。これが中国の軍需に大きく応え、中国軍事力を引き上げてきた経緯もあるのです。
(参考:リンク

ウクライナは、貿易相手として、そして資金源として、中国と強いつながりを持っており、中国から見てもウクライナが持つ軍事技術力は手放したくない。中国にとって、中国・ウクライナの二国間関係は、露との関係強化の目的以上に切っても離せない繋がりを築いているのです。

 

③ウクライナは中露?欧米?どちらにつくのか

ウクライナがどちらにつくか、それによって、軍事技術力、アジアとヨーロッパのパイプラインは大きく変わります。また天然ガスの価格にも大きな影響があり、世界経済も大きく動きます。これら状況に対して、私は、これまでの最大の貿易相手であり、軍事的につながりの強い中国との繋がりを選ぶ可能性が非常に高いと見ています。

理由のひとつは、ウクライナの財政難です。中国にとっては軍事技術のつながりの強いウクライナ。欧米やその他の国家に軍事技術を流すことを許すとは考えられません。

経済的に不安定な時期が長く続いたウクライナでは、中国以外にも様々な国に武器を販売しており、サダム・フセイン政権下のイラクへの制裁を破ってレーダーを輸出し、またアフリカの紛争国にも無節操に武器輸出をして国際的非難を浴びていました。近年は欧米の関与により、ウクライナの武器輸出管理も整えられたと考えられていましたが、今後の財政問題次第で、また無節操な武器輸出による外貨獲得に走る可能性も捨てきれないのではないかと思われます。
(引用:リンク

合わせて注目しておくべきは、中露の資源連携、天然ガスの供給関係の動向です。中露の会談で確約した内容には、露の天然ガスを中国へ供給することも含まれています。

首脳会談では天然ガスを中国に年100億立方メートル追加供給することでも合意した。ロシアの国営天然ガス会社ガスプロムは2020年にパイプラインを通じ、中国へ41億立方メートルを供給した。
その中で中国に供給拡大を約束したロシアの姿勢には、長期安定で供給できる余力をアピールする狙いがにじむ。ガスプロムは14年、中国へガスを30年間供給する契約を結んでおり、今回も同様の長期契約とみられる。
EUは輸入天然ガスの5割弱がロシアから。経済制裁などで互いの溝が深まればエネルギー調達が滞る懸念もある。欧州のガス在庫は1月下旬に貯蔵能力の約4割まで低下。今冬中に枯渇するリスクにも直面する。
(引用:リンク

これまでの露と欧州は、天然ガスを供給元と供給先の関係であり、お互いに切っても切れない関係にありました。これに対して、供給先として中国が台頭することになれば、当然欧州との繋がりは希薄化し、中露の関係強化、同時に欧州の資源枯渇に結びついていきます。

中国がロシア側に関与を強化したことで、ウクライナは露に強硬姿勢は貫きにくくなり、現政権の親欧派(NATO)から、旧ソ連派と親中派勢力へと政権が移ることも考えられます。

天然ガスの枯渇懸念を持つ欧州、中間選挙を前にしてロシアの侵攻に経済的・軍事的にも弱腰なバイデン(リンク)。中露のタッグによって、現実味が帯びてきたウクライナの政権交代は、欧米勢力の弱体化、そして「欧米解体」が本格化してきていること示しているのです。

List    投稿者 fuji-m | 2022-02-18 | Posted in 09.国際政治情勢の分析No Comments » 

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