世界の制覇力は武力・資本から、エネルギー・食糧の実体へ
各国、各勢力のパワーバランスは、かつては軍事力であり、資本力でした。今日の資本を多く持つものが世界をコントロール・支配する、という構造も、中国発のコロナ、ロシア発のウクライナ情勢を経て、様相が変わってきています。
◆食糧生産
新しい「農」のかたち:ロシア発で世界の食糧が変わる(ダイジェスト)
新しい「農」のかたち:世界の勢力図の転換。ロシア・中国・BRICSが新たな経済圏を作り出しつつある
ロシアは、もともと食糧輸入国で自給は脆弱でした。しかし、2000年代のプーチン体制になって以降、国内農業の保護と、企業への大規模投資によって、わずか20年間で農業大国へと成長を遂げています。
■ロシア・中国・BRICSが、新たな経済圏を作り出しつつある
その大きなエポックが「ロシア・ウクライナ侵攻」です。
ここで顕著だったのは、食糧を他国の貿易に頼っていたアメリカ・日本・その他の国≒G7は、「ロシアは、なぜ世界の食糧を混乱させるのか!」という憤りを見せました。そして、食糧高騰のあおりを直に受け、国民の不安を高めることになりました。
一方で、中国・インドなどは、予めそうなることを予測していかのように、自国の食糧供給で賄おうという動きに転換しました。そして、それ以外の国も、反ロシアからロシア肯定・親ロシアへと転換し、アメリカ・欧州からロシアへと交易を転換させる国も出てきました。
それを象徴するかのように、6月11日にロシア下院のヴォロディン議長は、ロシアに対し友好的な国による「新G8」を提唱。「アメリカが対露制裁などによって新G8結成のための条件を自ら作り出した」とし、その新G8として「中国、インド、ロシア、インドネシア、ブラジル、トルコ、メキシコ、イラン」を挙げました。
そして、「日本を含む現在のG7の経済は、対露制裁の負荷(フィードバック)によって崩壊に瀕している」と声明しました。(上記リンクより引用)
現代の高性能兵器を無力化できる電磁波兵器を開発するなど、高い軍事力(科学力)に目が行きがちですが、こうした農業生産力もロシアの強さの一つとであると言えます。
◆ロシアと欧州と日本のエネルギー事情
・ロシア、フランスへのガス供給停止へ 冬を前に不安高まる欧州
・ロシアの大手ガス企業、欧州向け天然ガスパイプライン供給再開を延期
間もなく冬期に入るEU諸国は、これまでのロシア頼みのガス供給が滞ることから、エネルギー価格の高騰だけでなく、そもそも自国が越冬できるのか、という切迫した課題に直面しています。
日本においては、電力・ガス等の資源である石炭・天然ガス・石油は、輸入相手国と長期契約をしているため、短期契約であるEU諸国ほどの急激な価格上昇は今までありませんでした。しかし今後は、電気料金が大きく上がるとの見方が極めて強く、この状況から原発再稼働の動きが活発化、反原発の世論への影響が大きくなりそうです。
話をEUに戻します。
越冬問題に直面しているEUですが、実は中国からロシアのガスを買っているという報道。
FINANCIAL TIMES:中国はLNG再販でヨーロッパにエネルギーの生命線を投げる
Zero Hedge:中国はロシアのガスをヨーロッパに積極的に転売している
ロシア→中国→EU各国というルートで、結果的にエネルギーは供給されており、越冬の問題や価格高騰による経済大混乱は起きないのでは、と考えられます。
◆ロシア・中国は、西側の混乱を最小限に。市場は軟着陸か
既にルーブルは金兌換済み。(参考)
そして豊富な食糧と大量のエネルギーという実体を持つロシア。
ドル基軸通貨体制の崩壊は、秒読み段階に入っています。そうなれば、上海協力機構に非加盟である西側諸国は混乱は必至。しかし、上記のような下地が既に出来ているのなら、食糧や資源不足で起こるであろう国内外の経済混乱、略奪や飢餓、さらには各国が武力侵攻に踏み切るかもといった最悪のシナリオを回避できるでしょう。
これらの近未来、世界の制覇力が、かつての武力でも資本力でもなく、より多くの実体へと変わっていくことが、見えてきます。そして世界は、ロシア・中国によって混乱を最小限に抑えつつ、軟着陸的に次なる段階に移行していくと考えられます。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nihon-syakai.net/blog/2022/09/13810.html/trackback