東アジア共同体構想の経緯
今後の日本の外交をどうなるか?を考える上で「東アジア共同体構想」は重要なテーマなのですが、マスコミはほとんど扱いません。まるで触れることを恐れるかのように。今年の1月にも東アジアの首脳が集まって会議をしていたのですが(もちろん安倍首相も参加)、それはほとんど報道されていません。ここに何らかの意図が感じられるのですが、重要なテーマなので、これまでの経緯を投稿します。
①1990年代前半、アメリカ→日本によるアジア統合の妨害が始まる
日本は1980 年の大平首相の下での「環太平洋経済協力構想」を皮切りに、東アジアの地域協力に積極的に取り組んできたが、1990年以降アメリカの意を汲んで足引っ張り始める。
1994 年、マハティール・マレーシア首相が「東アジア経済会議」(EAEC)構想を提唱したのに対し、日本は米国に配慮して反対に回り、この構想を頓挫させた。
ASEANのまとまりを危惧するアメリカはASEAN(東南アジア諸国連合)プラス3(日本、中国、韓国)以外に、オーストラリア、ニュージーランドも加えるべきだと主張。それに呼応したオーストラリアの提唱でAPEC(アジア太平洋経済協力)が作られた。
1994年APEC会合でアメリカの主張が反映され、2010年までにアジア太平洋地域における先進工業諸国間オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、米国、日本での自由貿易を達成することに合意した。つまりアメリカが主導し、日本がアジアを取りまとめるというのが、この地域の自由貿易システムを建設するシナリオだと考えられる。
②1990年代後半、通貨危機を契機にアジア統合の動きが加速
東アジア各国の通貨危機に対し、IMF(国際通貨基金)は有効な策を取ることができず、その市場原理主義が通貨危機を経済・社会危機にまで悪化させたとして、批判を招いた。それに対してアジア通貨危機に際してAMF(アジア通貨基金)構想が出されたが、米国などの反対によって実現しなかった。他方で、米国が重視したAPECは、アジア太平洋域内の貿易・投資自由化と経済協力の上で十分な成果を上げられず、次第に求心力を失った。こうして、東アジア各国間でAPECとは別に協力の枠組みを作る必要性が認識されるようになった。
1997 年12 月、日中韓の首脳がASEAN首脳会議に招かれる形で初めてASEANプラス3首脳会議が開かれた。以降毎年1回ASEAN首脳会議にあわせて開催。
③2000年代、アメリカと中国の主導権争い。
アジア統合の動きに対して、またもやアメリカが横槍を入れ始める。そして、アジアの主導権を握ろうとする中国。
2004年、日本はASEANプラス3にインド、オーストラリア、ニュージーランドを加えた16カ国で首脳会議を開くことを各国に働きかけたが、当初ASEAN諸国、特にインドネシアは、首脳会議の開催によってASEANの指導力や影響力が低下するとして会議の開催に反対。他方、マレーシアや近年東アジア外交に熱心な中国は会議開催に前向きで、ASEANプラス3の枠を維持した上での会議の開催に同意した。
2004年11 月の第10 回ASEAN首脳会議で、2005年に東アジア首脳会議を開催することが合意された。また、中国は自国での会議開催を各国に働きかけたが、ASEANの反対が強く、マレーシアが2005 年12 月に第一回東アジア首脳会議を開催することで決着した。さらに、中国は参加国をASEANプラス3に限るべきだと主張し、マレーシアがこれに同調したが、結局、首脳会議には13 か国のほか、インド・オーストラリア・ニュージーランドの参加が決定。
2005年12月14日に初めてASEANプラス3+インド・オーストラリア・ニュージーランドの首脳会議=第1回東アジア首脳会議(サミット)が開催。ここで小泉首相は、東アジア共同体にはASEANプラス3のほかに、オーストラリア、ニュージーランド、さらにはインドも加えようと発言。このときから、ASEANプラス3(日本・中国・韓国)首脳会議と、オーストラリア・ニュージーランド・インドを加えた「東アジア・サミット」という枠組みが並存することに。アメリカの分裂工作とも言える。
東アジア共同体の主導権を握ろうとする中国。それを、日本やオーストラリアを使って阻止しようとするアメリカ。そのお先棒を担いだのが小泉前首相。東アジア共同体を巡って米中間で縄張り争いが展開されている。(本郷)
参考
東アジア共同体と日本
ASEAN+3首脳会議及び第2回東アジア・サミット(メモ)
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コメント3件
online hermes handbags | 2014.02.02 18:46
fake hermes bags in bangkok 日本を守るのに右も左もない | 政党離れを画策するマスコミ。その意図は?
匿名 | 2007.04.11 22:11
>「そのまんま東現象」なる虚構をデッチ上げ、あたかもそれが「小泉劇場」の後継であるが如く取り上げたのである。
そんな見方をしている人がいることの方が驚き。必死になって小泉・石原・安倍を叩いてきたのがマスコミだろう。