2022年05月20日

建設資材の急激な高騰は、製造業の国内回帰の後押しとなるか?

国内の建設資材の急激な高騰は、製造業の国内回帰の後押しとなるのでしょうか?

昨年の2021年から建設資材は、急激な高騰が起きており、異常事態を迎えています。
コロナ禍を皮切りに木材や鋼材(材料)の価格が上昇するなか、ロシアのウクライナ侵攻によるウクライナショック(エネルギー)も重なってきました。

建設資材は、2011年(=100)に比べ2022年現在、約30%もの上昇。中でも近2年で20%と高騰しています。
この要因は何か?

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建築業界に身を置く私も印象的だったことは、’20年コロナ禍での衛生設備の納入がストップしたこと。全く予期しておらず、様々な案件で工期が危ぶまれました。これは住設機器部品の主要生産拠点であるベトナムで新型コロナウイルスの感染が拡大し、「工場の操業が停止したこと」が原因でした。

’21年には木造建築物建設のための、木材がない。価格も高騰しました。国内で使用する、7割を外国産材(唐材・米材等)に依存していた影響は大きい。住宅でも工事がストップ、工期が長期化しているものも目に付きました。

この背景には「アメリカ・中国での建築ラッシュ」(莫大な財政出動と住宅ローンの低金利政策の結果、リモートワークのため住宅需要が急増)と「物流のコンテナ不足」(ネット購入増やロックダウンに伴う物流ひっ迫)がありました。

■建設資材の価格高騰の要因は?

近10年の建設資材の変遷を見ると、2013年の東京五輪開催決定からじわりと上昇。その後落ち着くものの、2016年リニアの法改正(鉄運機構法)が行われたころからまた値上がり。2018年大阪万博決定時には再び鉄鋼製品が一気に値上がりしました。この段階で約5~10%の増となっています。

こうした国から市場へのカンフル剤注入の結果、期待需要の増と合わせて、大手の囲い込みが始まる傾向があります。市場の需要を予測して、材料や人材の押さえに入るのです。結果、コストは上昇していく。

それに対して、今回は様相が異なります。
2019年12月にはコロナが発生し、2020年、コロナが世界中に広がる中で生産・供給や物流が大きく制限。
2021年、ウクライナショック。資源の高騰で、物流コストもさら増加。

これらの価格高騰の要因は、
①コロナ禍で病気の流行および活動制限による「工場での生産停止」
「生産拠点の被災」。例えば半導体では日本の半導体工場(那珂工場)での火災発生。
③世界の流通のハブとなる拠点のロックダウン。コンテナ不足など「物流のひっ迫・停滞」などです。

このように物価高騰のポイントは、ことごとく供給側の要因であること。
豊かな時代となり、生産力が増大。各国で供給過多となってきました。世界中へグローバリズムと共に、需要を生み出すことで経済を動かしてきました。特に建材や食品はグローバリズムの代表とも言えるでしょう。

しかし、今の市場は、生産と需要の関係だけでなく、物流が占める位相が大きくなっている、それを踏まえた戦略が今後は必然となるのです。

■今こそ国内自給に活路を

私の知人からの情報ですが、いま奈良県宇陀市の木材が良く売れているといいます。外国産材が高騰した結果、元々高くなってしまっていた国内地域産材にも勝機が見えてきたとも言えます。今回、海外依存度が高い日本のサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りになった一方、国産材や国内での自給に注目が集まる好機です。

製造業の国内回帰も始まっています。
>生産拠点を国内に戻す動きは自動車部品や家電、化粧品、食品などさまざまな業界で始まっているという。受注は今秋からさらに増えるとみており、この傾向は「3━4年は続くのではないか」と予想する。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けた供給網の混乱やロシアのウクライナ侵攻への懸念に加え、円が対ドルで約20年ぶりの安値水準にある中で国内の「人件費が安い」ことが国内回帰を後押ししているとみる
(参考:製造業の国内回帰始まる、建材受注増加、人件費安が魅力-東製鉄 )

 

国内の地方に生産拠点が戻り、単純な工場生産を超えた仕事を創出、活力を生む場になれば、日本の地方・活力再生にもつながるのでは、と価格高騰からの「国内自給回帰の可能性」に期待したい。

List    投稿者 yamane | 2022-05-20 | Posted in 10.日本の時事問題No Comments » 

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