2022年05月05日

ウクライナ。各国の国内報道と主張。

戦争プロパガンダ(前回記事)について、今回のウクライナにおける戦争ではどのように行われているのか。

NATO側を中心とする欧州・米国・日本においては、「侵攻」するロシアと、それによって市民の虐殺まで行われている「被害者」のウクライナとして報道されています。各国の国会で訴えたゼレンスキーの役者ぶりには、世論を誘導するには強い力となっていたことがわかります。そのためにも親ウクライナ側のウクライナ軍、英国、米国は非常にうまく情報を作り上げているとも言えます。その結果、ショッキングな映像と反露思想的な報道によって、日本国内の大衆心理もロシアを悪者として見る。そして、ゼレンスキー大統領を侵略国に立ち向かう英雄として持ち上げられているのが、日本国内の世論となっています。

一方、ロシア国内に目を当てると、プーチンの支持率は83%に上昇、今回の戦争においても妥当と考える人が81%と高い水準を更新しています。(リンク

このロシアの軍事作戦に対して、各国を比較するとずいぶんな意識のズレが起こっています。各国の主張を見ても、先月行われた国連人権理事会では、欧米や日本など合わせて93か国が賛成し、ロシアのほか中国や北朝鮮など24か国が反対、インドやブラジル、メキシコなど58か国が棄権と、欧米側支持国は全体の半数程度、反対と棄権と同数程度です。
各国ではこの戦争をどのように報道されているか、そして真実をだれが曲げているのか、冷静な目で大局と真実に目を当てることが、この戦争の真の思惑を読み解いていく上で重要になってきています。各国の報道状況から、世界では今回のことがどう捉えられているのか、読み解いていきたいと思います。

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ロシアを犯人とするブチャ虐殺映像の真偽リンク

ロシア大統領府のペスコフ報道官は5日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊で多数の民間人の遺体が見つかったことについて、ロシア軍の名誉毀損を目的とした「恐ろしい捏造」だと述べた。
ペスコフ報道官は記者団に対し「うまく演出された、悲劇的なショーだ」とし、「ロシア軍を誹謗中傷するための捏造だ」と述べた。
その上で「国際社会に対し自分の頭を使って考えるよう改めて呼び掛ける」とし、「事実を確認し、いかに恐ろしい捏造であるか理解する必要がある」と語った。
ロシアの安全保障会議副議長を務めるメドベージェフ前大統領も「ウクライナのプロパガンダ」による捏造との見解を表明。ロシアの信用を落とすためにウクライナ軍には自国民を殺害する用意があったとの考えを示した。ただ、具体的な証拠は示さなかった。
ロシア国防省は、「第72ウクライナ心理作戦センター」が首都キーフ北西23キロの地点にある村のほか、スムイなどでこうしたプロパガンダの実施を支援した証拠を入手しているとしている。
ロシア政府は、ロシア軍がキーウ近郊のブチャから3月30日に撤退し、同市の市長が翌日にロシア軍からの解放を宣言したにもかかわらず、民間人の遺体発見が4月3日まで公表されなかったのは疑問だとしているほか、一部の映像で確認された遺体には死後数日が経過した特徴がみられないと指摘している。

一方で、ウクライナ側は、第三者組織の現地調査を認めておらず、ウクライナ側によって「証拠隠滅」が進み、虐殺の真犯人を公式に確定する方法が失われつつもあります。ロシア側は国連安保理でブチャの事態に関する話し合いを繰り返し提案してきましたが、安保理の議長をつとめる英国は、ロシアの提案を却下し続けています。国連が第三者組織を作ってブチャの虐殺現場を現地調査すべきだというロシアの提案も却下され続けており、ウクライナの情報戦線に肩入れしている英国のきな臭さが拭えません。


【露】国内では米国はじめ各国の声明を紹介しつつも、ロシア系民族の救済作戦として報道
SPUTNIKより記事抜粋

宇マリウポリ 戦闘で荒廃した中心部

4月21日、ロシア軍はウクライナ東部のマリウポリを管理下に置いたと発表した。2月24日に軍事作戦が開始されて以降、同市ではロシア軍とウクライナ軍との間で激しい戦闘が断続的に行われ、多くの建物が砲撃を受けた。
ロシア国防省によれば、マリウポリからは14万2000人以上の市民が避難。街の状況は安定しており、街の復興作業の開始が可能だとしている。

ロシアはNATOと戦争状態にあるとは考えていない=露ラブロフ外相

「我々はNATOと戦争状態にあるとは考えていない。なぜなら、これは核戦争勃発のリスクを高める一歩になるからだ」と語った。ラブロフ外相は、次のような見解を示した。「残念ながら、NATOはロシアと戦争していると考えているように感じる。NATO、米国、欧州の指導者、特に英国、米国、ポーランド、フランス、ドイツ、そしてもちろん欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル上級代表は、プーチンは負け、ロシアは敗北しなければならないと言っている。このような用語を使うということは、彼らは打ち負かしたい相手と(すでに)戦争中だと考えていると私は思う」

西側の反露路線には見通しがない ロシアを弱体化させることにはならない=露ラブロフ外相

ラブロフ外相によると、西側諸国政府は、対露制裁がすでに自国の一般市民に害を及ぼし始めていることを気に揉んでいない。一方で、米国や多くの欧州諸国の経済動向は悪化し、インフレや失業が増加している。

※ロシア国内がどのようにこの戦争を見ているか、そしてどのように報道されているかは、ロシアメディアSPUTNIKの日本語サイトを見るのが、もっとも掴みやすいかと思います。

 

【中】中国国内は親露的報道、米国陰謀説が根強い

リンク
中国政府は、緊密な関係にあるロシアに対する支持を表明していないが非難もしておらず、米国と北大西洋条約機構の「東方拡大」が緊張を激化させたと主張している。このような政府見解は、厳しい報道統制下にある中国の国営新聞・テレビやソーシャルメディアでも共有されている。
新華社通信は、侵攻が始まった先月24日、「特別軍事作戦」であり、ロシア政府にはウクライナを占領する「意図は全くない」と報じた。
数日後、中国中央テレビは、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が首都キエフから逃げたとするロシア側の主張を伝え、他の中国メディアもすぐさま同様の報道を行った。
一部の中国メディアは、ウクライナ軍と国民の間に「ネオナチ」思想が急速に広がっているというプーチン氏の主張を報じている。
先月インターネット上に流れた情報によれば、国営メディアはロシアに不利な投稿や親西側的な内容を含む投稿を掲載しないよう当局に指示されているとみられる。ウクライナ情勢の報道では「侵攻」といった表現を避け、「紛争」「戦闘」などの言葉が使われている。

 

【印】中立的立場を貫くインド

インド国内メディアでは、西側・ロシア側両国首脳の言葉を報道。モディ首相の中立的な立場を反映した、中立的な立場での報道を行っています。

「ウクライナ問題に勝者はいない。全員が損失を被るだけだ。」モディ首相(現地メディア-THE TIMES OF INDIAよりリンク

4日、印モディ首相と独ショルツ首相はベルリンにて共同記者会見を行い、モディ首相はウクライナ紛争の唯一の解決策は「対話」であるというインドの立場を強調した。
インドとドイツの両国声明の中で、独シュルツ首相は、ロシアによるウクライナ侵攻は、「ロシア軍によるウクライナへの違法で挑発的な攻撃」であり、民間人の死を非難し、「この戦争を止め、無意味な殺戮を止め、軍を撤退させる」よう訴えた。それに対してモディ首相は、平和への「対話」が必要であるということにとどめ、シュルツ首相のロシア非難には加わらないことを意味している。
(筆者による意訳)


【伯】中立的立場のブラジルだが、大統領選を踏まえた世論コントロールが行われる。

今年2月に行われたロシアとブラジルの首脳対談では、プーチンとボルソナロ大統領が両国の連携強化していく声明を出していました。(リンク)そのため、3月のロシアによる軍事作戦開始以降も、ボルソナロ大統領は、表向きは英国のロシア侵攻に対する非難に同調しつつ、中立な立場、裏ではプーチン賞賛と同時に行うなど、「二枚舌」として、国内メディアでも報じられています。

一方で、2022年の大統領選では、候補者が挙って、ロシア非難に走っている(リンク)。
このことから世論は、反ロシア一色かというと、そうではありません。今回の大統領選の最有力候補のルラ元大統領は、極右派の前のボルソナロ現大統領に対して、左派の大統領候補です。この左派勢力系メディアは今回のウクライナ侵攻に対して、消極的な報道となっているようです。

ブラジル左派がウクライナ危機に静かな理由

沈黙の理由の一つ目は、強い反米感情だ。彼らは国際紛争に米国が介入することに強い嫌悪感を示す傾向がある。米国は1960年代に、キューバの影響でブラジルが共産国化することを恐れ、ブラジル政治に介入。右翼軍事政権を誕生させた。この時、左派活動家は政治的弾圧を受け、一種のトラウマを抱くこととなった。ベネズエラやボリビアも「ロシアが何をやったか」ではなく、「米国が介入していること」に嫌悪感を示している様に映る。
理由の2つ目は、反ネオナチ思想だ。「ネオナチ」とは親ナチスの思想を持つ集団のことで、外国人排斥、同性愛者嫌悪、反共主義を思想の中心としている場合が多い。ブラジルの左派系メディアは、ウクライナの治安当局にネオナチ勢力が多いことを積極的に報じている。同国では2014年に極右勢力が台頭し、政府はネオナチの暴力性を利用して国の治安維持に当たらせているという。国際報道がウクライナへの共感一色に染まる中、ブラジル左派メディアはウクライナ治安部隊員のネオナチ徽章装着事実を逃さずに報じている。

List    投稿者 kikuti | 2022-05-05 | Posted in 09.国際政治情勢の分析, 15.ロシアNo Comments » 

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