2008年09月14日

バブル市場を支えるための戦争

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『元外交官・原田武夫の「国際政治経済塾」』によると、グルジア紛争は金貸しが市場を維持するために仕組んだものらしい。
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「非同盟諸国会議が米国に牙をむく暑い夏」

世界の名だたる銀行家たちが口々に「金融不安は去った」と語っている今年の夏。しかし、米国由来の証券化された金融商品の損失額は日に日にふくらむばかりである。ついにはその総額が1兆ドルだというIMF(国際通貨基金)の推定が再び語られ始めた。それにもかかわらず、米欧系“越境する投資主体”たちはこれをひた隠しにしている。
彼らはあの手この手を使っては「会計ショック」を先送りする一方で、その損失を補てんすべく、プリンシパル・インベストメント(自己勘定取引)によるトレーディングで、いわば「別腹」を増やしていくことを画策しているのだ。現在、「原油」「為替」「金(ゴールド)」「債券」「株式」が乱高下し、地政学リスクが収まらないのはそのせいだと考えておくべきである。そうした“仕掛け”の1つが、風雲急を告げているイスラエル及び米国による「対イラン限定的空爆」である。下手をすると「死の灰」が降りかねないこの「空爆」は、原油・金マーケットを暴騰させることだろう。
しかし、ここに来て1つの疑念が囁かれ始めている感がある。「証券化された金融商品に基づく損失額は、その規模の紛争によるマーケットの潮目で埋められるのか」というのである。つまり、より大規模な紛争に発展する可能性がささやかれ始めたのである。

「グルジア紛争で想定外の窮地に追い込まれたイスラエル」から。

私が率いる研究所(IISIA)では、初夏頃よりこの夏、具体的には8月上旬を目処に地政学リスクが炸裂する可能性が高まっているとの分析を公表してきた。しかも7月頃の情勢を見る限りでは、もはやそれは中東の1ヶ国、たとえばイランに限られるような話ではなく、場合によっては「米露対立」という巨大な構図の中で生ずる“潮目”となる可能性があることも述べてきた。戦乱の被害者については痛ましい限りだが、悲しいかな、こうした予測分析は結果として的中したことになる。
私の率いる研究所がなぜこのような分析をしたのかというと、当然、マーケットとそれを取り巻く国内外の情勢をウォッチし続けてきた結果、それを指し示すいくつもの予兆が見て取れたからに他ならない。そもそも今なぜ“地政学リスク”なのかといえば、「それが正にマーケットの論理からすると必要だから」という一言に尽きる。
サブプライムローンのみならず、米国由来のリスク資産の損失額が余りにも莫大であることが既成事実化していく中、これが明るみに出ることを、なんとしてでも先送りにしようと、米欧の“越境する投資主体”たちは必死になって策動してきた。その結果、本来であれば金融マーケットの健全化のために必要な措置、すなわち損失額の全容が明らかになるような会計基準へのルール変更を2010年まで遅延させることに成功したのである。
その一方で、“越境する投資主体”とそれとペアを組んでいる米欧などの各国政府は、盛んに地政学リスクを変動させるよう集団乱舞を繰り返している。そしてそのたびに世界のどこかで、何らかの金融商品のマーケットが揺れに揺れ、“越境する投資主体”たちがマネーをかっさらっていったというわけなのだ。「原油」然り、「金(ゴールド)」然りである。今回のロシアによる“グルジア侵攻”もその1つに過ぎないともいえる。
ちなみに今回のグルジア侵攻の際、原油は(なぜか)下がり、金(ゴールド)も下がる一方で、米ドルは(なぜか)上がった。

戦争によって金融市場・商品市場を乱高下させ、投機利益を確保する。バブル化した市場を維持するために戦争が行われる、それが現代の金融市場・商品市場と戦争の関係だということだ。8月のグルジア侵攻でドルが上昇したのだとしたら、それはドル相場を維持するために企図されたものであり、従って、ドル基軸通貨体制を維持しようとする金貸し勢力が目論んだものという見方ができる。
歴史的に整理すると、
市場の拡大期には、金融資本発の金貸し(ロスチャイルド等)も産業資本発の金貸し(ロックフェラー等)も共存共栄していた。冷戦がその代表で、軍事費を増大させるアメリカ国家に対して金融資本は金を貸して儲け、アメリカ国家が発注する軍事産業で産業資本(発の金貸し)も儲けるという構図である。
ところが、1970年前後に先進国市場が縮小し始めると様相が一変する。産業資本による市場拡大路線は行き詰った。加えて、基軸通貨ドルの高め維持の結果、アメリカの国内産業は衰退し、産業資本発の金貸しは追い詰められる。
そこで、産業資本発の金貸しがまずやったのが、ドルショックによる金ドル交換停止→金の裏づけなしに紙幣を大量供給することで先進国市場の縮小を食い止めるという戦略だったと考えられる。ところが、アメリカの産業力は低下する一方。国家の借金は膨張する一方。
こうして先進国では産業資本による市場の拡大は行き詰った。産業資本発の金貸しは、衰退する一方のアメリカの産業力にしがみついていては儲からないので、アメリカに見切りをつけ、後進国市場を拡大させる多極化路線をとり始める。共存共栄していた金融資本発の金貸しと産業資本発の金貸しの対立が始まる。
一方、縮小しつつある先進国市場にしがみついているのが金融資本発の金貸しである。そこで儲ける方法はバブル化しかない。それは彼らの十八番でもある。そして1980年代の日本を皮切りに先進国全体がバブル化した。先進国のバブル化の主勢力は、先進国市場(とりわけアメリカ一極支配=ドル基軸通貨体制)にしがみつく金融資本発の金貸しではないか。そして、このバブル化した市場を維持するための手段が戦争である。
戦争を仕掛けるのは産業資本発の金貸しだけではない。金融資本発の金貸しもバブル市場を維持するために戦争を仕掛けるのだ。グルジア紛争は後者のパターンだという原田武夫氏の意見に同意する。今回の「新冷戦」は、金貸し同士の共存共栄を前提とした、かつての「談合冷戦」ではない。多極派(産業資本初の金貸し)のバブル市場崩壊攻勢に対抗するために、金融資本発の金貸しが仕掛けたバブル防衛策なのではなかろうか。しかし、この戦争カードは最後のカードである。そこまで金融資本発の金貸しは追い詰められているのかもしれない。
(本郷猛)

List    投稿者 hongou | 2008-09-14 | Posted in 09.国際政治情勢の分析3 Comments » 

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コメント3件

 Route5 | 2008.12.02 21:09

天皇中心の体制を気付くことが、国家戦略につながるという背景が気になりました。
よかったら噛み砕いて教えてください。

 kota | 2008.12.03 0:29

>Route5さん、コメントありがとうございます。
>天皇中心の体制を気付くことが、国家戦略につながるという背景が気になりました。
よかったら噛み砕いて教えてください。
現在の仮説の要点のみ上げてみます・・・
明治維新以降終戦までの流れは、開国に伴いいきなり武力を背景とした欧米の市場化圧力に晒された中、薩長中心の明治政府が、国内での(土肥勢力との)権力闘争を戦いながら、対外的にはイギリス(ロスチャイルド)と手を組みつつも、一方で植民地支配を恐れ独自に大陸進出を進めていく歴史であると考えています。
その際、元々貧乏な下級藩士の集まりである彼ら明治政府が、国家戦略を進める上で無くてはならなかったのが、天皇の権威と資金及び、日本の金貸し三井財閥の力だったのではないかと思います。(一説によれば三井家は藤原氏の家系)
その意味で、天皇とは彼らの“操り人形”(≒太古の昔から現在まで“象徴天皇”)であり、大日本帝国憲法や教育勅語にて天皇主権体制を築き、主に国策企業(日銀、横浜正金銀行、日本郵船、満鉄など)の株や、国策事業(満州における阿片売買やブラジルやハワイへの移民政策)を通じて、江戸末期には貧乏で全く力の無かった天皇に蓄財させ、それらを戦費、軍備増強費、満州国運営費として秘密裏に使っていたのではないかと考えています。(天皇の資金の使途や敗戦に伴う行方については謎が多く、調査中です。)
・・・巷では、天皇の蓄財と言えば、個人的な私利私欲といった言われ方をしていますが、実はそうではなく、“象徴”天皇を隠れ蓑にした日本の支配階級の策略ではないかと。
⇒この戦前の「日本支配の構造」が、敗戦⇒東京裁判を通じてどのように戦後アメリカによる「日本支配の構造」に“転用”されていったのか?が、最終的に解明したいポイントです。

 brown hermes bags | 2014.02.01 17:40

hermes bags wien 日本を守るのに右も左もない | 日本支配の構造15 “天皇の蓄財”の流れ

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