2022年10月25日

英国超名門校が日本に進出。日本の教育はどうする?

この夏、イギリスの超名門校の「ハロウ」の日本校が岩手でオープンし、話題になりました。(※ハロウのイギリス本校はチャーチル元首相など、8人の首相を輩出した超名門校。ハリーポッターのロケ地でも有名です。)その「ハロウインターナショナル安比」は世界からも子供たちが集まり、盛り上がりを見せていますが、さらに今後数年で、日本でイギリスの超名門の学校の日本校が連続してオープンしていきます。

<ハロウ 安比高原>https://www.harrowappi.jp/ja/

<マルバーン 東京小平>「英国 名門 マルバーン カレッジが2023年東京に開校へ」https://istimes.net/articles/1366

<ラグビー 千葉柏>「柏の葉に「(仮称)Rugby School Japan」2023年8月下旬開校予定」https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2022/0729_02/

日本の教育レベルがぐっと引き上げられそう。経済も活性化しそうですし、世界の高度人脈との繋がりも深まりそうで、非常に良いニュースとも取れます。

ただ「実際どんな学校?なぜ何校も?なぜ同時期に?なぜ日本に?」という疑問をもって、見ていくと別の一面が見えてきました。

にほんブログ村 政治ブログへ

■学費は年間900万円

ハロウは、創立450年を越える歴史ある学校で、完全寄宿制(ボーディングスクール)になります。

エリザベス女王1世から開校の勅許を受けた名門9校の1校で、実は上流階級向けのエリート向けの「パブリックスクール」です。そのため安比でも学費は年間900万円という超高額。それでも世界中から志望者が殺到したといいますが、なぜ、それほどのお金を投じてまで、選ばれるのでしょうか?

<ハロウ イギリス本校>

<セントポール大聖堂で行われる450年記念式典の様子 Harrow Schoolより>

一つは『人脈』。チャーチルらを輩出していることもあり、OBは錚々たる面々。教育レベルの高さはもちろんですが『人脈』のメリットが非常に高い。なぜなら学費が高いのもあり、集まるのも国々の貴族や世界的企業のご子息などの世界で成功している富裕層。

彼らが全寮制でともに学びますが、寮生活を共にした仲間は兄弟も同然。ボーディング人脈のは強い繋がりを持ち、新たなビジネスチャンスを生んだり、国交において、国益になるほどの抜群の存在感を放ちます。

もうひとつは人脈とセットとなる『社交術の獲得』。グローバルで社会的に高いポジションにつけば、ダンス、テニス、ゴルフ、馬術、スキー、ボート、音楽、演劇の素養を高いレベルで披露せねばならないシーンが来るでしょう。ただ、これら上流階級との社交に必要なスキルは、親が子供に学ばせるには限界があります。ただ、ハロウでは社交スキルやリーダーシップ育成にも長けた教師が揃っており、幅広い社交スキルを一挙に身につけることが可能です。

ではこれらの教育を求めるのは誰で、なぜ同時期に?なぜ日本なのでしょうか?

 

■教育内容の締め付けが強まる中国

今回日本に来るインターナショナルスクールのHPをみると、じつは日本以外の系列校はほぼ中国です。

近年、中国の裕福な家庭では、欧米の教育が自立した思考を育てると考えられてきており、中国の閉塞的な教育は限界があるという想いが強まっています。

そこにEU離脱時から、イギリスが『国家戦略として教育輸出』を推進してきた経緯と、中国富裕層のさらに上流階級に食い込もうとする思惑が重なり、中国に系列校が増えたという経緯です。

 

しかし、今、若い世代に愛国心を植え付けようと、共産党は国際教育に対する締め付けを強化しており、2021年12月にはインターナショナルスクールであっても、国が定めたカリキュラムを採用するよう圧を強めています。

それを受け、中国進出していたハロウ他、世界的な名門校も中国での教育事業の展開を断念。それにより、目が留まったのは中国から近い『日本』。中国から近く、かつ安全な日本なら世界からも富裕層が集まるはずで、進出の地としては良好な立地。。。

…という背景が名門校の日本進出の裏にあります。

実際、ハロウ校の広報によると、生徒の内訳は日本人が50%、残り50%が海外勢ですが、海外の生徒の内訳は30%が中国の生徒だそうです。

 

■誰が企図したのか?

以上は非常に良くできたビジネスモデルだと思います。では誰が企図したのか?

ハロウを誘致したのは「岩手ホテルアンドリゾート社」が誘致し、開発を進めたそうです。

が、実は2016年にオーナーが代わり、中国資本の会社になったと考えられています。登記簿謄本にも、香港特別区にある法人の名称が記されており、中国資本が企図したとみて間違いなさそうで、中国資本がイギリスの超名門校の看板を借りて、日本で教育ビジネスを行っている、ということになります。

良く思いついたな。と感心するばかり。さらに抜け目がないのが、学校へ『八幡平市から1億6400万円の補助金』が出されているという点。これと学校収益から経費を引いた利益は、香港にある法人に渡ることになり、日本から多額の税金が中国資本に渡されたことを意味します。

日本が遅れているとされる「教育」。この弱点を基点にアジア富裕層向けビジネスをチャイナマネーが仕掛け、強かに経済侵略をしてきているという状況が見えてきます。

まさにいま日本政府も国際金融センターとしての地位確立のために、高度外国人材を呼び込もうと「海外トップ校の誘致」を奨励し始めました。金融庁は学校用地のマッチングや融資制度の拡充の検討もしているようです。(令和3年度「日本及び主要国におけるインターナショナルスクールに関する調査)

が、政府の力だけでは、ハロウの例のようにすでに遅れをとってしまっているのが実態。中国の強かさに対応ができていないのが実情です。

 

■この状況を日本にどう活かすか? 

この状況をどう活かすか?何を学ぶか?

一つは『教育の強化』

日本の学校は教育はエリート養成や富裕層向けの教育は弱く、あくまで市民向けの学校が補助金に頼りながら国内で少子化のパイを奪い合っているのが実態。このまま日本式の教育を進めていても『世界で勝てる人材は育たない』というのが現実です。

一方で諜報技術や情報戦に長けた英国が確立したのは、世界の社交界でリーダーシップを獲得するための技術に特化した高度な教育システム。これは教育を市民に平等にあたえられるものだけではなく、現実に国が『世界で勝つ』ために、エリート・知識階級を養成する教育機関として作られたもの。

ここから学ぶものは非常に多いはず。現実に日本が社会で勝っていくためにも、世界中のエリート養成校が日本に来る”今”は絶好の機会。知見は学びとり、活かすことでいまの日本の教育を強く変えていけるはずです。

 

そしてもう一つ学ぶべきは『中国企業の強かさ』

国外資本の参入は国家が方策を決めるだけでは、どうしても防ぎきれない。企業側が他国より早く先手を取っていく必要があると考えます。

もし日本資本で誘致できていたら…。

世界の富裕層に対して、日本企業が多大な外貨を稼ぎつつ、現在の40~50代の現経済を動かしている富裕層に対して、安全で自然豊かな日本印象をさらに強化。ファンを増やすことで教育に限らず高度人脈を世帯ごとの誘致も可能になったでしょうし、同時に次世代の強力な人脈をボーディングスクールによって形成。将来の日本への投資や交易ルートの強化につながったはずです。

また補助金の使い道も、世界的なリーダーシップを取れる資質がありながら、経済的に通えない日本人の生徒を優遇することもできたでしょう。

 

国家の自治意識が高まりつつある現代。日本の企業も国単位で事業を捉える広い視野が必要な時代になってきているのではないでしょうか。

 

List    投稿者 suga-masa | 2022-10-25 | Posted in 09.国際政治情勢の分析, 16.国家の支配構造, 17.これからの教育No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nihon-syakai.net/blog/2022/10/13931.html/trackback


Comment



Comment