尖閣諸島問題の背後にあるもの~中国が覇権拡大に転じた?
「『尖閣諸島での漁船衝突事件』とは、いったい何だったのか?」に続く。
そこでは、この事件の背後にあるのは、中国国内の上海派(=石油党、バックはD.ロックフェラー)VS北京派(バックはロスチャイルド)の権力闘争であり、独立をしたい上海派が現北京政府の弱体化を狙い国際的な窮地に追い込もうとして起こした事件の可能性がある、と述べている。
引き続き、尖閣諸島問題の背後にあるものを探る。
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『ヤスの備忘録 歴史と予言のあいだ』2010年9月29日「流れの転換の向こう側2 中国の動きと文明史的転換」からの引用。
今回は尖閣諸島の問題を詳しく解説した。今回の尖閣諸島の領有権の問題で、中国はこれまでになく強硬な態度で日本に迫って来た。さまざまな方面の情報を解析していると、今回の強硬な態度は中国の戦略の変化と対応していることが分かった。
これまで中国は自由貿易協定を拡大し、製品市場、食料、資源、エネルギーを確保するためのサバイバル圏の形成を再優先していた。
しかしながら、これまでほぼ毎月のように発表されていた自由貿易協定の締結は一段落したように見える。これから中国は、サバイバル圏の形成だけではなく、それらの地域を積極的に確保し、国益が及ぶ地域として統合する積極的な戦略の段階に入ったように見える。今回の尖閣諸島の問題はこの転換点となる出来事であった。
中国は、地域の統合性を高める戦略のひとつとして、ドイツと日本のファシズムと戦った第二次大戦を共通の体験として強調し、地域の連帯感を高める方策に出ている。ロシアと中国の首脳会談では、メドベージェフ大統領から、「中ロの血の同盟」が宣言された。またサハリンで対日戦勝行事の一環で州主催の国際学術会議が行われ、中国、ロシア、韓国、英国、モンゴルなどの7カ国の代表が出席し、第二次大戦の終結におけるロシアの役割を再評価した。
次に、中国はより積極的な通貨政策にシフトしていることを紹介した。自由貿易協定の参加国や、その他の国々の間で国債を交換し、それをベースに人民元とその国の通貨との直接決済を実現しつつある。つまり、ドルを経由しない人民元建ての決済システムである。すでにこれは、ロシアとマレーシアの間で結ばれている。
一方アメリカは、こうした動きを基本的に容認する姿勢を見えている。オバマ政権は尖閣諸島が日米安保条約の適用地域であることを強調しつつ、ニューヨークタイムスには、アメリカを代表するジャーナリストが尖閣諸島は中国領であるとする論文が掲載されたりしている。
このような動きの中で日本は孤立感を強めているように見える。石油メジャーの元重役、リンゼー・ウィリアムスは、1月28日に「支配層は中国を覇権国にする」と決定したというようなことを言っているが本当にそのようになる可能性が出て来た
●日本の主要メディアの報道
この事件は、NHKをはじめ日本の主要メディアでは比較的にセンセーショナルな報道がなされているように思う。そこには報道のための共通のシナリオが存在しているようである。それは以下のようなものだ。
海上保安庁の巡視船に衝突した中国漁船が拿捕され、さらに船長の勾留期限が延長されると、中国国内ではナショナリズムでヒステリックになった国民の怒りが爆発し、日本大使館前のデモやその他の抗議行動が頻発した。そうした抗議行動には、日本に対する中国政府の弱腰の姿勢を批判するものも現れた。
また、ネットのBBSやブログには、日本を強く非難する書き込みと同時に、中国政府への非難も多く現れた。
中国政府は、中国国民のこうした強硬な姿勢に直面し、デモや抗議集会が行き過ぎないようにコントロールする一方、非難が政府に向かうことを恐れ、日本に対して強硬な姿勢を取らざるを得ない状態になっている。これが中国政府が簡単に引き下がれなくなっている理由である。
これが日本の主要メディアの一般的な報道内容ではなかろうかと思う。
この内容であれば、以下のようなニュアンスの報道に必然的になってしまうことははっきりしている。
1)今回の問題を難しくさせているのは中国の国民感情である。中国政府はむしろ守勢に回っている。
2)したがって、中国の国民感情が落ち着けば、いまのような対立した状況は収まるはずだ。尖閣諸島の問題も政府間の協議に移るだろう。
3)しかし、今後そのように潜在的に反日感情の強い国に対処するするためには、やはり米国との同盟を強化する必要がある。
つまり、この問題で日中両国が全面的に対立しているいまの状況は、ヒステリックな国民感情が作り出した一時的なものだろうということである。しかし、潜在的な敵対感情の爆発に備え、米国との軍事同盟は強化するべききだということだ。
●筆者の周辺情報
筆者には中国で仕事をしている友人が複数いる。北京、上海、大連などの都市に駐在していたり、または頻繁に中国と日本を行き来している人達だ。
こうした人達から寄せられる情報では、彼らの周辺では何も起こっておらず、それどころか周囲の中国人に聞くと尖閣諸島の問題を知らない人がほとんどだという。「へー、そんな問題が起こっているんだ。大変ですね」程度の反応だという。
一部のナショナリスティックな人達が反応しているだけで、大多数の中国の人々はなんの反応もしていないようだというのだ。
●2005年の抗議行動との違い
これは2005年の状況とは大きな違いだという。2005年、小泉は中国政府の再三にわたる抗議にもかかわらず、A級戦犯を祭っている靖国参拝を強行した。このときは、上海をはじめ中国全土で大規模な抗議行動が起こった。現地に駐在している多くの日本人の話だと、身に危険を感じるほどではないが、やはりさまざまな抗議活動を目にしたという。
確かに、今回の抗議行動と2005年のそれとを比べると規模が本質的に異なっているのが分かる。
今回は、日本のマスコミは規模が大きいように見せたいようだが、どう見ても百人を越えない程度の市民が日本大使館前に集まっているようにしか見えない。
他方、2005年の抗議行動はこれとはまったく異なっている。明らかに数千名を越える規模のデモや集会が多数開催された。中国政府にとってもこれは確かに脅威であったことだろう。
●海外のメディア
今回の中国のデモや抗議集会の規模が非常に小さく、影響力も限定されていることから、海外のメディアではまったくといってよいほど報道されていない。日本の報道を見ると、中国の反日感情が一気に高まるかのような印象を受けるが、現実はまったく違っているようだ。反日感情の高まりを報道する記事は、どの国のメディアでも見当たらないのだ。
●日本のメディアの情報操作
このような点から見て、日本の報道はほとんど情報操作の可能性がある。疑ってみるべきだろう。
●実際に起こっていること
しかし、まったく報道されていないが、非常に重要なことが起こっている。すでにメルマガに詳しく書いたので詳述は避けるが、いま3つのことが同時に起こっている。
1)中国の自由貿易協定の拡大の動きが一段落した。
2)自由貿易協定の参加国などを中心に、国債を相互に持ち合い、それをベースに人民元とその国の通貨とを直接交換する決済システムの開始。ロシアとマレーシアですでに実施。
3)日本との戦争を戦った共通の歴史体験を強調し、アジア地域やロシアとの地域的な連帯感を全面に押し出す。
この3つである。これらの動きを総合すると、1)自由貿易協定の拡大で確保した製品市場や資源、食料、エネルギーの供給地を、2)人民元を基軸通貨とする元決済圏としても確立し、3)これらの地域と第二次大戦の歴史認識を共有することで、地域的な統合性を形成するというような戦略に出ているように見える。
中国が自由貿易協定を拡大しているときは、中国は他の国々との矛盾をできるだけ回避する方向に動いていた。尖閣諸島の問題でもそうだ。日本との領有権の問題は一時的に棚上げし、ガス田の日本との共同開発に同意していた。
しかし、上記の3つの変化が示唆しているのは、中国は自らのサバイバル圏の形成の段階から、これを将来の中華経済圏として強く確保する段階に移行したように見える。政策の明らかなステップアップである。
そしてこれもメルマガですでに解説しているので詳述しないが、米国の将来の外交政策を予告する雑誌であるフォーリンアフエアー誌に掲載された論文では、アメリカは中国が東半球の覇権をとることを容認し、中国を、かつてのソビエトのようなアメリカの世界戦略の交渉相手として認めるとしている。
このように見ると、「この問題で日中両国が全面的に対立しているいまの状況は、ヒステリックな国民感情が作り出した一時的なものだろう」とする現在日本で行われている報道が示唆する見方は、大きく現実からそれているとしか言いようがない。
今回の尖閣諸島に対する中国の強い態度は、中国政府が国民の感情に配慮した結果ではない。明確な戦略に基づいた意図的な行動であると理解したほうがつじつまがあう。
ということでは、中国政府はこれまで以上に強硬な態度で尖閣諸島の確保をこれからも進めることだろう。いずれ書きたいと思うが、尖閣諸島は中国のサバイバル圏の重要は要素なのである。手放すことはないだろう。
●東南アジアの動き
一方、中国と領土問題を抱えているのは日本だけではない。ベトナムなど東南アジア諸国は、中国との間で南シナ海で同じような領土問題を抱えている。
24日、オバマ米大統領と東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国首脳らは、ニューヨークで会議を開き、中国と周辺国が領有権を争う南シナ海問題を念頭に、海洋の安全や航行の自由、紛争の平和的解決の重要性を再確認した共同声明を発表した。
これにより、南シナ海における権益確保の動きを強める中国に対し、米国がASEANと歩調を合わせ、関与していく姿勢を改めて示した。
中国の強硬な姿勢に対して脅威を感じた東南アジア諸国は、アメリカとの関係を強化することで中国に対抗する姿勢を見せている。
●中国のこれからの動き
いまのところ中国はこうした動きに目だった反応は示していない。しかし、これから次の2つの反応が予想できるのではないかと思う。
1)中国を市場としてASEAN諸国にいっそう開放する
今年の1月にASEANー中国自由貿易協定が締結され、中国との間で7000品目の製品が無関税か低関税になった。これをさらに広め、東南アジア諸国が中国市場に優先的にアクセスできるような配慮を行う。
2)歴史体験の共有とそれに基づく地域的連帯感の形成
上で述べたように、すでにロシアなどと行っている、日本という共通の侵略者に対して第二次大戦を戦った歴史的体験を強調し、地域的連帯感を形成し強化するやり方を東南アジアにも適用する。
ただし、これはあくまでも中国の外交戦略である。要するに、「第二次大戦の歴史体験の共有」を旗印にするということだ。したがってこれは、実際に歴史がどうであったのかということとはほとんど関係がないことに注意していただきたい。
アメリカの関与に対抗するため、中国がこれらの2つに方策を実施する可能性は高いように思われる。
●窮地に追い込まれる日本
もし上記のような方向に動き、そしてそれが一定程度の成功を収めるならば、日本は窮地に立たされることになる。日本は、アジア地域やロシア、そしてオセアニアなどで、中国が地域的な連帯感を形成するための格好のスケープゴートになりかねないのだ。地域共通の悪者としての日本というイメージである。
中国は、このような日本孤立戦略を武器にして日本にいっそう強い圧力をかけてくることも十分に予想される。
そして圧力がかかるほど日本はアメリカに対する依存を強めるが、アメリカはこれを契機に日本をいっそう収奪するという方向に出る可能性もある。
いずれにせよ、こうした状況になった場合、日本はこれまで経験したことのないような高度な外交的手腕が求められることだろう。
●いまなにが起こっているのだろうか?
これらのことを総合すると、いまなにが起こっているのかはっきりしてくる。今回の尖閣諸島の問題は孤立した問題はではない。それは、いま形成されつつある歴史的な流れの現れにほかならないのである。
●新しい国際的秩序、米中第2冷戦
中国のGDPが日本を抜いて世界第2位になることがはっきりした。中国の急速な経済的拡大に伴い、中国は安定した経済成長と、国としての生存に不可欠な資源、エネルギー、食料の供給地、ならびに製品市場を確実に確保して行かねばならない。
中国のこうした生存領域の拡大は、必然的に既存の世界秩序を脅かすことになる。欧米や日本の既得権益と衝突することは間違いない。特にアメリカとの衝突は第2冷戦の様相を帯びてくることだろう。
しかし、アメリカの衰退を考えると、高度な緊張をはらみながら、やはり中国をひとつの強大な軸としたような国際的な秩序が出現するのだろうと思われる。
尖閣諸島で発生した今回の問題そのものは、比較的に早期に沈静化する可能性がある。一時は日本への禁輸が実施されそうになっていたレアアースも、輸出再開の手続きが取られようとしている。
しかし、今後中国は尖閣諸島の領有権をこれまで以上に強く主張し、日本に圧力をかけてくることは間違いないだろう。
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