金融危機がインド・ムンバイテロを引き起こした
NHKもなかなか侮れない。11月末のインド・ムンバイの大規模テロに先立つ10月28日、「パキスタンの金融破綻の危機がテロを招くおそれがある」と警告するコラムを掲載した。
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下に引用する。
解説委員室ブログ:
「パキスタン、経済破綻の危機」
おはようコラムです。金融危機の影響が世界に広がる中、テロとの戦いの最前線に立つパキスタンも経済破綻の危機に直面し、過激派対策に影響が出ることが懸念されています。山内解説委員です。
Q1:パキスタンの状況はどれだけ深刻なのでしょうか。
A国家財政が破綻状態で、対外債務を返済できないいわゆるデフォルトの危機に直面しています。問題は資金が大量に海外に流出していることで、外貨準備高はわずか77億ドルと6週間分の輸入代金をまかなうのがやっとの状態です。原油や食糧の高騰に伴って政府の補助金が増えたのに加え、金融危機で資金の流出が加速したことが主な原因です。また通貨や株価が下落し、インフレも年率25%に達し、暮らしを直撃しています。
Q2:パキスタン政府はどんな対応を取っているのですか。
A経済が破綻すればイスラム過激派が台頭し大変なことになるとして、デフォルトを回避するため当面40億ドルの緊急支援を求めています。しかし、欧米諸国はどこも自国の金融危機への対応に追われ、手一杯の状態です。このため、ザルダリ大統領は今月、中国を訪問し、数10億ドルの融資を要請しましたが、断られてしまいました。パキスタンは今後2年間で100億ドルの資金が必要だとしており、最後の手段としてIMF・国際通貨基金に緊急融資を求めることを検討しています。
Q3:経済危機によって懸念されるのはどんなことでしょうか。
Aまず政情不安に拍車がかかる恐れがあります。仮にIMFの支援が得られたにしても国民に負担を強いる厳しい条件が付けられるため、不満や反発が高まり、抗議デモなど社会不安につながる恐れがあります。また混乱に乗じて過激派が台頭する恐れがあります。過激派はすでに全国でテロ攻撃を強めており、最悪の場合、核の管理が脅かされる事態も懸念されます。
Aデフォルトが懸念される一方で、国際社会がパキスタンを見捨てるはずはないという楽観論もあります。来月には日本などパキスタンを支援する友好国グループの会合が開かれる予定で、ここでどれだけの支援が表明されるかが1つの焦点です。ただアメリカはパキスタンに対し過激派対策を強めるようIMFを通じて厳しい条件を付ける構えで、パキスタンはこれに強く抵抗しています。金融危機が実際にパキスタンのテロとの戦いにどれだけ影響を与えることになるのか、国際社会の懸念が高まっています。
実はムンバイテロの直前、このコラムが書かれた2週間後の11/15、IMFはパキスタンに対し76億ドルの緊急融資を発表、24日には承認され即日実施された。
パキスタン政府が約束させられたのは1年間で財政赤字を半減、税収の1.5倍の引き上げ、燃料補助金の廃止、政策金利の引き上げ中央銀行からの政府借り入れの停止などだ。そしてIMFが表明した優先課題は、金融引き締めと緊縮財政による経済の安定と弱者保護だ。
しかし、引用したコラムにあるとおり、IMF=国際金融資本勢力が最も緊急性が高いと考える課題は、パキスタン政府による国内あるいは隣国アフガニスタンと通じたテロ組織の封じ込めだ。
経済破綻に陥ったパキスタン政府は、もはやこの圧力に対抗する力を持ち得ない。追いつめられたテロ組織は、日を待たず実施されるであろう掃討作戦に対し、最後の聖戦に打って出たのだろう。
そもそも、毎年6%を超える異常な経済成長率自体が、パキスタンを対テロ最前線基地として位置づけるための欧米の戦略によるものだ。首都カラチの証券取引所は、2003~06年、年間騰落率40%を誇るアジアで最大の収益率を誇る市場でもあった。しかし、それは国を売る果実として得た虚構の繁栄だったのだろう。
KSEは2008年9月の金融危機を境として、ほとんど市場機能を失ってしまった
金貸しによる一極支配の一端、そして武装勢力との力の均衡がほころび、多極化へ向かう中で起こったのが今回のムンバイテロであり、金融破綻が直接引き起こした悲劇であると言ってもよい。
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