2007年01月26日

「アメリカ以後」世界へのシナリオ~ロシア編~

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イラクの泥沼に陥ったアメリカをしり目にオリガルヒ(大富豪≒ロシア・ユダヤ実業家)退治

「アメリカ以後」世界へのシナリオ~ロシア編~
アフガニスタン侵攻 他の中央アジア諸国への対策 911 イラク侵攻・・・・アメリカの政策はすべてプーチンに有利に働いてきた・・・・
 
以下 田中宇の国際ニュース解説
「ロシアの石油利権をめぐる戦い 」より抜粋
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2001年9月に911事件が起きた後、アメリカは「テロ戦争」を開始し、テロ対策を共同で行うという名目で、それまで人権問題などで批判し続けてきたロシアや中国に対し、従来より寛容な態度を採るようになった。翌月、米軍がイラク侵攻した際には、プーチンは中央アジア諸国に米軍基地ができることを認めたため、米ロ関係はかなり好転した。プーチンが今につながるオリガルヒ攻撃の姿勢を強めたのは、アメリカがイラク侵攻した後に泥沼のゲリラ戦に入り、イラクの後始末をめぐってロシアやEUや国連などに頼らざるを得なくなることが予測されだしたのと時期的に一致している。
これに対してオリガルヒたちは、自分の会社の株の一部を欧米企業に売却して国際的な会社に変身させ、プーチンが乗っ取ろうとしても外交問題に発展するので難しくなる状態に置こうとした。オリガルヒが株式の売却を目指したのは、政治力が拡大する一方のプーチンに対し、自分たちの時代が終わりつつあると感じて売り逃げしようとした面もある。
オリガルヒは、こうした欧米の政治の仕掛けを知っているからこそ、マスコミを使ってプーチン攻撃を展開し、負けたらイギリスやイスラエルに亡命し、問題の国際化を試みたのだろう。一方プーチンもその仕掛けを知っていたから、アメリカの中枢でロシアを敵視しない国際協調派(中道派)が強くなるタイミングを利用してオリガルヒを攻撃したのだと思われる。
プーチンは、石油や鉱物資源などの大企業を外資に売却して「売り逃げ」しようとする他のオリガルヒの動きを次々に阻止するようになった。

強気のプーチンはオリガルヒだけでなく、欧米の石油会社がいったん受注を決めたロシア国内の油田の採掘権すら取り上げてしまう姿勢を見せている。ロシア政府は今年1月、すでにエクソンモービルなどアメリカの石油会社2社に発注すると決まっていたはずのサハリン油田の第3プロジェクト(サハリン3)の開発権を白紙に戻し、再入札すると発表した。
2つの鉱区からなるサハリン3の開発権は1993年に入札され、エクソンモービルやシェブロンテキサコが全体の3分の2の開発権を取得したが、それが撤回されてしまった。エクソンモービルは、すでに6000万ドルの探査費用をかけていたが、サハリン1プロジェクトでも採掘を受注しており、下手にプーチンに逆らってこちらまで無効にされては元も子もないので、白紙撤回を受け入れることにした。

プーチンは、国益に直結する石油など地下資源やマスコミなどの大企業に関し、信頼できないオリガルヒに犯罪の嫌疑をかけて経営者の座から追い落とし、企業を再国有化して、代わりにシロビキ系の経営者を置くことを画策するようになった。
このほか、石油パイプラインの敷設権を独占するロスネフチ社や、ロシア第2位の石油会社ルコイルなどの国有企業も、シロビキ系の企業となった。また軍事産業でも、プーチンの大統領就任後間もなく、兵器輸出を一手に握る国有企業としてロソボロン・エクスポート社が設立され、ソ連の遺産を受け継ぐ巨大な軍事産業を統合する中心的な存在となった。

サウジアラビアがロシアに接近していることも、プーチン政権を力づけている。911後、アラブ諸国をことさら敵視するネオコン的な考え方が強まったアメリカでは、ロシアからの石油輸入を増やしてサウジアラビアとの縁を切ろうとする動きがあり、ロシアはこの動きに乗って石油の対米輸出を増やし、サウジと対抗する姿勢を見せた。
だが、昨年9月にサウジの最高権力者であるアブドラ皇太子がモスクワを訪問し「チェチェン人の戦いは(テロであり)イスラム的ではない」と発言し、チェチェンで残虐な戦いを展開しているプーチンを支持した。サウジアラビアはかつてチェチェン人の対ロシアの戦いを「聖戦」として支援してきた経緯があり、アブドラの翻心は、チェチェン人を見捨てることで巨大な産油国であるロシアとの関係改善をはかるものだった。
アブドラは、ロシアが「イスラム諸国会議機構」(OIC)に加盟することを支持する姿勢を見せた。OICはイスラム世界では最大級の外交の場であり、アメリカに対して批判的な態度が強い。ロシアの加盟によって、ロシアとイスラム世界を結ぶ「非米同盟」の関係が強化されることになった。ロシアには2000万人のイスラム教徒がいるものの、多数派の宗教はキリスト教であり、イスラム教徒が少数派である国がOICに加盟するのは前例がない。
またサウジとロシアはこのとき、石油の国際価格を1バレル30ドル台の高い水準で高止まりさせておくことを談合したとも憶測されている。ロシアの石油は、パイプラインによる長距離搬送が必要であるなどコスト高なので、原油相場の高止まりはありがたいことで、この面でもサウジはロシアに恩を売り、ロシアとの戦略的な関係を強化することで、911以後アメリカに敵視される傾向が強まったことによる不安定さを解消しようとしたのだと思われる。

アメリカは、ロシア周辺の国々とのつき合いでも、うまくやっていない。アメリカは2001年秋のアフガニスタン侵攻に際し、中央アジアのいくつかの国々に米軍基地を置かせてもらった。中央アジア諸国にとっては、アメリカの力を借りてロシアの影響力を削げる良いチャンスで、ウズベキスタンの大統領などは「米軍基地は、必要ならいつまで置いてもらってもかまわない」と述べている。
ところがアメリカは、ウズベキスタン政府が国内の反政府的な人々の人権を十分に守っていないとして、これまで毎年出していた1億ドルの援助金を今年から出さなくなるかもしれない、と言い出している。
アメリカは他の中央アジア諸国に対しても同様の姿勢をとっている。このため、ウズベキスタンやカザフスタン、ウクライナなど、独裁傾向が強いいくつかのロシア周辺の国々は、アメリカへの接近をあきらめてロシアとの関係を再強化する方向に動き出している。これを「失策」とみるか「故意」とみるか、解釈の分かれるところだが、どちらにしてもプーチンに有利に働いている。

ロシア国民の大半はプーチンを「スターリン以来の強い指導者の登場」とみて支持している。世論調査によるとロシア国民の64%が「ソ連の崩壊は残念だった」と考えている。その多くは「ソ連時代のように世界と周辺諸国に対して強い態度をとれる国に戻ってほしい」と考え、プーチンがロシアを再び強い国にしてくれることを望んでいると思われる。
パウエルがモスクワでロシア批判を展開したのも、同様にロシア国民の反米意識を掻き立て、プーチンに対する支持を強化するための行為だったのではないか。いずれも、わざと「アメリカ以後」的な国際協調体制を作り出そうとする戦略に見える

List    投稿者 9143128 | 2007-01-26 | Posted in 09.国際政治情勢の分析2 Comments » 

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コメント2件

 こん | 2007.03.16 21:34

「一連のマスコミ不祥事報道は、国家による言論統制の布石では?」
を読みました。マスコミと国家とアメリカの間にかんでいる組織を忘れています。
それは、
『電通』
です。
森田縫合研究所のHPの「森田実の時代を斬る」の2月23・24日の稿にもありますが、マスコミ・新聞社を牛耳っているのは、紛れもない『電通』です。彼らは広告料を釣りにマスメディアを支配下においています。なおかつ、政治が小泉時代から、マスコミやネットを使った煽動政治化してくるにつれて、彼らは、その巨額な政治資金による受注で、その政治色の方向へと誘導しています。
 最近は、マスメディアの広告収入が減少傾向にあり、ペプシを代表とする大手企業が、ネットへとその軸足を変えつつあることを電通は認識しており、ネット支配を強める傾向にあります。
 この間、地上派デジタルやプロバイダー責任法ガイドラインなどの総務省の息のかかった政策に、彼らの戦略を相乗させようと企んでいるのは当然のことです。
 マスコミの不祥事は、そんなマスコミに見切りをつけた、電通とその背後のアメリカの大手広告代理店、その先の現政権と米国企業の影を認識させられます。
 マスコミの共認支配というより電通の共認支配と言い換えても過言でないと思います。
 

 hermes handbags apricot | 2014.02.02 17:01

hermes uk abrasives 日本を守るのに右も左もない | 一連のマスコミ不祥事報道は、国家による言論統制の布石では?

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