【世界の力を読み解く】追い詰められている英国(欧州)/円安を利用し脱米を進める日本
円安が止まる気配が見られない状況が続いています。一時は日中のドル売り(リンク)もあり円安に歯止めをかけるのかと思われましたが、止まることなく円安は続いています。徐々に日常生活に与える影響も大きくなってきています。
この円安ドル高の影響は日本と米国以外にはどのようなものがあるのでしょうか?今、日本や米国よりも政治が慌ただしく動いている国があります。それは英国です。今回はそんな英国の状況から今後の世界動向を考察していきたいと思います。
〇今英国では何が起こっているのか?
今年7月にジョンソン首相が、官邸でのパーティー疑惑で退陣を余儀されたことから始まりました。その後9月5日に党首選の結果が出て、リズ・トラスが党首に就任しました。彼女はリクライナ戦争で対ロシア強硬路線を取り、存在感を示したこともあり首相になりました。(ここまでは米国の意図に添っている人選に見える)トラス政権が本格的な政策として所得税の最高税額の引き下げ、法人税率の引き上げ凍結、銀行員の賞与の上限規制の撤廃などが盛り込まれました。
インフレ率が10%近くとなっている中での成長重視での経済を活性化、所得税の最高税額の引き下げによる金持ち優遇と政策はピンとこないものであり、世界の市場のひんしゅくを買い英国債の長期金利が危険水域の4%超まで急上昇。これは、ドルがポンドに流れる可能性があり米国としては見逃せない事態となりました。そこでトラス首相も早々(10月20日)に辞任となりました。
新首相のスナク氏はイギリス史上初めてのアジア系首相。大手投資銀行などで経験を積んだ金融財政のプロであり、スーパーエリートで富裕層。米国の意図を踏まえて政治を動かせる人材に挿げ替えたのだと思われます。
脱米路線に舵を切ろうとした英国ですがすぐさま米国からの指導が入ったのがこの間の英国の騒動の裏側だと推測します。
〇一方で脱米を進める日本
米国の意向を汲んだ政策といった意味では、欧州と並んで日本も同様なものであると思われますが、日本は英国と違った方向に向かっています。円安が止まらず物価の上昇は続いていますが、低金利を維持している日本。米国の意向になしにドルとの金利差を調整できない関係にあるとは思いますが、先日に日中でドル売りしたことから実は中国を後ろ盾としての動き代があるように思います。金利を上げることで円安の緩和になるといった意見もありますが実際には、金利を上げる事は負債高を増やすことになり自滅することになります。そのため現段階ではおとなしくしている日中。
円安が進むことで日本国内ではこれまで安く販売できていた海外産が、国産よりも高くなるという逆転現象が起こっています。わかりやすい事例で言うと、精肉においては安全という意味では日本製を買いたいけれども価格という面で海外産を購入していましたが、今後は海外産を購入する理由はなくなり国産品に移行していく事になります。エネルギーについてはロシアとの関係も進めており、円安の陰で確実に米国からの自立を推進しています。
〇脱米に成功した国々が台頭してきている世界の勢力図
今回は英国と日本の状況を比較してきましたが、結論としては英国に比べて日本は着実に米国からの自立に向けて進んでいる事かわかります。日本は既に米国から自立した中国やロシアといった関係を持ちつつも、米国の意向に沿った政策の中での抜け道を上手く利用して脱米を進めていることがわかります。
※日本との関係についてはまだ明確に掴めていませんが、サウジアラビアなどエネルギーを保有している中東諸国も脱米に成功し台頭してきている点は注目。
それに比べて英国をはじめとした欧州の動きは米国からの反感を買うような、直接的に市場を乱すような政策をとっています。このことからも切羽詰まっている事が想定されます。その根本にはエネルギーの高騰が与える影響が大きすぎるということがあります。これから本格的な冬に入る欧州にとってエネルギー価格の高騰は死活問題になります。すでに年初の5倍の価格になっています。
次回は、欧州のエネルギー事情について見ていきたいと思います。
by Satoshi
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