2008年05月11日

多極派VS一極派のせめぎ合い②

『田中宇の国際ニュース解説』の5月10日の記事「アメリカの覇権は延命する?」からの引用の続き。
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米政府、特に共和党政権は、米国民の意思ではなく、ニューヨークの資本家を意を受けて、こっそり多極化を進めてきた。ニクソンショックでは、先に多極主義者がドルを破壊し、その後イギリスが立て直したが、今回の金融危機では、3月にドルが破壊される直前の段階で、イギリスによる立て直し策が発動されている。

アメリカがドルの覇権を自滅させ、イギリスが日独も動員してドルを立て直す展開は、レーガン政権下の1985年のプラザ合意でも繰り返された。ニクソンやレーガンのアメリカは、ドルが単独で持っていた通貨覇権の一部を日独にも分譲し、経済覇権の多極化を図ろうとしたのだろうが、日独は固辞し、むしろイギリスがG7の前身のG5(米英日独仏)を作ってアメリカの単独覇権を押し売り的に立て直すのに協力した。

覇権は「争奪されるもの」というのが「通説」だが、現実には覇権は、ババ抜きのババのように、便利なカードだが誰も欲しがらない。覇権国になるより、イギリスやイスラエルのように覇権国を裏から操作するか、もしくは日本のように受動的にぶら下がり続けた方が便利である。覇権を欲しがるのは、欧米から敵視され続けるロシアやイランぐらいしかない。

アメリカの多極主義者は、金融危機をドル崩壊に発展させ、同時に中東で大戦争を誘発して、イランとサウジアラビアなどペルシャ湾岸産油国(GCC)を反米で団結させ、産油国に通貨のドルペッグをやめさせ、世界の通貨体制を、ドル単独から、ドル・ユーロ・産油国通貨・中国人民元(プラス日本円?)という多極体制に転換させようとしたのかもしれない。しかし、金融危機はイギリスによって抑止され、中東大戦争はイスラエルが拒否したため、アメリカの覇権が維持されている。

昨年から今年にかけてアメリカの金融システムは急速に崩壊し、最近まで、世界の通貨や政治覇権の体制は多極化していくのだろうと感じられた。しかし最近、イギリスやイスラエル、米国内などの、米英中心主義の勢力の粘りの力は意外と強いと感じられるようになった。1970年代や80-90年代と同様、多極主義者の圧勝にはならず、一部は多極化が実現するが、一部は米英中心の世界体制が延命し、折衷的な状態が続く可能性が出てきた。

1970年代には、ドルの覇権は維持され、米日独の「三極委員会」は作られたが機能しなかった。だがその一方で、中国を敵から味方に転換し、中国の経済発展を実現するという多極主義者の戦略は実現し、1979年の米中国交正常化と、その直後からの改革開放経済、そして近年の中国の経済大国化へとつながった。

1980-90年代には、イギリス好みの冷戦を終わらせてロシアを市場経済化したものの、その後のロシアはイギリスが支援したオリガルヒ(新興財閥)に牛耳られ、2000年にプーチンが出てきてオリガルヒを退治するまで、混乱の「失われた10年」となった。中国も、1989年の天安門事件後、イギリス好みの人権外交の餌食になって何年も制裁され、中国を大国化する多極主義者の野望は遅延した。冷戦後の世界は、米英中心の金融覇権体制となった。

【金融界だけならバブル再発で救済できるが 実体経済の崩壊を見ると延命は困難】実体経済までを勘案すると、延命策はあまり長続きしそうもない。米国民の家計は大赤字で、雇用も縮小している。家計の赤字は20年かけて増えてきたもので、国民の消費を基盤とする米経済は、国民の家計の赤字増大に支えられてきた。今、米国民はローン破綻が増え、これ以上赤字を増やせない状態だ。米経済の不況は短期間では終わらないだろう。

不況が長引くと、アジア諸国は対米輸出に頼れなくなる。外貨準備としてドルを持つ必要性も減る。ドルは刷りすぎでインフレがひどくなるばかりで、中長期的には、中国やアラブ産油国(GCC)はドル依存を断ち切り、通貨の独自性を高めていくしかない。GCCは2010年に通貨統合し、ドルペッグを止める予定になっている。中長期的には、世界の通貨体制は多極化の方向にある。

田中宇氏の言う多極派、その背後にいる国際金融資本勢力がロックフェラーであり、一極派の背後にいる勢力がロスチャイルド。つまり、ドルを暴落させようとしているのがロックフェラーたちであり、それを阻止しようとしているのがロスチャイルドたち。概ねそういう対立の構図であろう。では、どちらに軍配が上がるのか?
5月10日の記事「基軸通貨の成立構造と弱点構造」にもあるように、基軸通貨体制には決定的な弱点がある。基軸通貨にはその国の生産力を超えた価値を付与されるがゆえに、貿易競争に敗北し貿易赤字が膨らみ、生産力は低下してゆく。従ってドル基軸通貨体制がもたないことは明らかである。この構造から考えると、多極派VS一極派の争いは、多極派の軍配があがる。
加えて両者の力の基盤を考えてみる。藤井昇氏の『ロックフェラー対ロスチャイルド』(徳間書店刊)を紹介したサイト「ロックフェラー 対 ロスチャイルド説の研究」によれば、
ロスチャイルド(と連携するジェイ・ロックフェラー)は、アメリカのマスコミをほぼ掌握している。あるいは、FRBをはじめとする金融世界でも優勢なようである。それに対して、ディビッド・ロックフェラー陣営は、石油や食糧、アメリカの軍事力、さらには主要製造業を握っているようである(日本のマスコミ・政界も)。だからこそ傘下に多国籍企業群を擁し、グローバリズムを展開する。多極化を推進するのはディビッド・ロックフェラー陣営だと考えて間違いない(彼らは、後進国市場の成長力に期待しており、アメリカ一国などに固執していない)。
両者の力の基盤を考えても、石油資源・食糧・アメリカの軍事力や主要な製造業、つまり実体経済を握るディビッド・ロックフェラーに軍配があがる。実際、2004年頃から始まった石油・食糧の高騰はロックフェラーらによる買い占めによるものだろう。
多極派(ロックフェラーら)と一極派(ロスチャイルド)のドルを巡るせめぎ合いという視点は、今後の市場の動向を読み取る上で欠かせないであろう。
(本郷猛)

List    投稿者 hongou | 2008-05-11 | Posted in 09.国際政治情勢の分析5 Comments » 

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