【世界の力を読み解く】ドル基軸通貨の破綻?中露が仕掛ける新基軸通貨の世界~
日米豪印の4カ国(クアッド)首脳会合が今月24日に行われました。リンク
この首脳会合で明らかになったのは、親米のドル派と非親米の新基軸派の溝がこれまで以上に深くなっていることだと思っています。
首脳会合では、ロシアへの非難をインドは拒否。そしてその裏では、ロシア軍・中国軍が合同で日本周辺に爆撃機を周回させています。(リンク)どちらも日本を舞台に、同日に、各国の思惑がうごめく様子が明らかになった事象かと思います。
いま、世界勢力図は金融勢力と実物勢力の二分化。これまでの欧米諸国主導のドル基軸通貨に対して、中露をはじめとした反ドル勢力が描く新世界勢力図を読み解いていきます。
■世界勢力図のいま -西側諸国とその他諸国の溝が深まっている
世界はいま、米国を筆頭とした”金融”を牛耳っていた欧米諸国勢力と、ロシアを筆頭とした”資源”を持つユーラシア諸国勢力、このふたつの溝がより深まっていることが最大の特色です。
この二分化の中、ユーラシアエリアでは、①日本や韓国、豪州といった親米勢力は米国と歩み、②露と仲良くせずとも脱米国路線で目的が一致している中国、③バランス外交で金融勢力にも露にも適度な距離をとる印度、といった勢力図が顕在化してきています。
ただ、中国の台湾問題への弱腰の牽制(リンク)など、世界の影響力が低迷している米国としては、ユーラシア圏の日・韓・豪を必ず米国側に結束させておきたい。大統領選が近づいたいま、世界制覇力の堅持を国民へアピールしたい思惑もある。今回のバイデンの訪日・韓が意味しているのは、この国民アピールと各国の親米の意思確認だったことがわかります。
米国の制覇力は失われつつあり、それの裏を返すように、世界勢力の塗り重ねに打って出た露国。
今回の戦争の本当のテーマは、ドル基軸通貨を元にした米一色の金融世界の転換ではないでしょうか。
■ドル基軸通貨圏+ユーロ圏 対 実物経済圏
合わせて、注目しておきたいのは、この世界勢力に対するドル基軸通貨についてです。
ビジネス知識源<458号:日曜増刊:インフレ率と金利と世界の株価>
2022年5月15日: ドルの基軸通貨体制の揺らぎ【3つの基軸通貨】中東の産油国がロシア側につき、1973年から49年間のペトロ・ダラー制は終焉。2023年、24年からは、複数の基軸追加体制へ向かう。
・ドル基軸通貨圏=米国、英国、日本、韓国、カナダ、豪州
・ユーロ圏=欧州19カ国(ドル圏とユーロ圏の人口は世界の20%)
・金コモディティ・リンク通貨圏=ユーラシア+中南米+アフリカ(金コモディティ・リンク通貨圏は、世界人口の80%)米国は、金コモディティ・リンク制を潰すため、ウクライナに、200億ドル(2.6兆円)の軍事支援→目的は、ロシアの体制転換とプーチンの失脚。2020年代以降のGDPの増加率では、現在は世界のGDPの50%の、金コモディティ・リンク通貨圏が高い(年4%~5%程度)。ドル基軸通貨圏、ユーロ通貨圏の成長は2%台。世界経済の帰趨は、ウクライナ戦争を契機に、決したように見えます(気配)。
(1)貿易黒字国が多い、金コモディティ・リンク通貨は上昇し、
(2)赤字国が多い、ドル基軸通貨圏、ユーロ通貨圏の通貨は下がり、
(3)株価と国債価格はともに、2022年バブル崩壊→金融危機から財政危機に向かっていくでしょう。・上がる通貨は、金コモディティ・リンク通貨(人民元、ロシアルーブル、インド、産油国通貨、スイスフラン、金)
・金コモディティ・リンク通貨に対して、下がる通貨はドル、ユーロ、円、韓国ウォン、シンガポール・ドル。ただし、相場は、一直線の変化(上昇、下落)ではない。
大きくは、「ドル基軸圏+ユーロ基軸圏」と、「金兌換+自国通貨による反ドル基軸圏」の二極化の構図ができあがってきています。
事実、資源を持つロシアはドルやユーロではなく、ルーブル決済に向かい、ユーロ圏もそれに応じている。(対ロシアへの経済制裁も、一時的なルーブルの転落はありながらも、すぐに回復。大した影響がなかったことが明らかになっただけでした)
・EU諸国、露産ガスのルーブル支払いに同意 エネルギー危機懸念=ワシントンポスト(SPUTNIK 5/26)
・欧州議会、ロシアに対する制裁の無効性を宣言=独メディア(SPUTNIK 5/26)
今回のウクライナ戦争の戦況が表しているのは、★「ドル基軸の衰退」から、露をはじめ、”実物”を持つ国家が制覇力を持つことです。
はたして、米国に結束を迫られている日本は、このままドル基軸と歩みを進めていいのか。
次回、ドル基軸から、世界の金融はどのような転換を迎えているのか、読み解いていきたいと思います。
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