2009年04月04日

日本の原発導入の歴史6 ~原発と温暖化

「2006年3月末現在、日本で稼働中の原子力発電所」
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(「経済産業省」http://www.chubu.meti.go.jp/hokuriku-plaza/quiz/genshi/q2/kaisetu.html
より転載)

atomsさんのなんで?にできる限りお答えしながら、「原発は温暖化対策(Co2削減)になるのか」という視点で、Co2排出量に関する疑問と問題点を挙げていきます。
燃料のウランを作り出すためにどれだけのCo2排出があるのか?
発電所(100万kW時)を一年間運転するのに必要な燃料は、石油なら140万トン、石炭なら220万トン。それに対して、濃縮済みのウランの場合は30トンです。それだけ見たら、ウランの方が圧倒的に効率良く見えます。ところが・・・
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燃料ペレットは燃えるウラン(核分裂を起こしてエネルギーを出すウラン)であるウラン235、約3%と燃えない(核分裂しない)ウラン238、約97%からなっています。
 天然のウラン鉱石中の、ウラン235とウラン238の割合は0.7%と99.3%です。そのため燃料ペレットを作るには、ウラン235の濃度を高くしなければなりません。これを濃縮といいます。
 30トンの燃料を作るために、ウラン残土が約240万トン、鉱滓(低レベル放射性廃棄物)が13万トンでると計算されています
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(写真含め、「よくわかる原子力」http://www.nuketext.org/uranium.htmlより転載)

原発によるCo2発生のデータで、ウラン残土や鉱滓の処分に掛かるエネルギーおよびCo2発生に触れたものはありません。処分に莫大な費用が掛かるため、放置されているからです。(放置されているがゆえに、放射能汚染源となっている事実は一旦置きます)

したがって、計253万トンもの掘削が必要なウラン鉱石の方が効率が良いというのは、誤魔化しです。日本の場合は、輸送に掛かるエネルギー(とCo2量)も考慮しなくてはなりませんが、国内の石炭を使うのであれば、ウラン鉱石を採掘し濃縮するよりはるかに経済的であり、Co2発生量も少ないはずです。

さらに、ウラン燃料は、ウラン235の濃度を高めるため濃縮しなければなりません。濃縮には、ガス拡散法、遠心分離法、レーザー原子法、レーザー分子法、エアロダイナミック法、化学法濃縮法、プラズマ分離法、電磁濃縮法といった方法がありますが、いずれも大量の電力を使うものであり、当然ながら大量のCo2発生を伴います。(参考:ウィキペディア

すなわち、ウランの燃料ペレットは石油の固まりであり、製造する際、大量のCo2発生を伴うものなのです。

放射性廃棄物の処理はどうなるのか?

「処分ピット内への廃棄体定置状況」
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(「原子力環境整備促進・資金管理センター」http://www.rwmc.or.jp/library/pocket/low-level/disposal/2-b1.htmlより転載)

原発のゴミは、青森の六ケ所村へ持って行っています。全部で三百万本のドラム缶をこれから三百年間管理すると言っていますが、一体、三百年ももつドラム缶があるのか、廃棄物業者が三百年間も続くのかどうか。

もう一つの高レベル廃棄物、これは使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出した後に残った放射性廃棄物です。日本はイギリスとフランスの会社に再処理を頼んでいます。去年(一九九五年)フランスから、二八本の高レベル廃棄物として返ってきました。これはどろどろの高レベル廃棄物をガラスと一緒に固めて、金属容器に入れたものです。この容器の側に二分間いると死んでしまうほどの放射線を出すそうですが、これを一時的に青森県の六ケ所村に置いて、三〇年から五〇年間くらい冷やし続け、その後、どこか他の場所に持って行って、地中深く埋める予定だといっていますが、予定地は全く決まっていません。余所の国でも計画だけはあっても、実際にこの高レベル廃棄物を処分した国はありません。

(「原発がどんなものか知ってほしい」http://genpatsu_shinsai.at.infoseek.co.jp/hirai/pageall.htmlより転載)

プルトニウムの(放射能)半減期は24000年と言われています。(2千4百年じゃないですよ、2万4千年です)一体誰が24000年先まで責任を取れるのでしょうか?子々孫々にわたって毒性の強いゴミを押しつけているのが原発です。そこまで管理を続けるために発生するCo2については、誰にも計算できません。したがって計上もされていません。

40年後の建替え問題はどうするのか?

放射能だらけの原発を無理やりに廃炉、解体しようとしても、造るときの何倍ものお金がかかることや、どうしても大量の被曝が避けられないことなど、どうしようもないことが分かったのです。原子炉のすぐ下の方では、決められた線量を守ろうとすると、たった十数秒くらいしかいられないんですから。
 机の上では、何でもできますが、実際には人の手でやらなければならないのですから、とんでもない被曝を伴うわけです。ですから、放射能がゼロにならないと、何にもできないのです。放射能がある限り廃炉、解体は不可能なのです。

 放射能まみれになってしまった原発は、発電している時と同じように、水を入れて動かし続けなければなりません。水の圧力で配管が薄くなったり、部品の具合が悪くなったりしますから、定検もしてそういう所の補修をし、放射能が外に漏れださないようにしなければなりません。放射能が無くなるまで、発電しているときと同じように監視し、管理をし続けなければならないのです。

(「原発がどんなものか知ってほしい」http://genpatsu_shinsai.at.infoseek.co.jp/hirai/pageall.htmlより転載)

原発のゴミ同様、半減期24000年のプルトニウムに汚染された原子炉を、いつまで監視し続けなければならないのでしょうか?「エネルギー総合工学研究所」のデータ(http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data5007.html)に、そのような条件下でのCo2発生が見込まれていないことは明らかです。

ところで、原発の電気は安いと言われていますが、むしろ電気事業者の経営を圧迫しているようです。

『公式』に国から発表されている原子力発電の発電単価(kWh当たりの発電原価)は、5.9円/kWh(資源エネルギー庁)ということになっている。これに対して火力発電の発電単価は6.4~10.2円/kWhである。単純に考えると、原子力発電の比重が大きくなるほど、電力会社の経営状態は良くなるはずである。

 ところが、現実には、電力会社の原子力関連の支出が、経営を圧迫していることを認めざるを得ないところまで来ている。例えば、電気事業連合会によると、 40年間の使用済み核燃料の国内再処理費用が約16兆円になるという。その内、約7兆円は電気料金に上乗せして徴収(電気料金の引き上げ)、残りの約9兆円については財源が未定であり、電事連としては、この約9兆円を電気事業へ新規参入する企業や国税からの拠出で賄いたいとしている。

(「「環境問題」を考える」http://env01.cool.ne.jp/ss02/ss022/ss0225/ss02251.htm#n022より転載)

原発の電気が高コストだということは、石油に支えられた工業社会においては、それだけ石油を使っている可能性が高い、ということでもあります。

さらに、原発の維持管理費用も尋常ではありません。

 稼動中の原発で、機械に付いている大きなネジが一本緩んだことがありました。動いている原発は放射能の量が物凄いですから、その一本のネジを締めるのに働く人三十人を用意しました。一列に並んで、ヨーイドンで七メートルくらい先にあるネジまで走って行きます。行って、一、二、三と数えるくらいで、もうアラームメーターがビーッと鳴る。中には走って行って、ネジを締めるスパナはどこにあるんだ?といったら、もう終わりの人もいる。ネジをたった一山、二山、三山締めるだけで百六十人分、金額で四百万円くらいかかりました

(「原発がどんなものか知ってほしい」http://genpatsu_shinsai.at.infoseek.co.jp/hirai/pageall.htmlより転載)

そもそも耐用40年という数値も誤魔化しです。「原子力は本当に安い?」http://www.nuketext.org/yasui_cost.htmlをお読みください。

燃料確保、安全対策、廃棄物処理といったあらゆる面で、原発は火力発電所を上回る手間と費用が掛かり、何よりも健康被害の可能性が高い。ところが、火力発電所では可能な損害保険(自動車の自賠責保険に相当)も、原発では掛けることができず、国家が尻拭いすることになっている。そうした目に見えない費用、目に見えないCo2発生を見ないことにして推進されようとしているのが、原子力開発の現状のようです。

次回は、エネルギー収支という視点から、原発の問題点と温暖化について、もう少し掘り下げたいと思います。

List    投稿者 blogger0 | 2009-04-04 | Posted in 02.アメリカに食い尽される日本4 Comments » 

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コメント4件

 unimaro | 2009.07.17 20:33

お疲れ様です。
いつも興味深いエントリで勉強させていただいています。
どうもありがとうございます。
今回も非常に興味深く、開国から日本が餌食になっていることがよくわかります。
鎖国ほど我が国を守っていた政策はないようですね。

 散策 | 2009.07.18 21:44

【総選挙】保坂展人さん(杉並)戸倉多香子さん(山口)の激進を期待します

昨日、他のかたのブログで与党議員のかたの演説を拝見していて、「白紙委任」という言葉に反応してしまいました。こんな民主党に白紙委任ができるのか、という趣旨です。

 tama | 2009.07.18 22:18

 司馬遼太郎は、山本権兵衛を、日露戦争を勝利に導いた海軍を一人で作り上げた(薩摩出身なのに、海軍の薩摩閥を解体し近代化を成し遂げた)と高く評価しています。
 海外からのリーク情報で、首相を辞任させられたというのは、それだけ実力を恐れられたのでしょうね。

 ぱふぅ家のホームページ | 2009.10.26 21:37

西暦1913年 – 大正政変

1913年、尾崎行雄を旗頭に護憲運動が高まり、第三次桂内閣が総辞職する。民衆の力で内閣が倒れたのはこれが初めてのことで、大正政変と呼ばれる。