2007年08月26日

郵政民営化とは何だったのか?アメリカの思惑を法律から読む

先の参議院選が、2006年衆議院選の自民圧勝から反転し、民主党の圧勝となった事は記憶に新しいところです。今回の選挙では、年金問題や安倍政権のスキャンダルが焦点となりましたが、2006年の郵政民営化選挙は今や人々の記憶から忘れ去られようとしているかのようです。
しかし、郵政民営化は着々と進行し今年10月1日にその第1弾が開始されます。
郵政民営化はアメリカの思惑によって、行なわれたことは間違いなく、民営化により340兆円ともいわれる国民の資産がアメリカによって蹂躙されるのではといった、危惧は拭いきれません。
従来これらの資産は日本国債を始め多くが国内向けに投資されていました。
ではアメリカは具体的にどのようにして、340兆円もの資産を手にしようとしているのでしょうか?
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これを明らかにする前に、郵政民営化がどのような手順を踏んで行なわれるのかをざっと押さえてみたいと思います。リンク
当面日本政府が100%出資する持ち株会社「日本郵政株式会社」の元に郵便局、郵便事業、郵貯、簡保の4事業会社に引き継がれ、2017年には郵貯銀行と簡保生命保険会社が完全民営化されるという2段階構成となっています。
『340兆円もの資産は、新会社設立以前の既契約分が大部分を占め、この既契約は民営化以降「独立行政法人郵便所金・簡易生命保険管理独立機構」に引き継がれ、民営化されるにもかかわらず100%政府保証されることになっています。
こられのことから、当面アメリカが狙っているのは、この独立機構にあるのではと考えられます。

ここで疑問。100%政府保証される巨額の資産をどうやったらアメリカがネコババ出来るのか?
そこでこの「独立行政法人郵便所金・簡易生命保険管理独立機構」の設立根拠法を調べてみることにします。
独立行政法人郵便所金・簡易生命保険管理独立機構法

第十四条  機構は、通則法第三十条第一項に規定する中期計画(第四項において「中期計画」という。)に、次に掲げる事項を定めるものとする。
一  郵便貯金資産の運用計画
二  簡易生命保険資産の運用計画
2  前項第一号の郵便貯金資産の運用計画は、前条第一項第一号並びに第二項第一号及び第二号の業務並びにこれらに附帯する業務(以下「郵便貯金管理業務」という。)の適正かつ確実な実施を目的とし、市場に及ぼす影響を少なくしつつ、確実で有利な運用となるように定めなければならない。
3  第一項第二号の簡易生命保険資産の運用計画は、前条第一項第二号の業務及びこれに附帯する業務(以下「簡易生命保険管理業務」という。)の適正かつ確実な実施を目的とし、市場に及ぼす影響を少なくしつつ、確実で有利な運用となるように定めなければならない。
(略)

2項及び3項にある
確実で有利な運用となるように定めなければならない
に着目。
「確実で有利な運用」とは何か?従来郵貯、簡保資金の多くは日本国債を始め国内向けに投資されていたことは前にも書きました。これは必ずしも高利回りの目先投資をしていたというわけではなく、大局的に日本に必要とされる部分への投資という政治的意味合いも含まれていたと理解しています。しかしこの条文によって、より「有利」な投資先を探さなければならない事が法的に位置づけられたと言ってもよいでしょう。
次に郵貯、簡保の運用方法(投資先)を規定する条文です。これは郵貯と簡保で異なります。
少しややこしいので補足しますが、
「次の方法による場合を除くほか、郵便貯金資産を運用してはならない。」
とあるのは、
「ここに記載されている内容以外では運用してはならない。」
という意味です。
まずは郵貯から

(郵便貯金資産の運用)
第二十八条  機構は、次の方法による場合を除くほか、郵便貯金資産を運用してはならない。
一  整備法附則第五条第一項の規定によりなおその効力を有するものとされる旧郵便貯金法第六十四条の規定による預金者に対する貸付け
二  次に掲げる債券(その元本の償還又は利息の支払が外国通貨をもって行われるものを除く。)の売買
イ  国債
ロ  地方債
ハ  政府保証債(その元本の償還及び利息の支払について政府が保証する債券をいう。次条第三号チにおいて同じ。)のうちロに掲げる債券に該当するもの以外のもの
三  金融機関(銀行、農林中央金庫、商工組合中央金庫又は全国を地区とする信用金庫連合会をいう。次条第三号ホ、第四号及び第五号において同じ。)への預金(外貨預金を除く。)
四  信託会社(信託業法(平成十六年法律第百五十四号)第三条又は第五十三条第一項の免許を受けたものに限る。次条第十号において同じ。)又は信託業務を営む金融機関(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(昭和十八年法律第四十三号)第一条第一項の認可を受けた同項に規定する金融機関をいう。同号において同じ。)への信託のうち前二号に掲げる方法により運用するもの
2  機構は、前項第三号に掲げる方法により郵便貯金資産を運用するときは、総務省令で定めるところにより、担保を徴しなければならない。ただし、当該預金の額その他の事情を勘案して総務大臣が支障がないものと認めて承認したときは、この限りでない。

二号にて外国通貨を持って行なわれる国債の売買は禁止されていますが、三号にて金融機関への預金はOKとされていますので、迂回融資が可能です。
次に簡保の場合

(簡易生命保険資産の運用)
第二十九条  機構は、次の方法による場合を除くほか、簡易生命保険資産を運用してはならない。
一  保険契約者に対する貸付け
二  第十八条第一項の規定により機構が業務を委託した生命保険会社への預託
三  次に掲げる有価証券その他の資産の売買
イ  国債(証券取引所(証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第十六項に規定する証券取引所をいう。リにおいて同じ。)が、定款の定めるところにより、国債について、債券先物取引のため、利率、償還の期限その他の条件を標準化して設定した標準物を含む。)
ロ  法律の定めるところにより、予算について国会の議決を経、又は承認を得なければならない法人の発行する債券
ハ  地方債
ニ  特別の法律により設立された法人(ロに規定する法人を除く。)で、国、ロに規定する法人及び地方公共団体以外の者の出資のないもののうち、特別の法律により債券を発行することができるものの発行する債券
ホ  金融機関が発行する債券(次条において「金融債」という。)
ヘ  社債で政令で定めるもの
ト  特定社債(資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第七項に規定する特定社債をいう。次条において同じ。)で政令で定めるもの
チ  政府保証債のうちロからトまでに掲げる債券に該当するもの以外のもの
リ  外国政府、外国の地方公共団体又は国際機関(ヲ及び次条において「外国政府等」という。)の発行する債券その他外国法人の発行する政令で定める債券(証券取引所が、定款の定めるところにより、外国政府の発行する債券について、債券先物取引のため、利率、償還の期限その他の条件を標準化して設定した標準物を含む。同条において「外国債」という。)
ヌ  貸付信託の受益証券
ル  法人が事業に必要な資金を調達するために発行する約束手形で総務省令で定めるもの
ヲ  外国政府等又は外国法人の発行する証券又は証書でルに規定する約束手形の性質を有するもの
四  金融機関への預金
五  第三号に掲げる方法により取得した債券であって政令で定めるものの金融機関その他政令で定める法人に対する貸付け
六  債券オプション(当事者の一方の意思表示により当事者間において債券(第三号イ及びリに規定する標準物を含む。)の売買取引を成立させることができる権利又はこれに類する権利であって、政令で定めるものをいう。)の取得又は付与
七  先物外国為替(外国通貨をもって表示される支払手段であって、その売買契約に基づく債権の発生、変更又は消滅に係る取引を当該売買の契約日後の一定の時期に一定の外国為替相場により実行する取引(金融先物取引法(昭和六十三年法律第七十七号)第二条第六項に規定する金融先物取引所の開設する市場において行われる取引又はこれに類する取引であって、政令で定めるものに該当するものを除く。)の対象となるものをいう。)の売買
八  通貨オプション(当事者の一方の意思表示により当事者間において外国通貨をもって表示される支払手段の売買取引(前号の政令で定める取引に該当するものを除く。)を成立させることができる権利をいう。)の取得又は付与
九  コール資金の貸付け
十  信託会社又は信託業務を営む金融機関への信託。ただし、運用方法を特定するものにあっては、次に掲げる方法により運用するものに限る。
イ  第三号から前号までに掲げる方法
ロ  投資顧問業者(有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律(昭和六十一年法律第七十四号)第二条第三項に規定する者をいう。)との投資一任契約(同条第四項に規定する契約をいい、同項に規定する投資判断の全部を一任することを内容とするものに限る。)の締結

こちらはほぼ何でもアリです。アメリカ国債への投資、民間外資ファンドへの直接投資etc・・・ほぼどこにでも投資できる事となっています。ここがミソです。
おそらく中心となるのは、利回りの高いアメリカ国債への投資や外資ファンドへの投資となるのではないでしょうか。
で、アメリカ国債の買い支えをやって、結局踏み倒され、外資ファンドへ投資された資金を元手に外資は日本企業を買収。さらに直近のアメリカ発の金融不安を見ればゾッとします。
金融破綻すれば当然投資資金は回収できなくなります。しかし一方で日本政府はその責任において100%政府保証(尻拭い)しなければならないというとんでもない、仕組みなのです。そのお金は一体どこにあるのでしょうか?もちろん日本国民の税金しかないでしょう。

アメリカのためにお金を使って、問題が発生すれば、日本人自らケツを拭かなければならないという、理不尽。
さらに最終的には10年後の完全民営化時に、独立機構が投資したお金を元手にした外資が、郵貯銀と簡保を買収するなどという笑うに笑えない、話もありえる。
10月1日から始まる郵政民営化第一弾。もう迫っています。

List    投稿者 kichom | 2007-08-26 | Posted in 02.アメリカに食い尽される日本No Comments » 

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