2008年10月25日

『近代国家成立の歴史』6 自治権を獲得したオランダ商人 

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『近代国家成立の歴史』5 
からの続きです。
教会支配から逃れ、富の蓄財が可能となった新たな商人達(ピューリタント)は、遂に・・・、国家をつくるようになります
その国家とは、1581年に誕生した『ネーデルラント連邦共和国』(以下共和国)です。この共和国は、現在のオランダとベルギーに渡り建国されますが、この前後の時代を見ると、
1531年に世界初の「証券取引所」(ベルギー・アントワープ)
1602年に世界初の「株式会社」(オランダ東インド会社)
が誕生しており、商人の台頭と共に、今日の資本主義社会の基礎が築かれた時期にもあります。
では、どのようにして商人が国家をつくり上げたのかを見ていきましょう
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中世ヨーロッパでは、数回に渡る十字軍遠征により、都市間の交通が整備されたことで、交易と商業圏が拡がっていきます。特に、大きな商業圏を形勢するのが、地中海商業圏(ベネチア)と北欧商業圏(ハンザ)です。
共和国の前身であるフランドル地方(現在のオランダ南部・ベルギー西部)は、この2大商業圏とライン河流域に生じる商業圏の結節点であり、「中世の世界市場」と呼ばれるほど交易が盛んでした。
交易の発展と共に、多くの商工業者が集まり、フランドル地方の地場産業であった毛織物生産をより一層向上させることになります。フランドル地方の毛織物は、イギリスから原材料の羊毛を買い取り、フランドルで加工・染色を施し生産されていたため、イギリスとの交易も非常に盛んでした。
14世紀になるとイギリスと対立関係にあったフランスが、フランドルの毛織物生産を狙い進出し始めます。しかし、イギリスはこれを阻止しようと、フランドル地方を巡り、両国で100年戦争(1337~1453年)が勃発します。
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この英仏100年戦争の結果、フランドル地方をフランス系のブルゴーニュ公家が治めることになりますが、毛織物生産で成功した商工業者達(特に大商人)は、領主による課税など封建的束縛に反発し、自治権を求めるようになります。

領主にとって都市は課税財源であったから、都市は自治権を獲得するために金銭で領主を買収したり、自治を認めない領主に対して武力闘争によるなどして自治権を認めさせるなどした。こうした運動の結果、都市は領主からの自治承認契約を文書化した特許状を得て自治権を獲得して自由都市となり、封建的支配から解放されて独自の都市法をもって都市を支配した。
自治権を獲得した都市では、その市民が市政を運営した。しかし、全ての市民による民主政が行われたわけではなく、有力商人と親方達によって構成される市参事会などの機関が都市法を制定し、その都市法によって各都市独自の支配が行われた。http://www.sekaishi.com/mailmag/sekamo/51.html

中世において、都市の自治権を獲得する動きは11世紀頃から各地域で起こっています。
この動きの中心である大商人達は、十字軍遠征による市場拡大と、宗教改革による富の蓄財が可能となったことで誕生します。具体的には、遠隔貿易により、一方から買った安価な物品を希少品として他方に高額に売ることで、莫大な差益を稼ぎます。
そして、その資本力を用いて、遂には領主から特権と身分を買収します。
自治権を獲得した都市において大商人達が特権的身分となることは、一部の都市においては、
既に封建社会から資本主義社会へと転換していたことを意味します。
後に続く、商人による国家建国の素地がここでつくられていることがわかります。
■参考
十字軍と都市の発達
stockstation

List    投稿者 ruiblog | 2008-10-25 | Posted in 08.近現代史と金貸し2 Comments » 

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コメント2件

 しのぶ | 2009.01.27 17:09

紙幣って、「金の裏づけ」がないと共認されないって何となく思い込んでましたが、こうやって見ると、非常事態とかなんとか言えば、金の裏づけを失くすことも意外と簡単に(しょっちゅう)やってるんですね。
やっぱり、「共認さえ成立すれば」ってことなんですね。

 kirin | 2009.01.31 22:55

しのぶさん、コメントありがとうございます。
そうなんですね。
社会を秩序化・統合するうえでの評価指標値としてみんなが共認すれば、「金の裏づけ」は関係ないんです。
だから問題は、どのように皆が納得する統合システム・評価指標をつくり、その共認域を広めることができるかということなんです。

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