2009年04月24日

『近代国家成立の歴史』17 司法権力社会アメリカ

『近代国家成立の歴史』16 世論を背景としたアメリカ独立戦争の続きです!
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この画像はこちらから頂きました 😮
前回、ついにアメリカがイギリスから独立を果たしたことを書きました。
しかし、独立直後のアメリカは、あまりうまくいっていなかったのです。
どううまくいっていなかったのか?それをどう乗り切ったのか?
今回は今のアメリカ社会にもつながる面白いお話ですよ
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1776年 独立宣言
1777年 連合規約が第2回大陸会議にて採択される
1781年 13州の承諾を得て連合規約発効
1787年 合衆国憲法起草
1788年 9州の批准を得て合衆国憲法発効
1790年 13州全てが合衆国憲法を批准
独立宣言直後のアメリカ内部では、独立後も13州の連帯を維持するために連合規約を制定し中央政府として連合議会が置かれました。
しかし、そもそもアメリカは一人一人の私権獲得の為に造られた人工国家であるため、州単位で見た場合にも「自分達(の州)が稼げればいい」といった意識になってしまいます。そのため、連合議会もほとんど権力の無い形ばかりの中央政府となってしまい、様々な問題が発生します。具体的には、
・各州には徴税権があったが、連合議会には徴税権がなく、独立戦争を闘った兵士に払う給料が無かった。
・連合議会には通商規制権が無かったため、各州間で通商摩擦が発生した。
・各州の議会が徳政令を出したり、通貨を乱発したり、裁判所の判決を無効にするなど、民主主義の行き過ぎ”が見られた。
・これらの各州の行動に対し、連合議会は何の権利もなかった。

このように各州の私権追求は、やがて州間の軋轢を生むこととなり、そのまま放っておけば1つの国としてまとまるどころか、州同士の戦争にまで発展してしまう恐れがありました。
こうした問題を解決するため、1788年に合衆国憲法が制定されます。
合衆国憲法は新たな中央政府である合衆国連邦議会へ、各州が持っていた様々な権利を集約し、各州への通商規制権も与えました。
こうして合衆国憲法により連邦議会が国家統合機関として機能し始めたことで、また13州それぞれが合衆国憲法を認めることで、アメリカは1つの連邦国家として統合されるようになったのです。
このようにしてついにアメリカ“合衆国”が誕生したのです。
実は上記の、アメリカが合衆国として1つにまとまったという話と、現在まで続くアメリカ社会の実態とには同様の構造が隠れているのです。
アメリカは、国民の私権獲得のために作られた国家であり、国家が国民の私権獲得の可能性を最大限に認めることで現在に至っています。
しかし国民の私権獲得の可能性を最大限認めると、かつての13州がそうであったように私権闘争の結果争いが多発し、やがては殺し合いをするまでに発展してしまいます。
私権追求を最大限認めた上で国家としての秩序を保つ為に、アメリカでは司法権力を強め、私権闘争の結果生まれる対立を司法権力によって強制的に収める方法を採りました。
つまり、私権獲得の可能性を最大限認めた結果司法権力が強まり、司法が大統領以上の力を持つに至ったのです。

これが現在まで続く、アメリカ「事後調整」社会の構造です!
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今回の記事はいかがでしたか?
これらを追求する際に出てきた気付きで参考になるリンクも合わせて紹介しちゃいます!
アメリカだけが、今でも戦争するのはなんで?⇒共認基盤がないから
アメリカは”アメリカ”である限り、戦争を手放せない
※『近代国家成立の歴史』シリーズの過去ログです。
 『近代国家成立の歴史』1 はじめに ~市場拡大が第一の近代国家~
 『近代国家成立の歴史』2 国家と教会の結託 ~ローマ帝国を事例に検証する~ 
 『近代国家成立の歴史』3 教会支配の拡大と金貸しの台頭
 『近代国家成立の歴史』4 教会と結託した金貸し支配の拡大~宗教改革~
 『近代国家成立の歴史』5 国家と新しい商人の台頭 ~宗教改革~大航海時代~
 『近代国家成立の歴史』6 自治権を獲得したオランダ商人
 『近代国家成立の歴史』7 商人が国家をつくる
 『近代国家成立の歴史』8 オランダ商人が作った近代国家イギリス
 『近代国家成立の歴史』9 金貸しが支配するイギリス帝国へ
 『近代国家成立の歴史』10 近代国家の理論的根拠=社会契約説とは、何だったのか?
 『近代国家成立の歴史』11 国家と個人を直接結びつけたホッブス
 『近代国家成立の歴史』12 個人の「所有権」を最大限認めたロック
 『近代国家成立の歴史』13 私権社会を全的に否定できなかったルソー
 『近代国家成立の歴史』14 そして、市場拡大を第一とする国家理論が出来上がった
 『近代国家成立の歴史』15 市場拡大を第一とする国家アメリカ合衆国~独立戦争開始まで~
 『近代国家成立の歴史』16 世論を背景としたアメリカ独立戦争

List    投稿者 tibatosi | 2009-04-24 | Posted in 08.近現代史と金貸し6 Comments » 

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コメント6件

 ponpon | 2009.07.31 11:46

昔からよく言われますが、結局、「こちらを立てれば、あちらが立たず。」「あちらを立てれば、こちらが立たず。」ということですね。

 unimaro | 2009.07.31 23:19

お疲れ様です。
ユーロの堅調はその証な様ですね。なぜユーロだけ?と思っていましたが、今回のエントリでなるほどと思いました。
先の大恐慌より今回のじわじわ真綿で首を絞めるような状態の方がたちが悪い様にも思えます。
政府が資金を間違った方向に使うのを許しやすいですし、仰るとおり民間も騙されやすい状況になっていると思います。
http://iza1304mm.iza.ne.jp/blog/entry/1143671/allcmt/#C1226255
こちらのコメント欄にそこのブログ主の米がありますが、
>多くの権威者が「崩れる」と言っていると聞きました。
と、アメリカ経済はほぼ破綻の間際にいるとの見解が権威者一般の見解らしいです。
>2案を選択することに決まると、米国は未曾有の大恐慌に今後見舞われることが確実であり、1930年代の大恐慌のスケールを遥かに超える大型恐慌になるだろうことは確実な状況になっている。
この通りのシナリオでしょうか。
日本政府は置いておくとして(w)、日本のまともな企業たちは、それに備える準備をしてほしいものですね。

 本郷猛 | 2009.08.01 23:01

ponpon様、コメントありがとうございます。
>「こちらを立てれば、あちらが立たず。」「あちらを立てれば、こちらが立たず。」
それぞれの利害が対立していると必ずそうなります。闇の支配勢力たちも必ずしも一枚岩ではないということです。そこが彼らの弱点なんだと思います。

 本郷猛 | 2009.08.01 23:12

unimaro様、コメントありがとうございます。
ドル・米国債暴落の要因は二つあります。
一つは市場構造的な問題で、http://blog.trend-review.net/blog/2009/07/001295.htmlで投稿したように、先進国市場は’70年から縮小過程に入っており、それを無理矢理拡大するためには借金経済→バブル化しかなかったが、それがいよいよ限界を迎えつつあること。
これは動かしようがない事実で、後は市場がジリジリと縮小するのか?ドル・米国債の暴落を引き金に一気に縮小し始めるのか?という問題です。
そのカギを握るのが、世界中の超大金持ちたち、市場相場を左右する資金力を持つ者たちがどのように判断するかだと思います。
ところが、どうも彼らも一枚岩ではないようですね。そんな状況下で、いつ何を契機に暴落が引き金が引かれるのかが焦点になるのではないでしょうか。

 米流時評 | 2009.08.04 22:48

ビル・クリントン 米記者解放交渉の特命で北朝鮮へ

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 特報!ビル・クリントン元大統領、米人女性記者2名の釈放交渉で北朝鮮を訪問
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 dark blue hermes | 2014.02.03 8:25

hermes wels 日本を守るのに右も左もない | ドル・米国債暴落を巡る闇の支配勢力間のせめぎ合い

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