2009年04月25日

『近代国家成立の歴史』18 新たな私権獲得の可能性「フランス革命」

『近代国家成立の歴史』17 司法権力社会アメリカ の続きです。
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フランス革命については皆さんもこれまで学校で教えられてきてどんなものかは知っていると思います。
しかし、商人(金貸し)と国家との関係を軸に置くと、フランス革命もこれまで学校で教えられきたものとは違う「力を付けてきた商人が引き起こした私権獲得の可能性を拓く革命であり、そのためには世論形成が不可欠だった」という構造が見えてきます。
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1775年  アメリカ独立戦争開始
1776年  トマス・ペイン『コモンセンス』流行
1776年  アメリカ独立宣言
1783年  パリ条約(アメリカの正式な独立)
1788年  ルイ16世が三部会の開催を約束
1789年1月 シェイエス『第三身分とは何か』
    5月 三部会開催。
    7月 バスティーユ牢獄襲撃。
    8月 8月11日憲法
    8月 フランス人権宣言採択。
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18世紀後半のフランスは、3つの身分から成るアンシャンレジーム(旧体制)と呼ばれる社会体制を採っていました。3つの身分とは、聖職者(第一身分)・貴族(第二身分)・平民(第三身分)で、聖職者・貴族の2身分は特権階級と呼ばれ、あらゆる税が免除されていました。
フランス国内ではルソーの啓蒙思想やアメリカ独立によって上記の旧体制に対して反体制の機運が高まっていました。
またこの頃のフランスの経済状況は度重なる対外戦争や、アメリカへの独立支援、宮廷の浪費によって多額の財政赤字を生んでおり、これらを解消しようとルイ16世は第三身分への課税を強化していきましたが、フランスの財政赤字はもはや第三身分への課税強化だけでは解決できない程に増大していました。
そんな中、第三身分出身であり財務長官であるネッケルは財政を立て直すために特権階級からの徴税を提案しましたが、特権階級がそんなことを許すはずもなく大反対に遭ってしまいます。
政府からの要請による第一・第二身分の免税特権の廃止は一旦は頓挫したものの、その後パリ高等法院による「新税制を承認し得るのは三部会のみである。」という言葉を受け、ルイ16世は3つの身分から成る議会「三部会」の開催を約束しました。
またその翌年の1789年1月にはシェイエスによってstrong>『第三階級とは何か』「フランスは第三身分によって成り立っているにも関わらず、第三身分には何ら権利が与えられていない。特権身分は国家に寄生しているに過ぎない。今おかれている状況は、第三身分によって国民議会を作り、不正な特権を撤廃するのか、それとも特権を受け入れるのか、2つに1つしかない。」
という内容が書かれたパンフレットは第三身分に対してそれまで考えたことの無かった「私権拡大の可能性」を感じさせ、多大な影響を与えました。
同年、三部会は約束どおり開催されました。しかし、特権を廃止されたくない第一身分、王権を弱めるために一定の特権廃止は望むものの免税特権は守りたい第二身分、免税特権ひいては身分制度そのものの廃止を望む第三身分、というようにそれぞれの思惑が交錯し、議決方法を巡る議論から先には進まないほど混迷を極めます。
特権身分の廃止のための議決方法を巡って、免税特権を守りたい第一・第二身分と激しく対立することになった第三身分は、『第三階級とは何か』に従い、三部会に見切りをつけて「国民議会」を発足させます。
第一・第二身分代表者の中にもアンシャンレジームに無理があることを理解している者がおり、そうした者達も次々と国民議会に合流していきました。大きな勢力となった「国民議会」との軋轢を避けるために、ルイ16世は「国民議会」を正式に承認しました。
しかし国王の承認は見せかけだけのもので、武力で国民議会を押さえつけようと兵力を結集させ圧力をかけたことに加えて、国民に人気のあったネッケルを突然罷免したため、ついに民衆の怒りは爆発し旧体制の象徴であったバスティーユ牢獄を襲撃します。この成功によりルイ16世を屈服させることが出来、国民議会の力は確固たるものとなります。その3週間後の8月11日には国民議会によって封建的特権の廃止が宣言され、アンシャンレジーム(旧い封建制度)はついに崩壊したのです。
その後8月26日には憲法に優先する根本原則として『人及び市民の権利の宣言(人権宣言)』が採択されました。アメリカ独立宣言を参考に作られたこの宣言ではフランス革命を正当化する観念として自由や平等について謳われており、この宣言内で用いられた思想は日本国憲法にまで継承されています。
以上に見たフランス革命の大きな流れをまとめると、
【重税に苦しむ民衆⇒抵抗するもうまくいかない⇒世論形成によって成功する→新しい国家体制⇒それを正当化する国家理論】といった構造になっており、出来事の順序の違いはあれども先に見たアメリカの独立時の構造に非常に似ています。もう少し具体的に見ると以下のようになります。
【アメリカ】
重税に苦しむ北米植民地⇒独立戦争を起すもうまくいかない⇒『コモンセンス』による世論形成⇒『独立宣言』
【フランス】
重税に苦しむ第三身分⇒三部会を開くもうまくいかない⇒『第三階級とは何か』による世論形成⇒『人権宣言』

また、この頃のフランスにいる第三身分の商人は主に外国から私権拡大の為に流入してきた人々でした。ヨーロッパ内での私権拡大を考えた場合、イギリス・オランダではすでに商人国家が成立していましたがフランスは未だ旧体制をとっていたため、商人達はそこに新たな私権拡大の可能性を見出したのです。
フランス国内での自由な商業活動の為には、貴族特権の剥奪のみならず身分制そのものを廃止する必要があります。商人達は先に成功したアメリカ独立革命がそうであったように『第三階級とは何か』を用いて世論を形成し、それによってこうした身分制度を崩壊させ、新たな私権獲得への道を拓いたのです。
このように、フランス革命もアメリカ独立と同様に「商人達によって私権拡大のために行われた革命」でだったと言えるのです。
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※『近代国家成立の歴史』シリーズの過去ログです。
 『近代国家成立の歴史』1 はじめに ~市場拡大が第一の近代国家~
 『近代国家成立の歴史』2 国家と教会の結託 ~ローマ帝国を事例に検証する~ 
 『近代国家成立の歴史』3 教会支配の拡大と金貸しの台頭
 『近代国家成立の歴史』4 教会と結託した金貸し支配の拡大~宗教改革~
 『近代国家成立の歴史』5 国家と新しい商人の台頭 ~宗教改革~大航海時代~
 『近代国家成立の歴史』6 自治権を獲得したオランダ商人
 『近代国家成立の歴史』7 商人が国家をつくる
 『近代国家成立の歴史』8 オランダ商人が作った近代国家イギリス
 『近代国家成立の歴史』9 金貸しが支配するイギリス帝国へ
 『近代国家成立の歴史』10 近代国家の理論的根拠=社会契約説とは、何だったのか?
 『近代国家成立の歴史』11 国家と個人を直接結びつけたホッブス
 『近代国家成立の歴史』12 個人の「所有権」を最大限認めたロック
 『近代国家成立の歴史』13 私権社会を全的に否定できなかったルソー
 『近代国家成立の歴史』14 そして、市場拡大を第一とする国家理論が出来上がった
 『近代国家成立の歴史』15 市場拡大を第一とする国家アメリカ合衆国~独立戦争開始まで~
 『近代国家成立の歴史』16 世論を背景としたアメリカ独立戦争

List    投稿者 tibatosi | 2009-04-25 | Posted in 08.近現代史と金貸し3 Comments » 

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コメント3件

 unimaro | 2009.08.02 12:02

お疲れ様です。
どこの誰だろうといいことを言えば認めるのですが、
人は一事が万事です。
>①何人にも「学ぶ権利」を保障
と考える奴らがまともなことや子供たちのことを考えることは不可能ですね。
”学ばせる義務”
でなければなりません。
保護者、地域、自治体、国等に義務を与える。
また、授業を邪魔する餓鬼がいてもそれは他の子たちへの「学ばせる義務」を阻害するために、その邪魔する餓鬼を排除させねばなりません。
でも「学ぶ義務」であれば、排除できません。
その根本が大間違いですから、その枝葉である他のことはもう駄目駄目。
このように
一事が万事、彼らの人間性はその程度ですね。存在しているだけ害悪です。
まぁ、自民も五十歩百歩、公明や朝鮮系は自信者達のためだけですし。
今の日本に政治家をさせることを認められる人物は、鐘と太鼓で探さねばならないでしょうね。

 hosino | 2009.08.04 22:06

コメントありがとうございます。
確かに、なんでも「権利の保障」というアピールはどうかなと私も思いますね。
選挙は今や政治家の就職活動ですから、マニフェストといってもおいしい自己PRのオンパレードですね。結局中味は国民がみんなでつくつ時代に入りつつあるのではと思います。

 hermes handbags poland | 2014.02.03 10:19

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