英国・米国の金融力とは?
2008年7月1日付けで、
「ドル基軸通貨体制で儲けていたのはイギリスの金融資本では?」という記事がありました。
それで、イギリスの金融資本について、調べてみました。
引用は、倉都康行氏「金融VS国家(ちくま新書)」です。
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「どの程度金融市場が利用されているのか」
という視点で金融力を分析しています。
金融力をどう測るか?
倉都康行氏「金融VS国家(ちくま新書)」では、
「どの程度金融市場が利用されているのか」
という視点で金融力を分析しています。
具体的には、各国における金融市場の力の測定を、
span style=”font-size:130%;”>(1)為替市場の取引規模
(2)GDPに占める社債やシンジケート・ローンの残高シェア
(3)GDPに占める取引所別株式時価総額
(4)通貨別の資本市場取引量
の4項目に絞って考察しています。
(1)為替市場の規模(出所 BIS)
_____________________________
取引通貨シェア 1992 1995 1998 2001 2004 2007年
_____________________________
ドル 41% 42% 44% 45% 44% 43%
ユーロ 28 30 26 19 19 19
日本円 12 12 10 11 10 8
英ポンド 7 5 6 7 9 8
スイス・フラン 4 4 4 3 3 3
その他 9 8 11 15 15 19
_____________________________
_____________________________
取引市場シェア 1995 1998 2001 2004 2007年
_____________________________
米国 16% 18% 16% 19% 17%
英国 30 32 31 31 34
ドイツ 5 5 6 5 3
日本 10 7 9 8 6
香港 6 4 4 4 4
シンガポール 7 7 6 5 6
その他 28 27 28 27 31
_____________________________
為替市場での通貨シェアは、圧倒的に米ドルの世界である。これは、ほとんどの通貨取引が米ドル
を相手とする取引であるからだ。
地域別に為替取引取扱量を見ると、依然として英国市場が首位を堅持していることが解る。
(2)GDPに占める社債やシンジケート・ローンの残高シェア
_________________________________
国別市場 GDP 社債残高 社/GDP シ・ロ シ・ロ/GDP
_________________________________
米国 13244 2841 22% 849 6%
EU 14527 1418 10% 760 5%
日本 4367 460 11% 43 1%
仏 2231 275 12% 118 5%
中国 2630 71 3% 849 6%
英国 2374 24 1% 137 6%
_________________________________
(注)・単位は10億ドル。 ・社=社債残高 ・シ・ロ=シンジケート・ローン
社債とシンジケート・ローンの指標は、企業の資金調達を表わすもの。GDPとの対比でみると、市場性の資本市場としてのシェアが高いのは米国、豪州、スペイン、(おそらく)英国などである。英国社債残高が異様に低いのは、BISの統計が英国市場で発行される社債を国内扱いしていないからだと思われる。
(3)GDPに占める取引所別株式時価総額
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時価総額 GDP 割合
NY証取引 16492 13244 125%
東証 4679 4367 107%
ユーロネクスト 4200 2231 188%
ナスダック 4060 13244 31%
ロンドン証取 4023 2374 170%
ドイツ取引所 1973 2897 68%
香港取引所 1918 189 1015%
トロント 1823 1225 149%
上海証取 1792 2630 68%
__________________________
(注)・出典はBIS(2007年5月時点) ・単位:10億ドル
時価総額自体は経済力を示すものであるが、それを総生産で除したものを金融力のひとつとしてみて見ると、米国はNYSEとナスダックの合計で155%と英国の170%や豪州の175%とほぼ肩を並べるが、それよりも高い比率を示すのが香港市場とスイス市場である。
(4)証券・スワップ残高
通貨別の資本市場取引量の4項目に絞って考察している。
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通貨 短期証券 国際証券 金利スワップ
米ドル 377 7131 97612
ユーロ 463 9397 112116
日本円 23 504 37954
英ポンド 169 1636 22274
スイス・フラン 24 275 3544
___________________________
(注)・出典はBIS(2007年6月時点) ・単位:10億ドル
資本市場取引として、CPなどの短期証券、中長期債券や株式、そして金利スワップで各通貨がどの程度利用されているのかを見てみると、ここでは全てにわたってユーロが米ドルを凌駕しているのがわかる。ユーロがユーロ圏以外の企業や政府における利用度が高まっているのがその背景にある。国際資本市場は、基本的にドルとユーロのマーケットであることが一目瞭然であろう。
以上の4項目の数値から、国際的な金融力競争は大西洋間(米国・英国)での争いであることが明
らかである。
このデータを見て、驚いたのは、英国の経済力と金融力の没落は同時平行的ではないということ。
金融の中心は英国であるということである。
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コメント4件
ニョァ | 2008.10.25 23:19
はじめまして。
政治・経済には初心者ですが、素朴な疑問です。
国有化って企業を国が保有する(つまり株主になる)とですよね。
国有化することで何が可能になるんでしょうか?
何らかの可能性(メリット)があるから国有化を図っていると思うのですが。。。
また、国有化には、背景にいる資本家達を排除しなくてはならないと思うのですが、排除出来そう何だけれども、今の政治家達を見ると難しいような気もして「本当に出来るかな?」と感じてしまいます。
curryrice | 2008.10.26 0:00
プーチン。強力な共認形成力ですね。
民主主義の地平からは想像がつかない実行力に驚いた。
ロシア人は2/3が無貯蓄で銀行とも縁がない存在であり、また有価証券の保有人口も2%程度で、金融資本と縁の無いところで生活している、そもそも金融商品に不信感を抱いているという国民性がリーダーの実現力の裏づけとして存在しているのかもしれませんね。
ただ、これらの行動が社会共認によるものなのか、独裁権力によるものなのか?については現段階では明らかで、今後の動きに注目だと思います。
maeyan | 2008.10.27 13:59
>コスモスさん
ロシアには、ロスチャイルドも昔から騙されて痛い目にあってきたみたいですし、ロシア政府が既に乗っ取られているとは想像し難いですね。
ロシアという国の特殊性を考えれば、欧州全体にこの流れが波及する可能性は低いと思います。
>ニョァさん
資本家にとって国有化の一番のデメリットは、企業としての自由度を失うことであり、それと引き替えのメリットは、国の保護を受けるということでしょうか。
国に力があれば、そう悪い話でもないはずだと思います。もちろん力のある指導層がいての話ですが。。。
>curryriceさん
ロシアの国民性がこの社会共認を生み出した!という視点はおもしろいですね。
この動きが独裁政治への逆行ではなく、新たな政治手法への移行なのかは注目すべき観点だと思います。
コスモス | 2008.10.23 22:52
なるほど・・・・
やっぱり国有化によって、国際金融資本は国家に吸収されて、消滅する道をたどるんだ....。
欧米も徹底的な資本注入を実行して国有化してしまえば、国際金融資本も(ほぼ)消滅ということか?
しかし、国家(政府)が既に金融資本の手先下している場合にはどうなる?(そもそもそんなのは無いのか?)
わからんことが多すぎる・・・・・