2008年06月02日

【仮説】不換紙幣に転換するために、二度の世界大戦が起きたのでは?②

%E3%83%89%E3%83%AB%E7%B4%99%E5%B9%A3.jpg
前稿の『いまなぜ金復活なのか~やがてドルも円も紙屑になる』(フェルディナント・フィリップス著 徳間書店刊)記述を時系列的に整理すると、以下のようになる。
金本位制(ポンド基軸通貨)→アメリカFRB設立→第一次大戦→金為替本位制(ポンド・ドル基軸通貨並列体制)→世界恐慌から第二次大戦へ
そして、第二次大戦の終末期1944年7月、ブレトン=ウッズ会議で決定されたのが、「金1オンス=35ドルとし、米ドルのみが金と交換可能で、他国のお金は米ドルと交換できる」というドル金為替本位制である。
そして、1971年のドルショック(金-ドル交換停止)によって、ドルは完全な不換紙幣となったわけである。

いつも応援ありがとうございます。

にほんブログ村 政治ブログへ


しかし、事実上の不換紙幣化は第一次大戦直後に始まっている。
金本位制とは金の準備高によって紙幣の発行量が制限される制度だが、金為替本位制では、金と基軸通貨(ポンドやドル)との交換比率は決まっているものの、基軸通貨国は金の保有高に制限されることなく紙幣を発行し続けることができる。つまり、金為替本位制とは、紙幣の発行量に制限がないという意味で不換紙幣と変わりがない。事実上の不換紙幣だ。
注目すべきは、金為替本位制(不換紙幣化)は1944年のブレトン・ウッズ体制が初めてなのではなく、既に第一次世界大戦直後に事実上の不換紙幣へ転換しているという点である。それがポンド・ドル並列の金為替本位制(ポンド・ドルの基軸通貨並列体制)だ。あまり知られていないが、重要な事実である。ブレトン・ウッズ体制との違いは、基軸通貨がポンド・ドル並列か、ドル一本か違いでしかない。つまり、二度の世界大戦と中間の世界大不況を経て、兌換紙幣から不換紙幣への転換と、ポンドからドルへの基軸通貨の転換が同時に進められた。
この一連の流れは何を意味しているのか?
これはブレトン・ウッズのドル金為替本位制への準備段階ではなかったか? 同時に、ポンド・ドル基軸通貨並列体制とは、ポンドからドルへ基軸通貨が移行する過程ではなかったか? だとすれば、少なくともアメリカFRB設立の段階から、それは用意周到に準備されていたと見るべきだろう。
実際、ブレトン・ウッズのドル金為替本位制を可能ならしめたのは、二度の世界大戦で世界中の金がアメリカに集中したことである。二度の世界大戦がなければ、ドル金為替本位制には移行できなかったはずである。
これは何を意味しているのだろうか?
経済学の常識では、二度にわたる世界大戦の戦費調達や世界大不況対策のために兌換紙幣から不換紙幣に転換したと言われているが本当なのだろうか? 
事実は逆ではないか?
兌換紙幣(金本位制)と不換紙幣の違いは、紙幣発行量が制限があるかないかである。不換紙幣に転換した20世紀前半は、世界的な市場の拡大期であった。ところが、金の保有量によって紙幣の発行量が制限される金本位制では、信用創造(貸付膨張)も市場拡大も制約される。実際、19~20世紀初頭までは、約10年おきに恐慌を繰り返し、市場拡大は順調ではなかった。
つまり、兌換紙幣から不換紙幣へ転換させ、飛躍的に信用(貸付)を膨張させることで、市場拡大を図ろうとした。これが不換紙幣への転換の目的ではなかったか?
しかし、不換紙幣への転換には大義名分が必要である。裏付のない紙幣がそのままで信認されるはずがない。そのための大義名分が「戦争や大不況を克服するには不換紙幣が必要」という口実だったのではないか。 ちょうど同時期に、信用創造の拡大を唱えるシュンペーターや、国家のバラマキによる有効需要の創出を唱えるケインズが登場したのも偶然ではない。ともに不換紙幣への転換を正当化する経済思想である。
つまり、戦争や大不況が起こったから不換紙幣になったのではなく、不換紙幣にするために(同時にポンドからドルへ基軸通貨を移行させるために)戦争や大不況が引き起こされたというのが、歴史の真相なのではないだろうか?
「不換紙幣にするために(基軸通貨をポンドからドルへ移行するために)、二度の世界大戦や世界大不況が引き起こされた」。
この仮説は、これまでの経済学の常識に反するだけでなく、誰からも聞いたことがありません。この大胆な仮説に対する意見や反論を期待しています。
(本郷猛)

List    投稿者 hongou | 2008-06-02 | Posted in 08.近現代史と金貸し5 Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nihon-syakai.net/blog/2008/06/727.html/trackback


コメント5件

 みつこ | 2008.09.23 20:45

AIG救済に関しては、AIGの株主からの反発もあり、再協議がなされるようです。
>AIG株主:22日に政府救済策の代替案協議へ-株式希薄化に反発
>当初公表された条件では、米政府が79.9%の持ち分相当のワラントを得るに当たり、株主の承認が必要とされていた。ところが、19日遅くに当局に提出された文書では、ワラントや株主投票への言及部分が削除されていた。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=awIT0EMdQgso

 本郷猛 | 2008.09.23 22:40

みつこさん、こんにちわ。コメントありがとうございます。
他の株主は怒るでしょうね。
他の株主は高い金払って株買ったのに、アメリカ政府には安い価格で譲渡するんですから。それも22.49株も。とんでもない話です。

 ぽんた | 2009.08.31 20:51

>1ドルまで急落したAIGの株価が40ドルまで持ち直すなど有り得ない話である。
既にAIG1株あたり40ドルをこえましたが。。。
なにを根拠に有り得ないなどとおっしゃって書いているのか理解出来ません。
引用も結構ですがその辺のいんちきアナリストの考えに流されていてはいけません。

 しけ | 2009.09.02 23:39

>既にAIG1株あたり40ドルをこえましたが。。。
1年前の記事に対して、実際に超えてからしか言えないあなたも同レベルですけどね

 ponta | 2009.09.06 6:55

40$越えは事実ですが20株まとめて1株にしたため実際はまだ2$(40割る20)程度でしょう。
私は考えます40$×20=800$!!!
ここまでは上昇しないでしょうがね・・・

Comment



Comment