G20に対するジェームズ・ロバートソンの通貨改革案【1】
4月開催予定のG20に向けて、G20各国政府に対するイギリスのジェームズ・ロバートソン氏の通貨改革の提言文を紹介します。
ジェームズ・ロバートソン氏の略歴
1928年生まれ。73年以来、自由な著作活動に従事し、オルタナティブな未来づくり、経済・社会変革運動の講師や顧問を務める。85年、ニュー・エコノミックス協会の共同創立者。大学卒業後、英国政府に就職し、1960年、ハロルド・マクミラン首相のアフリカ訪問「変革の風」ツアーに同行し、その後内閣府に勤務した。後年英国の銀行を対象としたインターバンク調査機関を設立・運営し、政府、公務員、議会、そして金融センターとしてのロンドンの未来などに関する照会調査に携わってきた
『G20へ向けた通貨改革の国際的アクション』「4月開催のG20の議題に必ず含まれるべき通貨改革案~クラッシュ・キャンペーン~」
『Anti-Rothschild Alliance』より転載。
「あなたの周りでこのことに関心を寄せる人がいるならば、この文書をメールで送ることをおすすめします」とのこと。
いつも応援ありがとうございます。
概要
1.本文書の本来的な目的は――国家的および国際的な――通貨改革の提案を、2009年4月2日に開催されるG20の会合の議題として盛り込むことである。
2.副次的な目的は、たとえ4月のG20に出席する各国政府がこうした問題についての議論を行うことに同意しなかったとしても、今その目的の積極的な追求が行われることが、すでに盛り上がって来ている通貨改革を支持の増加につながるであろうというものである。そしてそれは、インターネットや他のチャンネルを通して雪だるま式に、強力で長期的な国際的キャンペーン運動になることだろう。
3.G20に出席する各国政府に提出される改革案は次の通りである。
(1)国家的通貨改革は自国の通貨を本当の意味で国家に帰属させるものである。それは、
(a)公的なマネーサプライ全てを負債の発生なく創造するという職務を、国有化された中央銀行に移すことによって行われる。また、
(b)民間銀行を含めその他のいかなるものに対して――鋳造硬貨や偽造銀行券が、かねてから犯罪行為であるように――無から銀行口座のお金を創造することを禁止することによっても行われる
(2)国際的通貨改革は真の意味で国際的な、負債のない通貨を導入する。
(a)その通貨は、新しい国際的金融当局によって創造される。
(b)その通貨は、外国為替のための、より効率的かつより安定的で公正な基礎を世界経済に提供するためのものである。
(c)その通貨は、国家通貨やユーロ通貨とも共存する。
(d)ただしその通貨は国際的通貨としては、そうした通貨にもはや依存するものではない。
この二つの改革は――今日創造されているような――負債たるお金ではなく、負債を発生させないお金を創り出すものである。国家的改革は通貨創造の機能を特定の利害(銀行業務)から公共の利益に仕える国家の通貨当局(中央銀行)に移すというものである。国際的改革は通貨創造の機能を、特定の一国の国益(ドルを創り出すアメリカ)から、国際的な利益に仕える国際的通貨当局によって発行される、真に国際的な通貨へと移すものである。これらの改革案は、長期的においてのみ適切なものではない。これらの改革の足がかりとして策定されたならば、現在の危機に対処するためにとられる行動は、より効果的なものとなるだろう。
簡単な説明は続いてこの後に記述する通りであるが、より完全な解説はパラグラフ12~20および21~27を参照していただきたい。
簡単な説明
4.多くの銀行業ブームとその崩壊が過去20年間世界各地で起こった。このことで、それらに責任を負うトップの銀行家や監査機関および政治家たちよりも、それらで苦しむ他の多くの人々が甚大な被害をこうむった。現在の銀行業の崩壊は、1929年の世界恐慌とそれに続く1930年代の大不況以来、最も大きな被害を生んでいる。
5.いつものことであるが、政府の対応はあらわれた症状にのみ焦点をあてたものであり、根本的な原因に対する処置が行われていない――それはまるで、基礎が不安定なのに屋根と上階に対し繰り返し行った高価な補修工事によって、ひっきりなしに起こる家の下り坂への滑落を止めようとする建築業者のようである。
6.お金は国家的および国際的金融システムの基礎となるものである。お金が創造されたり発行されたりする方法は、また誰によって、どのような形式(負債として、あるいは負債なしで創造されるのか、またはひとつの通貨なのか、あるいは別の通貨なのか)によるのかは、金融システムがどのように働くのかの大部分を決定する。
7.国家経済および国際経済のために、今日お金が創り出される方法は不可避的に常として甚大な被害の生じるブームと破滅をもたらす。平時においてさえも、この通貨創造の方法は世界中のほとんどすべての人々にとって社会的、環境的、経済的な被害の生じる方法でお金を稼ぐ誘因となる歪んだマネーシステムを生みだすことにつながっている。
8.ほとんどの人は通貨改革によって利益を得ることだろう。したがって、非常に多くの非政府民間公益組織(NGO)がこれを支持している。それらが含んでいるのは、社会問題(飢餓、福祉、社会的不正、健康、人権など)や環境問題(気候変動、エネルギー供給とその仕様、水、食料、農業など)さらには、発展途上国の問題や、一般的、経済的および公共政策問題(世界の将来的見通し、地方・地域経済の発展、道徳的な投資や貿易および消費、企業の社会的責任など)である。
9.ここで概説した国家的および国際的な提案には共通した特徴がある。両方とも――今日創造されているような――負債たるお金ではなく、負債のないお金を創り出すものである。国家的改革は通貨創造の機能を特定の偏った利害(銀行取引)から、公共的利益に使える国家の通貨当局(中央銀行)に移すものである。国際的改革は通貨創造の機能を特定の国家(ドルを創り出すアメリカ)の国益から、国際的な利益に仕える国際的金融当局によって発行される、本当の意味で国際的な通貨に移しかえるものである――それが起きる可能性はあるが、競合する国の小さな集まりに準備通貨を供給するものではない。これらの改革の足がかりとして策定されたならば、現在の危機に対処するためにとられる行動は、より効果的なものとなるだろう。その例は今日「量的緩和」と呼ばれているものである。
10.G20の会合には直接的な関連はないが、注目するべき重要な点は、国家内における地方分権的(ディセントラライズド)な通貨開発という形での通貨改革も奨励される必要があるということである。それは多くの国において既に存在している、タイムダラーやLETS、キームガウアーやその他のもののような代替的(オルタナティヴ)な地域通貨のさらなる普及を伴うものである。それらの地域通貨はより大きな地域経済と社会的自立をもたらす、地方銀行、信用組合、投資信託といった、新たなコミュニティー機関の基盤を与えることが可能である。より長期的なもののためのこうした価値ある開発は、現在の金融危機のような状況に対する部分的な国内の対処法を提供することもできたのである。
11.地方分権的な地域通貨は国際的な連動を行う必要はない。しかし、現在の国家的および国際的マネーシステムがこれまでどおり機能し続けるのならば、ほとんどの人が暮らしを得るための自国通貨を十分に得ることだけに依存してしまい、そのことで、地方分権的でオルタナティヴな通貨の代わりになることを許してしまうことを受け入れなければならなくなる。したがってG20は、これまでに提案してきたように、現在支配的な国家的および国際的なマネーシステムに対する直接的で広く理解できる改革に専念するようにと要請されるべきなのである。それらの改革は、われわれのもとから現在の処置からくるすべての悪影響を取り除くと同時に、将来のより地方分権的な財政的および経済的生活の形態への道を切り開くことにもなるだろう。
ジェームズ・ロバートソン氏の提言文の論点は大きくは次の2点である。
【1】国有化された中央銀行が債務なしで公的通貨を全て供給する。それ以外の者(商業銀行など)が信用創造することを禁止する。
【2】 既存の国家から独立した国際通貨機関を新に設立し、新国際通貨を発行する。この新国際通貨はドルやユーロなどの既存の各国通貨と併存するが、これら既存通貨は国際通貨としては使わない。
~この頁続く
(本郷猛)
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nihon-syakai.net/blog/2009/02/1058.html/trackback
hermes dark gray | 2014.02.01 19:04
hermes suisse 日本を守るのに右も左もない | 急速に高齢化する中国