2022年05月28日

新しい地域自治の考え方 ~惹き合って、地域の中での活動を創っていく人づきあい~

地方創生(2014年)が叫ばれて久しいですが、やはり一極集中に歯止めをかけられず、都市部または隣接エリアに人口は集中し続けています。かくいう私も地方を出た身です。

地方創生の出発点は「地方消滅」にあり、地方自治体を維持するのには人口が必要だという考えに立脚しています。そこで様々な方策をもって若者や女性を地元に巻き込もうとしたのには、かなり無理があったと言えそうです。

一方で、新しい形でのまちづくりにより回復基調の町もあります。

例えば、島根県大田市大森町。人口400人の町ですが、大田市役所まちづくり定住課によると、2012年3月から2021年3月までに大森町に転入した世帯数は32世帯、出生数は43人。なんと年間平均出生数は4.8人で、小さな町とは思えない程のベビーラッシュが起きています。

いったい、どのような形で実現しているのでしょうか。また従来のまちづくりとは何が違うのでしょうか。今回はこの地域自治のあり方を考察したいと思います。

前回までの考察①:【日本の活力を再生する】地域自治の未来① ~地域自治の源流~

前回までの考察②:【日本の活力を再生する】地域自治の未来2 ~集団ネットワーク~

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  • 地域に雇用を生み出す基盤

まずは、まちづくりの基盤となる、2つの企業を紹介します。

 

・株式会社石見銀山生活文化研究所(https://www.gungendo.co.jp/

自分たち自身で「根のある暮らし」を営み、これからのライフスタイル「衣・食・住・美」を全国に発信。アパレルブランド「群言堂」に始まり、古民家再生、宿泊施設・飲食店の経営、食品・スキンケア商品の企画開発と、ライフスタイル全般に関わる事業を幅広く展開。創業1988年から現在で、全国31店舗、スタッフ180名、年商24億円にまで拡大しました。

 

・中村ブレイス株式会社(http://www.nakamura-brace.co.jp/)。

多数の義肢装具士を擁し、臨床の最前線で医療スタッフの一員として義肢装具の製造・適合業務を行っています。またオリジナルの義肢装具をも開発し、各地の義肢装具製作所を通じて、日本全国はもちろん世界の各地にまで中村ブレイスの製品届けています。町を誇れるものにしようと、群言堂と同じく古民家再生事業や宿泊事業を手掛ける。

 

このようにある程度の雇用を生み出す規模の会社があり、誰でも快適に暮らせる環境を作ることが、移住者が増えた要因の1つでしょう。この土地に住む人たちの仕事を創るのが、安心基盤に繋がるのです。

 

  • 惹き合って、地域の中での活動を創っていく人づきあい

雇用などで地域に根ざした人たちが、それぞれに得意なことを持ち寄って、結果的に惹き合って新たなチームが生まれ、更なる活動や仕事をつくっていくそうです。群言堂のライフスタイルや、中村ブレイスの志を全国各地に発信してそこで魅力を感じて移住する人もどんどん巻き込んでいます。

社員自らが地域に関わり、自分たちの暮らしを考え、伝えたい魅力を発掘していく。その暮らしと営みが一体となった「生き方そのもの」が引力となり、今も全国にファンを増やし、移住する人や活動を増やし続けているのです。

 

これは自治会や町内会という組織発で、地域の役割を分担して一人一人が地域課題を考えていくという従来の自治とはかなり違うポイントです。また、一極集中どうする?地方をどうする?といった2項対立でもありません。地方創生といっても従来の自治を変えなかったため、若者や女性をはめ込ませても厳しいものがあったのでしょう。

豊かさの実現から現在に至るまで、世の中が捨ててきたものを拾いながら、心穏やかな美しい暮らしを追求し、自然と調和した生き方を実現する大森町のまちづくりは、今後の社会や共同体のあり方の方向性を指し示す実現態の1つと言えそうです。

 

今後も集団の在り方、地域自治のあり方を、追求したいと思います。

 

List    投稿者 momoki | 2022-05-28 | Posted in 12.現代意識潮流, 14.その他No Comments » 

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