2011年09月11日

近代科学の史的総括1~市場拡大とともに自我肥大し、自然を支配(破壊)してきた近代科学

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「原発問題から見える特権階級・近代科学の問題性11 ~近代科学に対する誤った認識~」
「同12 ~”学び”を忘れた学者達~」
「同13 ~近代科学の源流はキリスト教(=現実否定)にある~」で、原発危機を引き起こした近代科学の問題性を総括してきました。
物理学・科学史の研究者である山本義隆氏も、その著『福島の原発事故をめぐって-いくつか学び考えたこと』(みすず書房刊)「三.科学技術幻想とその破綻」の中で、「何故、こんなことになってしまったのか?」近代科学技術の歴史的総括をしています。
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現在の科学技術の「隆盛」は通常は17世紀科学革命と言われる西ヨーロッパの文化的変動に始まる。それ以前までのヨーロッパでは、哲学、神学、文学のすべての世界で、技術は自然に及ばないと考えられていた。
12世紀に西欧は古代ギリシャの学芸を見いだしたが、はやくにアリストテレス哲学の一員コンシュのギヨームは「すべての技は、創造主の技か、自然の技か、自然を模倣する職人の技のいずれか」であり「創造主の作品が完全である」のにひきかえ「人間の作品は不完全である」と記している。同時代のサン・ヴィクトル修道院のフーゴーは「業には三種類あり、神の業、自然存在の業、自然存在を模倣する技術者の業がそれである」と語り、そのさい「技術」が作るものは「まがい」であり自然に劣る不完全なものとしている。13世紀中期の『薔薇物語』にも「<技芸>は自然の前にひざまずいて猿のように<自然>を真似る」が「けっして<自然>には到達できない」と記されている。

ところが、市場社会の拡大に伴って科学者たちの自我は肥大し、神の位置に座った人間が自然を支配しようとする発想が登場する。

この状況が大きく変化したのがルネサンス期であった。ルネサンス期は、中世キリスト教社会では異端と見なされ日影に追いやられていた魔術思想やヘルメス主義が公然と語られ始めたことで特徴づけられる。「人間は神的な生き物であって・・・神々と呼ばれる者にこそ比べられるべきである」と書かれた『ヘルメス文書』に影響を受けたフィレンツェのプラトン・アカデミーの若き論客ピコ・デラ・ミランドラは、15世紀末に有名な『人間の尊厳について』を著し「人間は偉大な奇跡であり」「人間は、望むものをもち、欲するものになることが許される」と宣言している。
そしてルネサンス後期(16世紀)の自然魔術は、それまでの妖術とは異なり、人間はデーモン(悪魔)に頼ることなく、自然の法則に随順することによって秘められた自然の力を使役しうるという可能性を公然と語り始めた。
それは、自然的事物はすべて霊魂を有するという物活論および世界は<共感>と<反感>のネットワークからなるという有機的自然観にもとづくものではあれ、近代科学技術思想の先駆であった。そして自然魔術師や職人・技術者たちは、実験による試行錯誤を自然認識あるいは自然力の技術的使役のノウハウの開発にとって有効な方法として提唱した。しかしそれでも彼らは、自然にたいする畏怖の念を中世から受けついでいた。

そして、増長した近代の科学者たちは、「実験」という「拷問」に自然をかけることによって、その仕組みを「白状」させようとし始める。

さらなる変化は、それまで手仕事を蔑み、論証技術に長け、もっぱら古代文献の釈義に明け暮れていたエリート知識人のうちに、職人や魔術師に担われてきた知のあり方の有用性を認めるものが出現したときに始まった。あの観念的なデカルトでさえ、屈折光学の研究において「研究など一度もやったことのない職人の技巧に頼らねばならない」と記している。
自然認識における近代への転換を象徴しているのが、ガリレオの実験であった。滑らかな斜面を用いることで落下時間を引き延ばして時間の測定を容易にし、かつ空気抵抗の影響を低減させることで自然界には存在しない真空中での落下という理想化状態に人為的に近づけてなされたその実験の目的は、それまでの魔術師による自然の模倣としての驚異の再現や技術者による試行錯誤を通じてのノウハウの改良ではなく、時間と空間の関係としての定量的法則を確立することであった。
このガリレオの実験の意義を、カントは「理性は一定不変の法則にしたがう理性判断の諸原理を携えて先導し、自然を強要して自分の問いに答えさせねばならない」ということを自然科学者が知ったことに求めている。「それはもちろん自然から教えられるためであるが、しかしその場合に、理性は生徒の資格ではなく本式の裁判官の資格を帯びるのである」。
ここには、人間が自然の上位に立ったという自覚が鮮明に窺える。
そしてそれは「自然の秘密もまた、技術によって苦しめられるとき、よりいっそうその正体を現す」と言ったフランシス・ベーコンから「私が元素の混合によって生ずるといわれている諸物体そのものを試験し、それらを拷問にかけてその構成原質を白状させるために忍耐強く努力したとき」と語るロバート・ボイル、そして「自然は、より穏やかな挑発では明かすことのできないその秘められた部分を、巧みに操られた火の暴力によって自白する」というジョセフ・グランヴィルにいたるまでの17世紀の論客に共通する、能動的な、というよりもむしろ攻撃的な実験思想に発展してゆく。

o0311041511224298165.jpgGalileo-Galilei-206x300.jpgKepler_6.jpgNewton.jpg
左からコペルニクス像、ガリレオ肖像、ケプラー肖像、ニュートン肖像
画像はこちらこちらこちらこちらからお借りしました。

これとならんで、ケプラーやフックやニュートンによって、かつては魔術的文脈で語られていた自然の力にたいする物理学的で数学的な把握-力概念の脱魔術化-が進められていった。
その延長線上に科学技術による自然の征服という思想が登場する。実際、ベーコンにとって、自然研究の目的は「行動により自然を征服」することにあった。『ノヴム・オルガヌム』には「技術と学問は自然に対する支配権を人間に与えるもの」と明記されている。機械論哲学の徒デカルトもまた『方法序説』で、「私たちは自然の主人公で所有者のようになることができる」と語っている。
それと同時にベーコンは、科学技術研究の近代的なあり方をはじめて提唱した。彼は、近代科学技術研究のあり方として、選ばれた専門の研究者集団が国家の庇護のもとで先進的研究と技術革新を組織的かつ目的意識的に遂行するべきことを提唱し、晩年の『ニュー・アトランティス』において、その機関として「ソロモン学院」を描き出している。
このガリレオの実験思想、デカルトの機械論、ニュートンの力概念による機械論の拡張、そしてベーコンの自然支配の思想を背景に、近代の科学技術思想が形成されていった。自然と宇宙に見られるさまざまな力を探しだし、その法則を突き止め、それを自然の支配のために制御し使役するという目的において、近代の科学技術は自然魔術思想の継承である。しかし、近代科学は古代哲学における学の目的であった「事物の本質の探究」を「現象の定量的法則の確立」に置き換えただけではなく、魔術における物活論と有機的世界像を要素還元主義にもとづく機械論的で数学的な世界像に置き換えることで、説明能力においてきわめて優れた自然理論を作り出した。そして同時に近代科学は、おのれの力を過信するとともに、自然にたいする畏怖の念を忘れていったのである。

この西欧科学による自然支配の原点は、牧畜=動物を飼い馴らすという自然の摂理に反する行為にあるのではないだろうか。
『るいネット』「牧畜によって何が変わったのか?」にあるように、牧畜が登場するまでは自然(動物)は畏敬の対象であり、生命をいただく代わりに感謝の念を捧げていた。これが日本人的(縄文人的)発想であるが、西欧人では牧畜の登場によってその自然を人間が飼い馴らすというパラダイム転換が起きた。そこでは家畜を制御・統制する必要があるが、それはアメとムチによって家畜を支配することと同義である。また、去勢をはじめ性を抑制・管理してゆくが、それらは自然の摂理に反する相当残虐な行為である。このような家畜の制御・統制→アメとムチ→去勢という自然の摂理に反する行為を通じて、家畜を管理・支配する部族に残虐性が刻印されていった。
その後、略奪闘争によって共同体と規範共認を破壊された西欧人は、自我の塊となってゆく。そして、他部族を家畜同然と看做し支配しておきながら、自分たちだけは自由・平等という己に都合のよい架空観念を捏造してゆく。それがギリシア・ローマ人である。
西欧人の自我をさらに肥大させたのがルネサンス以降の市場拡大である。
西欧人(の科学者たち)はますます増長し、神に取って代わった人間が自然をも支配しようとする所まで行き着く。彼らの「実験」とは自然に対する拷問であり、そこで見い出された「法則」とは拷問によって強制された自然の「自白」なのである。そう考えれば、近代科学技術によって地球が破壊されてきたことは何ら不思議ではなく、当然の成り行きだったと言える。
また、無数の要素や力が複合的に絡み合って働いているのが現実の自然世界(宇宙の運動)であるが、たかが人間の脳レベルは全体を構造化することはできない。そこで近代科学者たちは、関係する要素や力をほんの数個に限定し、その他の要素を捨象した人工的な特殊限定空間で実験を繰り返してきた。そうしてできた科学法則は、現実には存在しない特殊空間(実験室)でのみ成立する限定的な法則にすぎない。
このように、近代科学は最初から自我に基づく邪心を原動力にして発展してきたのであり、自然に対する畏敬や感謝の念からその摂理に学ぼうとする姿勢とは全く逆の、文字通り「天に唾する行為」を繰り返してきたと言えるだろう。それに対する強烈なしっぺ返しが、福島原発事故だったのではないだろうか。
(続く)
るいネット
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List    投稿者 staff | 2011-09-11 | Posted in 14.その他3 Comments » 

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コメント3件

 通りがけ | 2012.08.15 10:25

いかりや爆様への8月15日の書き込みを転載します。地位協定破棄と福一石棺桶化は今上陛下の願いでもある。
>今上陛下は天皇史上至高の聖賢仁徳な天皇である (通りがけ)
2012-08-15 01:01:29
韓国大統領の無恥発言はアメリカの差し金である。
今上陛下は宮内省を相手にしないというより宮内省ごとき下賤なスパイ風情に今上陛下の聖賢仁徳は手も足も出せないほど高いところにある。ヒロヒトは天皇史上最低の天皇だったからアメリカの注文通りに動いたけど。
まあ宮内省のていたらくに業を煮やしたアメリカがオリンピックに続いて韓国のあめぽちスパイにやらせているのがこれらの無恥な日本バッシングである。マスゴミを使ったいつもの国内攪乱だねw
それにしてもアメリカはよっぽどちいきょうていを日本人に破棄されたくないんだね、野豚だけじゃ攪乱不十分と見たんだろw
北とユダ米の本音 (通りがけ)
2012-08-15 09:37:11
8月15日、秀ちゃん日記のブログさまへ書きました。
http://hidenori1212.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-c80f.html
さて憲法とか一時おいといて純粋に戦略として考えてみる。
韓国は北朝鮮と対立している。いま日本と竹島で戦争すれば北は韓国に加勢するだろうか。しませんね。
北にとって日本海の向こうの日本と戦争するよりは地続きの韓国を侵攻するほうがはるかにたやすい。援軍のふりをして首都ソウルに軍隊を送り込み特殊部隊で現政府を武力制圧すれば悲願の南北統一が簡単に達成できる。戦争では何でもありだからね。北の政府にとって南北統一すれば竹島など問題外だから日本は朝鮮半島新政府に対して新規に平和条約を結んで竹島を尖閣同様領土問題棚上げして漁業協力協定を結べばよいのである。
日本が韓国と戦争し始めたとしてどちらにも米軍基地があるからアメリカは絶対参戦してこない。北はアメリカの軍事支配を崩そうというなら日本へ攻撃をかけることは極東米軍を敵に回すことになりかねず自国にとって決定的に不利である。北にとっては今は遠交近攻即ち日本とは戦わず竹島に韓国軍を集中させている隙に韓国政府をクーデターの形で倒して(米軍の介入が避けられる)南北統一する法がリスクベネフィットが格段にいい。
まず竹島紛争が勃発したとして北朝鮮がどう動くかの基本戦略を押さえた。
投稿: 通りがけ | 2012年8月15日 (水) 08時45分
日本は沿岸部に原発を56基も持ちしかもオウム事件に見られたようにテロ攻撃に対し非常に脆弱である。外国が日本を全滅させようと思えば原発の運転制御室へ特殊部隊でテロ攻撃をかけて運転制御盤を破壊して帰ればすべての原発がメルトダウン爆発して日本列島は沖縄を除いて死の灰で全滅する。簡単なことだ。しかし今回北朝鮮は絶対にそれをやらない。それは先に述べた事情による。
アメリカは日本の原発を全く守らない。沖縄だけ手に入れられれば本土は元々どうでもよいからである。日韓竹島事変で原発へのテロ攻撃を北朝鮮がやらないのなら日本国内に飼っている日本人スパイ部隊もしくは韓国軍特殊部隊を使ってやらせるだろう。戦争には何でもありだから。アメリカの原爆投下以来の日本列島核兵器消滅攻撃作戦が完結する。
そのときはじめてアメリカは北朝鮮の日本核施設テロであるとでっちあげて韓国に全軍を投入し北朝鮮へ宣戦布告して「韓国軍を使って」北を制圧する。あとは南方諸島と朝鮮半島の軍隊を使って対中国征服戦争を着手するのである。
以上のように、竹島でもし軍事衝突を起こせばそのあとはどう転んでも日本は滅亡するしか亡いのである。臨海原発56基のせいでね。
だからこそ武力衝突は決して起こさず速やかに地位協定破棄し福一石棺桶化を着手達成しなければならないのである。
投稿: 通りがけ | 2012年8月15日 (水) 09時09分
今上陛下こそが世界平和の象徴 (通りがけ)
2012-08-15 09:52:37
今上陛下ご夫妻こそが敗戦後平和憲法9条を世界に広めることで日本国を米軍の地位協定占領から世界中をユダ金の侵略戦争から守り続けてこられた世界平和の象徴である。
地位協定破棄と福一石棺桶化は311以来今上陛下の御心そのものである。

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