2023年01月13日

生命原理・生物原理から見た子育てについて~人はスキンシップで育つ~

世の中には、いろいろな育児書がありますが、生命原理・生物原理(生物の生存戦略や脳科学的視点)に照らし合わせた時に、何が事実なのか?可能性なのか?という視点で子育てを視てみたいと思います。

実は、人間は育った環境に応じて、3歳までの間に生まれた時の脳の神経細胞の数を何と3割まで減らすそうです。生まれた時から、この世でどう生き抜くかを学び、順応していくのです。

 

写真はこちらからです

●●●参考資料(有難う御座います)●●●

『パパは脳研究者』(池谷裕二さん(東京大学・脳科学者))

人はスキンシップを介した多感覚情報を同時に受容する環境で「内識=外識」の統合回路を太くしていく(麻丘東出さん)

赤ちゃんに一切愛情を与えない実験をした結果(加藤俊治さん)

まずは『スキンシップ』について。育児書にはスキンシップの大切さが語られていますが、スキンシップの重要性について調べて見ました。

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◆スキンシップは、生物が進化的に獲得してきた生存戦略
スキンシップは親との愛情的な絆を意味しているわけではありません。育児期のスキンシップは、(人を含む)哺乳類にとって、極めて重要な生存戦略の機能です。

スキンシップにより強い安心感、信頼感を刻み込む経験を豊かにすることで、子どもは新たな環境を積極的に“探索”し冒険できるようになります。そのなかで他者との関係を広げていきます。
逆に幼少期に親との間のスキンシップがうまくいかないと(希薄、剥奪、虐待などの不適切な養育)、心身の発達に遅れや問題が生じたり、病気に対する抵抗力や免疫のはたらきが低下することがわかっています。また、思春期以降にうつ病や多動性障害、解離性障害などが現れやすくなることも知られています。

◆スキンシップ(1歳まで)と赤ちゃんの成長
【1ヵ月】~母親と赤ちゃんとの授乳は双方向のコミュニケーション~
赤ちゃんは、オッパイをずっと吸っているわけではなく、生後1カ月くらいは、30秒くらい吸って15秒くらいは休むのです。何故かと言えば、吸うのを休むと、母親が自然と揺らしてくれるから(母乳でなく哺乳瓶でも同じ)。揺らされるのが何秒か続くと、赤ちゃんはまた吸い始めます。揺らされていないと、吸引の再開が遅くなります。

これは、赤ちゃんはしばし止まって、お母さんの反応を待っているのです。試しに、吸っているときにわざと揺らしてみると、吸うのをやめます。これは一種のコミュニケーションです。これは、大人の会話と同じ原理が通底しています。コミュニケーションの最初の形態は『授乳』なのです。ちなみに、2ヶ月頃になると15秒くらい吸って7~8秒休む。交互作用のペースが少し速くなります。さらに、母親に揺らしてもらえないと、『あ~』と声を上げます。『かまって!』と要求するのです。

【2ヵ月】~『クーニング』のやり取りによる信頼関係を作る~
『あ~』や『う~』などの母音が発音は、言葉の発達のはじまりで『クーニング』と言うそうです。赤ちゃんが『あ~』とクーニングをしたら、親が同じように『あ~』と返してやることは、コミュニケーションが信頼関係の基礎を作ります。そしてそれが赤ちゃんの能力形成に重要。言葉の発達の上で重要だとされています。
最初のうち、赤ちゃんは『あ~』と出している声が、自分のものとは気づいていませんが、次第にそれを認識し、3~4ヵ月頃には親が返す声を聞いて、『あ、お母さんは私の声をマネしてくれている』と気づくようになります。すると、母親のほうも相互通行のコミュニケーションをしているという実感が一気に湧いてきます。赤ちゃんのクーニングを「返信」することが大人の大切な役目なのです。

【6ヵ月】~人はコミュニケーション、スキンシップが無いと育たない~
この頃の変化は、よく真似をするようになったこと。真似は自分の脳に「外部世界」を取り込むのにとても重要です。言葉のはじまりも、真似によるものです。親がしっかりと話しかけることが重要です。

※13世紀、神聖ロ -マ帝国のフリードリッヒ2世が行った実験です。皇帝は身寄りのない赤ちゃんを集め、侍女に育てさせました。彼の興味は「言語の起源」でした。ヒトは言葉を習わなくても話すようになるのでしょうか。
侍女たちは母乳やオムツや入浴などの最低限の世話は許されましたが、 赤ちゃんに話しかけることは禁じられました。結果は意外なものでした。2歳になる前、つまり言葉をきちんと覚える前に、全員が死んでしまったのです。フリードリッヒ2世の非道な実験は半ば伝説的で、15世紀当時、どこまで厳密な条件下で研究が行われたかわかりません。しかしその後、より信頼のおける調査が、第2次世界大戦中に行われています。
戦争では多くの孤児が生まれました。精神科医のルネ・スピッツは孤児院で調査を行いました。当時すでに、子どもの健康には栄養や衛生が重要であることは認知されていました。孤児院でも充分な食事と清潔な部屋が準備されました。唯一足りないものはコミュニケーションです。孤児院には多くの子が集まりましたから、慢性的な人手不足に陥っていました。介護者たちは乳幼児一人一人の世話をしましたが、充分なコミュニケーションを図る余裕はありませんでした。調査の結果、91人中34人が2歳までに亡くなってしまいました。

栄養や衛生面が足りているだけでは不充分で、コミュニケーションやスキンシップがないと、人は育たないということなのでしょう。一方、動物たちは栄養と衛生状態が満たされていれば、成長の途中で死ぬことはありません。人の脳には、食欲と同じく関係性欲求の本能が強く備わっています。他人とのコミュニケーションを本能的に欲するのです。人は「人」 として育てられることによって「人」になるのです。
よく話しかけられる乳児ほど頻繁に発声し、1ヶ月齢になる頃には語彙 が約2倍多いというデータも発表されています。

【9ヵ月】~共同注視はヒトらしい社会性の芽生え~
赤ちゃんと母親が互いに見合わせている最中に、わざとほかに視線をやると、赤ちゃんも一緒に母親が見た方向を見ます(共同注視)。あるいは、何かを人差し指で指し示すと指された方向に目を向けるのも、一種の共同注視です。共同注視は、相手が興味をもったもの(対象)に、自分も興味を向けること。こうした問題意識の共有は、協働作業を行うための基礎となります。つまり、ヒトらしい『社会性』の芽生えです。

ここまでです。スキンシップは、生物が進化的に獲得してきた生存戦略」という視点で捉えるといろいろな気づきが得られました。今回はここまでです。有難う御座いました。

List    投稿者 hirosige | 2023-01-13 | Posted in 13.認識論・科学論, 14.その他, 17.これからの教育No Comments » 

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