小学生の子を持つ親の意識変化~私立中学受験バブルの終焉
2008年12月6日の記事「女たちが消費社会から共認社会への転換を始めた」に続いて、意識潮流の変化を取り上げたい。
いつも応援ありがとうございます。
『るいネット』「中学お受験バブルの大罪(1/2)」「中学お受験バブルの大罪(2/2」)に『貞子ちゃんの連れ連れ日記』「恐怖のお受験季節の中での不可解な中学お受験バブルの大罪」が紹介されている。
そこでは、仲良しの友達が私立中学を受験するので、自分も受験したいという娘のたっての希望で受験させることにしたものの、過熱した「お受験バブル」の異常さ(狂信ぶり)にあきれ果てる母親の気持ちが綴られている。ブログ主の「貞子さん」は、この過熱した受験ブームが「子供の心身の健全な成長を著しく阻害しています」と警鐘を鳴らしている。(「貞子さん」は京大卒の経済アナリストで、娘さんは無事志望校に合格したとのことです)
これまで過熱する一方だった私立中学受験ブーム。その異常さを作り上げてきたのは子供よりむしろ親である。週刊誌も「子供の受験に対して親は何をなすべきか?」といった記事のオンパレード。それは「有名私学に合格さえすれば望みが何でも叶う」とでも言わんばかりの一種の信仰であった。それに対して異を唱える論調はほとんどなかった。
しかし、親たちもその狂信から急速に醒めつつあり、その過熱ぶりに対して冷静な判断を下し始めているようだ。貞子さんの「中学お受験バブルの大罪」はその一例である。親の意識に大きな異変が起きているのではないか。
だとしたら、親の意識が転換したのはなぜか?
底流にあるのは、’70年から始まった私権の衰弱→収束不全。’02年以降収束不全が人々の心底に根付く。子をもつ親たちも潜在意識レベルで「物から心へ」と価値意識が変化し始めた。しかし現実の課題は私権課題「いい大学へ」であり、勝ち組志向と受験競争を勝ち抜くためのスパルタ志向が、ついこの間まで強く残存していた。
勝ち組志向の先にある成功イメージは、村上・ホリエモンや外資の金融マンや官僚である。しかし、その成功イメージは今や完璧に崩壊した。言うまでもなく、その契機は、今秋以降顕在化した世界的金融危機である。小学校から受験勉強して東大に入って官僚や外資の金融マンになることに何の意味があるの?と、親たちも問い始めたのではないか。
「私権原理から共認(本源)原理へ」⇒「物から心へ」という底流が、世界的金融危機によって顕在化した。金融経済から実物経済、さらには農業へと人々に意識は向かっている。これは資本主義そのものの終焉であり、その中の勝ち組を生み出してきたスパルタ教育と私学ブームも終焉するのではないだろうか。
「女たちが消費社会から共認社会への転換を始めた」では20歳の女子大生の意識転換を取り上げた。金融危機を契機として人々の意識は金融破綻劇の水面下で静かに、しかし急速に私権原理から離脱を始めている。今回取り上げた小学生の子を持つ親の意識転換もその一つにすぎないのであろう。
(本郷猛)
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コメント7件
Hiroshi | 2009.03.22 20:26
>最近の政治家の末期的迷走ぶりは、’70年から始まる国家の終焉がいよいよ最終段階に入ったことを示しているのではないだろうか。
世界バブルが崩壊して、日本だけではなく、アメリカもEUも世界が迷走し始めた感じがします。
アメリカのAIGボーナス騒動も迷走の始まりにしかすぎないように思った。
孫市 | 2009.03.24 21:46
いまだに私権闘争を繰り広げる政治家。無能ぶりが際立ってきました。
自民党の国会議員の半数が世襲議員なんですよね。課題がないが、権力はある、さらに親のネームバリューで当選したというコンプレックスももっているので人一倍出世欲が強い。
これが民主主義ってんだから笑ってしまう。この負の連鎖をなんとか止めなくては。
mini | 2009.03.24 21:47
「今後は全世界的に地域主権制への移行が始まる」という一文は新しい気づきでした☆
地域主権制って、EUなどのように国家の枠を超えた連合のようなものになるんでしょうか?それとも、もっと実体に基づいたもの(地域に密着したような組織など)になるんでしょうか??
simasan | 2009.03.24 21:55
自民党の旧い政治家、或いは官僚が「麻薬中毒」と言われるのも最もだと思います。
今だにこんなやつらが国家を支配しているからおかしい、なんとかしなければという国民の側の意識も大きく変わってきているのだと思います。
>全世界的に地域主権制への移行が始まるのではないでしょうか。
は今後必然の流れではないでしょうか?
太陽の黙示録 | 2009.03.24 23:06
>最近の政治家の末期的迷走ぶりは、’70年から始まる国家の終焉がいよいよ最終段階に入ったことを示しているのではないだろうか。
「近代国家の終焉」という認識は、今後の世界情勢を見ていく上でポイントですね。
東欧諸国の民族独立や国家の規模を超えた多国籍企業の存在(国家が救えないほど膨らんだ負債)など、従来の国民国家の基盤が崩壊し始めている。
インターネットの発達も国家の終焉を加速させていく要因の一つと思いますが、いかがでしょうか?
くみ | 2009.03.31 23:19
国が養っているのは、企業や一部の個人のみのような気がしてきます。それは、近代国家は、私権闘争のなかで国が国民を養っていくシステムとなったからでしょうか?
>私権闘争が終焉したということは、私権闘争の止揚・統合体である国家の命運も、遂に尽きようとしているということに他ならない。
私権闘争のなかで作り上げられたしくみからの転換期。
本郷さんは新しいしくみ(地域主権制?)ってどんな形が望まれてくると考えていらっしゃるのか、教えて頂きたいです☆
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