2023年01月23日

オフィス空間の変遷~これからは、人が集まり、組織力を最大化する「共創」の時代!~

最近、「共創空間」という言葉をよく耳にするようになってきました。
私は建築設計の仕事をしています。お施主さんからもこの「共創空間」に対する期待は大きくなってきているのを感じる一方、「共創空間」という言葉のイメージがぼんやりしていて「どんな空間?」「本当に必要なの?」と少し懐疑的でした(笑)。設計するにも、どうつくれば良いか?難しそうだなと感じていました。
しかし、その疑問をきっかけに、最近のオフィス事例を調べたりオフィス空間の時代変遷を先輩たちから教えてもらったりする中で、徐々にどんな空間なのか、なぜ今共創空間が求められてきているのか、少しずつ見えてきました。

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なぜ今、共創空間が求められるのか?オフィス空間の時代変遷

日本のオフィス空間の時代ごとの特徴を紹介します。

~1970年:オリンピック景気、イザナギ景気。つくればつくるほど売れる、大量生産の時代。
⇒典型的なアップダウン体制のもと、ワーカーには正確な業務推進が求められ、それを管理するシステムが発展していきました。業務を管理するための均一な空間と上司が部下を後ろから見ることのできる座席配置が、この時代のオフィス空間でした。

~2005年:物的需要が徐々に低下し、より「質」や「スピード」などの「付加価値」が求められる時代
⇒業務高度化を目指し、各企業は「専門分化体制」を推進。それまでの均一空間から、専門部門ごとの机レイアウトや業務に合わせた多様な空間が導入される。
一方、成果主義から個人の能力重視や個室化も進み、日本の強みである組織力(活力)の低下が問題になります。

2005年以降~現在:ITの発展から需要の多様化・ネットワーク化→個人や1企業では答えが出せない時代。また、若い世代中心に私権活力が衰退し、仲間欠乏・一体化欠乏が高まる時代
⇒個人能力に焦点を当てた個室化の流れから、組織力を最大化する「ワンルームオフィス」。/急激に変わる時代に対応するべく、環境配慮、健康経営、フレキシブル性を内包するオフィスが主流に。企業形態も、それまでの自前主義(=クローズドイノベーション)と比較し、より他企業との連携を重視する「オープンイノベーション」⇒「共創」の概念が導入され始めます。

共創空間はどんな空間? 先端企業の事例

現代の意識潮流から、各企業がどのような「共創空間」をつくっているのか見ていきたいと思います。

①デザイン
GoogleやTwitterなどの世界的大企業のオフィスデザインで増えてきているのが「親しみやすく、遊びのあるデザイン」です。従来のモノトーンの空間ではなく、カフェのようにカラフルな壁や配管むき出しの天井でカジュアルな雰囲気。SONYのオフィス紹介にもありますが、「大企業の堅苦しさを感じさせない」親しみやすくリラックスできるデザインが好まれるようになっています。また、ジムやカフェ、(中には瞑想室なども)を併設し趣味の一部、生活の一部としてのオフィスも増えてきています。
生活に溶け込む場としてのオフィスが、働くことをより一層身近に、楽しくしています。

②座席配置
フリーアドレス形式の座席配置が増え、従来よりも1人当たりの専有床面積は減少傾向にあります。個人のスペースを充実させるのではなく、人が集まる共用部の充実が求められています。ミーティングスペースや協働スペースを充実させることで「集まる」ことが重視されています。

画像はhttps://www.sony.co.jp/recruit/office/minatomirai/よりお借りしました。

③システム
フリーアドレスや在宅ワークも増え、1人1人のスケジュールや場所、課題の進捗状況を確認できるシステムが開発されています。確認と言っても「管理」とは違い、全員の状況を全員が把握できるシステムが多いようです。遠隔でも会議できるシステも急激に整備されました。
コロナ禍をきっかけに増加した在宅ワークとそれらシステムですが、一方でAppleやGoogle、Twitterでは最近「オフィス回帰」の方針が出されているようです。スケジュールや課題進捗だけではない、その時々の体調や心情など、実際に会うことでしかわからないものを共有することもチーム運営には欠かせません。システムも、より生々しく人が集まり協働するのにふさわしく高度化していくかもしれません。

④他企業や他部門との連携
企業そのものの形態も多様化しつつあります。例えばPoint0という会社は様々な分野を得意とする企業が集まり、共創空間をつくることを目的に発足された企業です。専門分野に特化するのではなく、むしろ様々な職種の知見を取り入れ様々な需要に応える企業は増えつつあります。また、SONYやKDDIなどの大企業はベンチャー企業に向け事業支援を行うことで、新たなアイディアを生み出す取り組みがされています。

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企業によって、「共創空間」のカタチは様々ですが、一貫しているのは「人が集まる」空間であること。そのために、「愛着」や「誇り」がもてる空間であること。
学校や、新入社員を見ていてもそうですが、もはや「1人で頑張る」では活力が出ない時代。広い関係世界の中で、学び、協働する。その過程が豊かなほど成果が上がる時代。オープンイノベーションの背景にはIT化だけではなく、そういった人本来の活力源の転換が深く関係しているのだと思います。

List    投稿者 ideta | 2023-01-23 | Posted in 12.現代意識潮流No Comments » 

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