2011年05月06日

脱原発の可能性は女発~世田谷区長選挙結果を読む~


画像はこちらからお借りしました。
去る4月24日、東京都世田谷区長選挙で脱原発を訴えた元国会議員の保坂展人氏が当選した。原発について「区長」という立場では何の権限も持ちえていないにもかかわらず、脱原発を訴えて当選した事の意味は大きい。
この選挙を通じて、有権者の意識潮流と、今後予想される展開を予測してみたい。
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■保坂氏の出馬にかける想い
以下は出馬を決意した直後のブログだが、震災と原発という大きな危機に瀕して、停滞する国政への失望と、もっと身近なところ(世田谷区)から「新しい社会のあり方を提示したい」といい、これまで続けてこられた地域活動とそれらのつながりを期待しているようだ。

私は、地震の直後から田中良杉並区長と意見交換をして、杉並区が原発事故の後で「避難地域」と「屋内退避」地域とされた福島県南相馬市に緊急援助物資を送り、また「陸の孤島化」を危惧する桜井勝延南相馬市長の訴えを受けてバスを送り避難者を群馬県の宿泊施設に移送するプロジェクトのお手伝いをしました。そして、私自身も南相馬市に出向き、極限状態の中で市民の生命を預かり奮闘する桜井市長とも話してきました。
 素早く行動し、迷うことなく人々の生命を守る役割をするのは自治体だという姿をしっかりと瞼に刻みました。3月31日に、「もうぎりぎりだけれど」と世田谷区内の住民グループに出馬要請を受けた時に、たいへんな責任の重圧感とともに、今だからこそ私の力で役割を果たすことが出来るかと自問自答を続けました。
 3月11日の地震と原発災害は、私たちの未来に大きな不安と影を落としています。そして、私たち自身の生き方や社会の慣習を大きく変えるように求めていると思います。政治の役割は、暗黒の中に灯を掲げ、困難な壁の向こう側に夢をつくりだすことです。
 それが25年間、子どもと教育問題をテーマに地域活動をしてきた世田谷で出来るのであれば、思い切った舵取りをしていきたい。国政が危機の前に停滞し、すぐに回答が生み出せない状況が続いていく中で、「新しい社会のあり方」を世田谷から提示していきたいと思うようになり、要請を受けることにしました。

■候補者の概要と選挙結果

激戦となった。花輪ともふみ氏と川上和彦はともに自民支持。自民都連推薦の花輪氏に対して、地元の意向を無視された形となった自民世田谷総支部が、独自候補の川上氏を擁立。両候補は票を分けあい、つぶしあう結果に。
生活者ネットワーク、民主、国民新を中心に支持された保坂氏が自民両候補を抑えて当選した。
分裂選挙となった自民は当然どちらかが当選するという思惑の元で動いており、つぶしあいは想定しつつも、第三者に持っていかれるとは夢想だにしなかったであろう。
投票率はここ数回の選挙と同様に41.29%と低く、これまで自民や民主を支持していた層の一部が保坂支持に回ったことも考えられる。
■支持層
保坂氏を支持した「生活者ネットワーク」という政治組織に注目したい。東京各地で広がる草の根的な市民運動で、下記ルールを掲げているのが特徴。

ルール1:議員はローテーション
 生活者ネットワークの議員は、最長でも3期12年で交代します。議員を職業化・特権化せず、世代交代を進めることで参加の層を広げます。任期を終えた議員は、市民政治を広げるための活動や地域活動などに、その経験を活かします。
ルール2:議員報酬は市民の活動資金に
 生活者ネットワークの活動はカンパで支えられています。議員も報酬に応じた寄付(カンパ)を行い、市民の政治活動資金に活かします。お金の流れは公開し、政治資金の透明化をはかっています。
ルール3:選挙はすべて手づくりで
 選挙は、政治に参加する入口です。みんなでお金(カンパ)と、知恵や労力(ボランティア)を出し合い、選挙を行います。

2010年現在東京で都議3人、市区議52人を擁する。
そして驚くべき事にHPにあるように区議選立候補者のほとんどが女性である。
この女性主体の市民運動と、脱原発につながる想いには実は共通項がある。 
原発の是非に関する朝日新聞のアンケート結果を紹介したい。
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原発を巡るみんなの意識は、どうなっているのか?

ここで目立つのが、
・女の方が、反対派が多い
・賛成でも反対でも無い層は、女の方が多い

という二点。
女の方が反対派が多くなるのは、より子どものことを気に掛けているからだろう。さらに、男はマスコミからの情報を繋ぎ合わせて自分の意見を形作る事が多いため、男の方が賛成派が多くなるのであろう。
一方で、「賛成でも反対でもない」というのは、「判断保留」「考え中」の証だと言える。確かに危険性が喧伝される一方で、新しい可能性も未だ形になっていないとなれば、(賛成とか反対とかを超えて)「判断を保留して、考えたい」という意識になるだろう。世論調査で賛成と表明した人間でも、上記のような意識が根底にある人間は多いのではないか。
これは、女発で、みんなで社会のことを考える基盤が作られつつあることを意味している。女が踏みとどまって考えようとしている問題を、男が追求するという形が、社会的にもできつつあるのではないだろうか。

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今回の保坂氏当選の背景にはこのアンケート結果に見られた女性の意識が、そのまま映し出されたといってよいのではないだろうか?ここには女性発の安全や安心といった充足期待があるのだろう。
女性発のこれらの期待や評価によって社会が突き動かされたのならば、これは社会的に大きな転機だと言えるだろうし、次の社会の動きを見るうえでも重要な視点となりそうだ。

■脱原発に何の権限も無い区長という立場で保坂氏はそれをどう実現しようというのか?
マスコミの取材にこう答えている。

脱原発について「経済のほとんどを依存しており、代替エネルギーへの転換はなかなか難しい。現地には苦しい現状があり、消費者である都会は状況を知る必要がある。まず、区が音頭を取り代替エネルギーなどのシンポジウムを開き、機運をつくりたい」と行政の強制ではなく、区民主体で進めるとの意向を示した。

つまり草の根の下からの広がりによって上を動かしていこうという戦略 らしい。
原発に対する意識の高まりは、当然世田谷区で完結するものでもないので、他区への広がりを見据えた運動となるだろう。
この段階で、脱原発を目指す市民と原発を推進する知事の間で対立が顕在化する可能性がある。すでに原発推進派である石原都知事は保坂氏当選を受けて、反原発などできる訳が無いと批判している。
さらにこの流れが広がれば、2年後の国政選挙や4年後の都知事選に脱原発を掲げた独自候補を擁立したり、保坂氏のようなタイプの政治家が選出される可能性を秘めている。
まだまだ具体的な動きには至っておらず不透明感もあるが、果たして新しい可能性としての実現態となるのか?今後の流れは注目に値する。

List    投稿者 kichom | 2011-05-06 | Posted in 12.現代意識潮流1 Comment » 

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コメント1件

 hermes hellenic | 2014.02.01 19:39

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